茨城県の中古住宅市場は、いま静かに動き始めている。総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によれば、県内の総住宅数は139万900戸で2018年から4.7%増加した一方、空き家は19万6,200戸、空き家率14.1%という水準にある。新築住宅の着工戸数は過去最少を3年連続で更新しており(茨城県の住宅着工戸数の推移で詳述)、供給の主役は少しずつ「新築」から「既存ストックの流通」へと移りつつある。この記事では、公的統計だけを根拠に、茨城県の中古住宅市場がどんな構造になっているのかを整理する。
一次情報の出どころを先に明記する
本記事の数値は、以下の一次情報にもとづく。
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」(茨城県統計課取りまとめ「令和5年住宅・土地統計調査の結果の概要」)
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」(個別の取引価格情報・地価公示)
- 公益財団法人東日本不動産流通機構(東日本レインズ)「季報マーケットウォッチ」(首都圏1都3県の中古住宅成約統計)
先に断っておきたいことがある。東日本レインズが毎月・毎四半期に公表している中古マンション・中古戸建住宅の「成約件数」「成約価格」といった詳細統計は、対象が「首都圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)」に限られており、茨城県は集計対象に含まれていない。つまり「茨城県の中古住宅は平均いくらで、年間何件成約しているか」という数字を、県単位でそのまま示す公的な定期統計は存在しない。この記事では、存在しない数字を作らず、代わりに総務省の住宅・土地統計調査が示す「ストック」の実態(築年数構成・空き家との関係・所有形態)を中心に、中古住宅市場の輪郭を描く。個別物件の取引価格を調べたい場合は、国交省「不動産情報ライブラリ」で市区町村単位の実際の取引価格情報を検索できることも申し添えておく。
茨城県の中古住宅市場の全体像
総住宅数139万900戸、その大半が「既存」ストック
2023年10月1日時点で、茨城県の総住宅数は139万900戸。このうち新築住宅の着工戸数は年間1万戸台にとどまる(茨城県の住宅着工戸数の推移|過去最少3年連続参照)。単純計算でも、新規に供給される住宅は総ストックの1%に満たない。つまり、茨城県で「住宅を取得する」という行為の大部分は、理屈のうえでは新築より既存住宅(中古)の取得・利活用に関わっているということになる。
空き家率14.1%という数字の意味
令和5年調査によれば、茨城県の空き家は19万6,200戸で、総住宅数に占める空き家率は14.1%。2018年の14.8%からは0.7ポイント改善したが、依然として住宅の約7戸に1戸が空き家という水準にある。ただし空き家のすべてが「売れる中古住宅」ではない。空き家を種類別に見ると、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」(いわゆる長期不使用の空き家)は9万3,200戸で、2018年からむしろ1万5,000戸増加している。この「除く空き家」こそが、将来的に中古住宅市場に出てくるか、あるいは放置され続けるかの分岐点にある住宅群だ。
一戸建の空き家の8割超が「売却・賃貸に出ていない」
建て方別に見ると、空き家のうち一戸建は9万8,800戸(空き家全体の50.4%)、共同住宅は8万9,900戸(45.8%)。ここで注目すべきは内訳の違いだ。共同住宅の空き家は85.1%が「賃貸用の空き家」、つまり市場に出ている物件である。一方、一戸建の空き家は81.2%(8万200戸)が「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」に分類される。これは、相続や施設入居などで空いたまま市場に出されていない一戸建てが、県内に8万戸規模で眠っている可能性を示している。中古住宅市場の伸びしろは、この「まだ市場に出ていない一戸建て」にあるとも言える。

県内の地域差・市町村比較
市町村別の中古流通統計は現時点で「ない」
県内44市町村ごとの中古住宅成約件数・平均価格といった詳細データは、住宅・土地統計調査の県公表資料には含まれていない。ここでも無い数字を作ることはしない。ただし、関連する複数の公的統計を組み合わせることで、地域差の輪郭は見えてくる。
公示地価の市町村差が示す購入層の分布
茨城県の公示地価の推移で詳しく解説した通り、2026年の公示地価は1位・守谷市(15万2,130円/m2)から下位市町村(1万円台前半)まで10倍以上の開きがある。上位はつくばエクスプレス(TX)沿線の守谷市・つくば市・つくばみらい市が占め、これらのエリアは新築住宅の供給も相対的に活発なため、中古住宅の流通も新築との競合を含めて活発になりやすい構造にある。逆に地価水準の低いエリアでは、新築の供給が細る分、既存の戸建てストックがそのまま住宅取得の選択肢として重みを持ちやすい。
持ち家率の高さと中古住宅供給の関係
茨城県の持ち家率・借家率で述べた通り、茨城県の持ち家住宅率は69.4%で全国平均を8.5ポイント上回る。持ち家比率が高い地域ほど、将来的に相続や住み替えを経て中古住宅市場に出てくる予備軍が多いことを意味する。特に県北・県西・鹿行など農業・地場産業が中心のエリアは戸建て・持ち家比率が高く、都市部・TX沿線に比べて賃貸住宅の供給自体が少ない傾向がある(住宅・土地統計調査の全国的な構造から類推される一般論であり、市町村別の実測順位ではない点に留意)。
県南・県央・県北で異なる中古住宅の役割
県内の地域構造を大づかみに整理すると、次の3つの型に分けて考えられる。
- 県南(TX沿線・つくば市周辺):人口流入が続き、新築・中古とも取引が相対的に活発。中古住宅は「新築より安く・早く」入居したい層の受け皿になりやすい。
- 県央(水戸市周辺):県庁所在地として一定の住宅需要があり、中古の戸建て・マンションとも選択肢として定着している。
- 県北・県西・鹿行:人口減少が先行するエリアが多く、中古住宅は「実家を継ぐ」「安価に戸建てを取得する」という文脈で流通する傾向がある。
この3類型はあくまで人口動態や地価データから読み取れる構造的な傾向であり、個別市町村の実測統計ではない。詳細は茨城県の人口推移と将来推計もあわせて参照してほしい。
推移とその背景
ストックは増加、しかし新築は3年連続で過去最少
総住宅数は2018年から4.7%(6万2,000戸)増加した一方、茨城県の住宅着工戸数は過去最少を3年連続で更新している。新築の供給ペースが鈍る中でも総住宅数が増え続けているのは、世帯数そのものが増加基調にあるためだ。総世帯数は119万9,500世帯で2018年比5.7%(6万4,700世帯)増加しており、世帯の細分化(単身世帯の増加など)が住宅需要を下支えしている構図が見える。
築年数から見る茨城県のストック構成
令和5年調査では、建築の時期別の持ち家戸数も示されている。このうち「1980年以前」に建築された持ち家は19万1,100戸にのぼる。1981年に建築基準法の耐震基準が改正(いわゆる新耐震基準の導入)されたことを踏まえると、県内の持ち家の一定割合が、現行基準より前の耐震基準で建てられていることになる。2019年以降に耐震改修工事が行われた持ち家は1万8,100戸で、持ち家全体の2.2%にとどまる。中古住宅市場において、築年数と耐震性能は今後さらに重要な判断材料になっていくとみられる。

増改築・リフォームによる既存住宅の延命
令和5年調査によれば、2019年以降に増改築・改修工事等が行われた持ち家の割合を建築時期別に見ると、「1981〜1990年」築が38.2%と最も高く、「1971〜1980年」築が37.1%で続く。2000年以前に建築された持ち家の3割以上が、直近数年で何らかの改修を経験していることになる。新築が減り、既存住宅の総数が増える局面では、リフォーム・改修によってストックの質を維持し、中古住宅としての流通価値を保つ動きが今後さらに広がる可能性がある。
全国的な中古住宅市場の潮流との比較
参考情報として、東日本レインズが公表する首都圏(1都3県)の季報マーケットウォッチ(2026年4〜6月期)では、中古戸建住宅の成約件数が前年同期比+3.4%と10四半期連続で増加し、成約価格も同+6.5%と3四半期連続で上昇している。茨城県はこの首都圏統計の対象外だが、隣接する県として、都市部での中古住宅需要の高まりが今後どのような形で波及するかは注視する価値がある。ただし茨城県固有の成約統計ではない点は明確にしておきたい。
生活者から見た意味
「中古を選ぶ」という選択肢の重みが増している
新築の着工が減り続ける一方、総住宅数と世帯数はともに増加している。これは、茨城県で住まいを探す生活者にとって、中古住宅という選択肢の相対的な重みが増していることを意味する。特に地価が抑えられた立地で、比較的広い敷地の戸建てを取得したい場合、中古住宅は新築よりも短期間・低コストで選択肢に入りやすい。
築年数と耐震性能をどう見るか
県内の持ち家のうち19万1,100戸が1980年以前の建築である一方、耐震改修が行われた持ち家は全体のわずか2.2%にとどまる。中古住宅を取得する側にとっては、価格だけでなく「いつ建てられたか」「耐震基準はどちらか」を確認する重要性が増している。売却する側にとっても、耐震性能や改修履歴を明示できるかどうかが、今後の売却のしやすさに影響してくる可能性がある。
空き家予備軍としての「除く空き家」8万戸
先述の通り、一戸建の空き家のうち8万200戸は「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」、つまり市場に出ていない状態にある。これは裏を返せば、適切なタイミングで売却・賃貸に出すことができれば、中古住宅市場に新たな供給として加わる可能性がある戸数でもある。空き家の放置は資産価値の劣化や近隣への悪影響につながる一方、早期に市場に出すことで、売主・買主双方にとってプラスの結果になりうる。
住まい・不動産への接点
相場を知りたいときの一次情報の調べ方
個別の物件・エリアの実際の取引価格を知りたい場合は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」で市区町村単位の取引価格情報を無料で検索できる。会員登録は不要で、エリアと期間を指定すれば実際の成約に近い取引データを確認できる。売却を検討する際は、こうした一次情報と、地域密着の不動産会社による現地相場感の両方を照らし合わせることが有効だ。
相続した中古住宅をどうするか
持ち家率の高さ(茨城県の持ち家率・借家率参照)と高齢化の進行(茨城県の高齢化率|44市町村の地域差参照)が重なる茨城県では、「実家を相続したが住む予定がない」というケースが今後さらに増えていく。相続した中古住宅は、そのまま空き家として放置すれば「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」に加わり、資産価値も維持コストの負担も悪化しやすい。早期に売却するか、賃貸に出すか、活用方針を決めることが望ましい。
老朽化した中古住宅は「解体」という選択肢も
1980年以前築の住宅など、老朽化が進み耐震性にも不安がある中古住宅の場合、売却前に解体して更地として売り出す方が有利になるケースもある。茨城県内の解体費用や補助金制度については、県内解体専門の解体Do!で相場や事例を確認できる。
エリアごとの売却相談は店舗サイトへ
中古住宅の売却を具体的に検討する段階では、地域の相場や取引実例に詳しい地元の不動産会社への相談が有効だ。ハウスドゥ茨城県4店舗グループでは、担当エリアに応じて次の店舗サイトで相場や事例を確認できる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 茨城県の中古住宅の平均成約価格はいくらですか?
茨城県単独の中古住宅成約価格を毎月・毎四半期公表する公的統計は現時点で存在しない。東日本レインズの季報マーケットウォッチは首都圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)が対象で、茨城県は含まれていない。個別エリアの実際の取引価格を調べたい場合は、国土交通省「不動産情報ライブラリ」で市区町村単位の取引価格情報を検索できる。
Q2. 茨城県の空き家率はどのくらいですか?
総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によれば、茨城県の空き家率は14.1%(空き家19万6,200戸)で、2018年の14.8%から0.7ポイント改善した。ただし「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は9万3,200戸で、2018年から1万5,000戸増加している。
Q3. 中古の一戸建てはどのくらい市場に出ていないのですか?
令和5年調査によれば、一戸建の空き家9万8,800戸のうち81.2%(8万200戸)が「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」に分類され、市場に出ていない状態にある。
Q4. 茨城県の住宅の築年数はどのくらいですか?
令和5年調査によれば、1980年以前に建築された持ち家は19万1,100戸ある。1981年の建築基準法改正(新耐震基準の導入)以前の建物が一定割合含まれることになる。2019年以降に耐震改修工事が行われた持ち家は持ち家全体の2.2%にとどまる。
Q5. 中古住宅と新築、茨城県ではどちらが増えていますか?
新築住宅の着工戸数は3年連続で過去最少を更新している一方、総住宅数は2018年から4.7%増加している。相対的に既存住宅(中古)ストックの重みが増している状況にある。
Q6. 中古住宅を相続した場合、どうすればよいですか?
住み続ける予定がない場合は、空き家のまま放置すると資産価値の劣化や近隣への悪影響につながりやすい。早期に売却または賃貸に出す方針を決めることが望ましい。老朽化が進んでいる場合は解体してから売却する選択肢もある。
Q7. 茨城県内で中古住宅が多いエリアはどこですか?
市町村別の中古住宅流通量を示す公的統計は現時点で公表されていない。ただし持ち家率の高さ(茨城県の持ち家率・借家率参照)や公示地価の分布(茨城県の公示地価の推移参照)から、県北・県西・鹿行など戸建て・持ち家比率の高いエリアほど、将来的な中古住宅の潜在供給が多いと考えられる。
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あわせて読みたい:茨城県の土地の広さ|1住宅あたり394㎡で全国1位の理由
県全体の住宅政策の方向性については、茨城県住生活基本計画|4つの基本目標と数値目標の記事もあわせてご覧ください。
あわせて、住宅の建て方別にみた茨城県のマンション市場|共同住宅32万7,700戸の分布と特徴【2026年】も参考にしてください。
また、農地・古民家が多いエリアの中古住宅事情については、茨城県の農家住宅・古民家の実情|総農家数18.2%減の背景【2026年】もあわせてご覧ください。
まとめ
茨城県の中古住宅市場は、県単位の成約統計こそ公的に整備されていないが、総務省の住宅・土地統計調査からは明確な構造が見えてくる。新築の着工が3年連続で過去最少を更新する一方、総住宅数と世帯数はともに増加を続けている。空き家率は14.1%で、そのうち一戸建の空き家の8割超が市場に出ていない状態にある。持ち家率の高さと高齢化の進行が重なる茨城県では、今後、相続や住み替えを通じて中古住宅市場に出てくる住宅がさらに増えていくと考えられる。中古住宅の売却・活用を検討する際は、国交省の一次情報と、地域に精通した不動産会社への相談を組み合わせることが判断の助けになる。
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