茨城県には、瓦屋根の大きな母屋や土蔵を備えた「農家住宅」、そして江戸期・明治期から残る「古民家」が今も各地に点在しています。総務省統計局・茨城県統計課「令和5年住宅・土地統計調査」によると、県内の木造住宅の割合は71.7%(非木造28.3%)で、この30年間で非木造化が進行してきました。一方で農林水産省「2020年農林業センサス」では、茨城県の総農家数が71,761戸となり、5年前から15,917戸(18.2%)減少したことが明らかになっています。担い手が減れば、広い敷地に建つ古い母屋の維持や活用、そして将来の売却・相続をどう考えるかが、多くの家庭にとって現実の課題になります。

本記事では、一次情報に基づき茨城県の農家住宅・古民家の実情を整理し、県内の地域差、活用・売却の選択肢、空き家バンク制度までを不動産会社の視点で解説します。

茨城県の農家住宅・古民家の全体像

「農家住宅」とは、農業を営む世帯が居住する住宅を指し、一般的に母屋のほかに納屋・蔵・作業小屋などの付属建物を伴う広い敷地を特徴とします。「古民家」に法律上の明確な定義はありませんが、一般社団法人全国古民家再生協会などでは「建築後50年以上経過した伝統的な木造建築物」を目安とすることが多く、茅葺き屋根や太い梁を用いた伝統構法の住宅が該当します。両者は重なる部分が大きく、県内の農家住宅の多くが結果的に古民家としての価値を持っています。

木造率71.7%の内訳

茨城県統計課の集計によれば、2023年時点の県内総住宅数のうち木造住宅は71.7%を占め、1993年の82.1%から30年間で10.4ポイント低下しました。非木造(鉄骨・鉄筋コンクリート造など)の割合は17.9%から28.3%へと上昇しており、新築住宅では非木造化が進む一方、既存の木造住宅には建築年数の古いものが相対的に多く残る構造になっています。

農家住宅特有の間取りと敷地

茨城県の1住宅当たり敷地面積は394.15平方メートルで全国1位(本サイト関連記事「茨城県の土地の広さ|1住宅あたり394㎡で全国1位の理由」参照)です。広い敷地を持つ住宅が多い背景には、県内に多い農家住宅の存在があります。母屋・納屋・蔵・庭・畑が一体となった屋敷構えは、都市部の戸建て住宅とは異なる間取り・維持管理の考え方を必要とします。

茅葺き民家の現状

茅葺き屋根の古民家は維持コストが高く、県内でも現存数は限られます。文化財として保存対象になっている例(指定文化財の古民家園・古民家カフェなど)を除くと、多くは瓦屋根や金属屋根への葺き替えが進んでいます。

県内の地域差・分布(総農家数と減少率)

農家住宅の分布は、農業を営む世帯の分布とほぼ重なります。農林水産省「2020年農林業センサス」茨城県結果の概要から、5地域別の総農家数と5年間の増減を見ていきます。

茨城県 総農家数の推移 平成12年から令和2年
出典:農林水産省「2020年農林業センサス」茨城県結果の概要(茨城県統計課)

県全体で総農家数18.2%減

茨城県の総農家数は平成12年の128,020戸から令和2年には71,761戸まで減少し、20年間で約4割減りました。直近5年(平成27年→令和2年)でも15,917戸(18.2%)の減少です。うち販売農家数は43,920戸(同23.3%減)、自給的農家数は27,841戸(同8.5%減)で、経営規模の小さい農家ほど減少が緩やかという傾向がみられます。

5地域別の内訳

茨城県5地域別 総農家数の減少率
出典:農林水産省「2020年農林業センサス」茨城県結果(茨城県統計課)
地域 令和2年 総農家数 平成27年比 増減率 備考
県北 11,026戸 -39.7% 5地域で最も減少率が高い
県西 17,660戸 -20.0%
県南 18,379戸 -19.3%
鹿行 8,005戸 -17.3% 販売農家の構成比は71.8%で最高
県央 16,691戸 +12.1% 5地域で唯一増加

県北地域は5年間で総農家数が39.7%減少し、県内で最も担い手の減少が急速に進んでいます。一方、県央地域は唯一12.1%の増加で、水戸市近郊など都市化・混住化が進むエリアでは統計上の農家区分に変化が生じていると考えられます。県北・県西など農家数の減少が大きい地域ほど、農家住宅や古民家が管理者不在のまま残るリスクが高まります。

推移とその背景(人口減少・後継者不在)

農業従事者の高齢化と後継者不在

農家数の減少は、農業従事者の高齢化と後継者不在が主因とされます。本サイト関連記事「茨城県の高齢化率|44市町村の地域差」で整理した通り、県計の高齢化率は31.2%(令和7年10月時点)に達しており、特に県北地域は高齢化率38.4%と5地域で最も高い水準です。総農家数の減少率が県北で最大(-39.7%)だったことと、地域の高齢化率の高さは軌を一にしています。

人口減少との関係

本サイト関連記事「茨城県の人口推移と将来推計」で確認した通り、茨城県の人口は自然減が主因で減少が続いています。農村部では人口減少に加えて若年層の都市部・TX沿線への転出が重なり、農家住宅の後継ぎが地元に残らないケースが増えています。母屋は残っても住む人がいない、という状態が県内各地で生まれつつあります。

空き家化するとどうなるか

敷地が広く、母屋・納屋・蔵など複数棟からなる農家住宅は、一部の建物だけを解体する、母屋のみ活用するといった部分的な対応が難しく、空き家化すると管理の手間・固定資産税の負担が一般の戸建て住宅より大きくなりがちです。相続人が県外に住んでいる場合はなおさら、実家の農家住宅をどうするかという判断が先送りにされやすい構造があります。

生活者から見た意味(活用事例・課題)

古民家再生・カフェ活用の事例

茨城県内では、笠間市・常陸太田市・行方市など県北・県央エリアを中心に、古民家を改修したカフェ・宿泊施設・ギャラリーとして活用する事例が見られます。移住・観光需要と結び付けることで、単なる空き家ではなく地域資源として再評価する動きです。ただし改修には断熱・耐震・水回り更新など多額の費用がかかることが多く、全ての古民家がそのまま再生に適しているわけではありません。

維持管理の負担

広い庭・畑・母屋・付属屋を含む農家住宅は、除草や庭木の剪定、雨漏り点検など維持管理の作業量が一般住宅より多くなります。居住者がいない期間が長引くほど、シロアリ被害や雨漏りによる構造材の劣化が進みやすい点も、古い木造住宅特有のリスクです。

「住み続ける」「活用する」「手放す」の3つの選択

後継者がいない、または遠方に住んでいる場合、農家住宅・古民家の将来には大きく3つの方向性があります。①家族の誰かが住み続ける、②古民家として改修し賃貸・店舗などに活用する、③解体または現状のまま売却する、のいずれかです。どれを選ぶにしても、まず敷地・建物の状態と法的な権利関係(相続登記の有無、農地が含まれる場合は農地法上の扱い)を確認することが出発点になります。

住まい・不動産への接点

農地が含まれる場合の農地転用・農地法の壁

農家住宅の敷地に隣接する田畑を含めて売却・活用する場合、農地の権利移転には農地法3条(権利移動)または4条・5条(転用を伴う権利移動)の許可が必要です。買主が住宅用地として使う目的で農地を取得する場合は農地転用(5条許可)の手続きが必要になり、市街化調整区域では許可のハードルがさらに高くなります。農地を含む物件の売却は、通常の宅地の売却より手続きが複雑になる点をあらかじめ理解しておくことが重要です。

相続との関係

2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内の登記申請が必要になりました。農家住宅は複数の建物・広い敷地・農地を含むことが多く、遺産分割協議が複雑になりやすい典型例です。相続人が複数いる場合、母屋は誰が住み、農地はどう分けるか、空き家となった付属屋はどうするかを早めに話し合っておくことが、将来のトラブル回避につながります。

空き家バンク制度の活用

茨城県では、県内44市町村のうち多くが独自の空き家バンク制度を運営しています(茨城県「市町村空き家バンク一覧」2026年1月5日更新時点)。空き家バンクは、空き家を売りたい・貸したい所有者と、購入・賃借を希望する移住者などをマッチングする仕組みで、市町村によっては登録物件の改修費用やリフォーム費用への補助制度を併設している場合があります。農家住宅・古民家の活用を考える際、まず地元市町村の空き家バンク窓口に相談することも選択肢の一つです。

地区 登録市町村数 代表的な窓口担当部署
県北地区 5市町(常陸太田市・高萩市・北茨城市・常陸大宮市・大子町) 少子化対策課/企画政策課等
県央地区 9市町村(水戸市・笠間市・ひたちなか市・那珂市・小美玉市・茨城町・大洗町・城里町・東海村) 住宅政策課/企業誘致・移住推進課等
県南地区 13市町村(土浦市・石岡市・龍ケ崎市・牛久市・つくば市・守谷市・稲敷市・かすみがうら市・つくばみらい市・美浦村・阿見町・河内町・利根町) 空家対策課/住宅政策課等
県西地区 7市町(古河市・下妻市・常総市・筑西市・桜川市・八千代町・五霞町) 営繕住宅課/都市整備課等
鹿行地区 5市(鹿嶋市・潮来市・神栖市・行方市・鉾田市) 都市計画課/事業推進課等

出典:茨城県「市町村空き家バンク一覧」(2026年1月5日更新)を基に地区別に集計。各窓口の詳細・最新の連絡先は各市町村公式サイトでご確認ください。

「活用」だけでなく「売却」という選択肢

空き家バンクへの登録は、賃貸・移住者マッチングを主目的とした制度であり、必ずしも早期の現金化には向きません。相続税の納税資金が必要、遠方に住んでいて管理が難しい、複数の相続人で分割協議がまとまらないといった事情がある場合は、不動産会社への売却・買取という選択肢も検討する価値があります。私たちハウスドゥ茨城4店舗(つくば・水戸・取手戸頭・守谷)では、農家住宅・古民家を含む戸建て・土地の売却相談を無料で承っています。母屋だけでなく、農地を含む一体の敷地についても、まずは現況をお聞かせください。

店舗サイトでの個別相談

お住まいのエリアに応じて、下記の店舗サイトでも地域に密着した売却相談を行っています。

解体を含めた検討をされる場合は、解体Do!(kaitai-ibaraki.com)で県内の解体費用相場や補助金情報もあわせてご確認いただけます。

関連する茨城県の住宅データ

農家住宅・古民家の実情をより深く理解するために、以下の関連記事もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q1. 農家住宅と古民家はどう違うのですか?

A. 「農家住宅」は農業を営む世帯が居住する住宅を指す呼び方で、母屋のほかに納屋・蔵などの付属建物を伴うことが特徴です。「古民家」には法律上の明確な定義はありませんが、一般的に建築後50年以上経過した伝統的な木造建築物を指すことが多く、両者は重なる部分が大きいものの、必ずしも同じ意味ではありません。

Q2. 茨城県で農家数はどのくらい減っていますか?

A. 農林水産省「2020年農林業センサス」によると、茨城県の総農家数は令和2年時点で71,761戸となり、5年前(平成27年)の87,678戸から15,917戸(18.2%)減少しました。地域別では県北地域の減少率が39.7%と最も高くなっています。

Q3. 古民家を売却する際、農地が含まれているとどうなりますか?

A. 農地の権利移転には農地法に基づく許可(3条・4条・5条)が必要です。住宅用地への転用を伴う場合は農地転用の手続きが必要で、市街化調整区域では許可のハードルがさらに高くなります。農地を含む物件の売却は宅地のみの売却より手続きが複雑になるため、早めに不動産会社や農業委員会へ相談することをおすすめします。

Q4. 空き家バンクに登録すればすぐに買い手・借り手が見つかりますか?

A. 空き家バンクは移住希望者などとのマッチングを目的とした制度で、登録すれば必ず短期間で成約するわけではありません。物件の状態や立地によっては時間がかかることもあります。相続税の納税期限が迫っている場合や早期の現金化を希望する場合は、不動産会社への売却・買取相談もあわせて検討することをおすすめします。

Q5. 茨城県内で空き家バンクを実施していない市町村はありますか?

A. 2026年1月5日時点の茨城県「市町村空き家バンク一覧」では、県内の多くの市町村が空き家バンク制度を運営しています。ただし制度の有無や内容は市町村によって異なるため、最新情報は各市町村の公式サイトまたは窓口でご確認ください。

Q6. 誰も住んでいない農家住宅を放置するとどんなリスクがありますか?

A. 空き家期間が長引くほど、雨漏りやシロアリ被害による構造材の劣化が進みやすくなります。また敷地が広い分、除草や庭木の管理など維持の手間も一般住宅より大きくなりがちです。固定資産税の負担も継続するため、活用予定がない場合は早めに売却・解体などの方針を決めることが重要です。

Q7. 古民家を解体せずそのまま売却することはできますか?

A. 可能です。古民家としての改修需要がある場合は現況のまま売却できることもありますが、老朽化が進んでいる場合は買主が解体前提での購入を希望するケースもあります。解体費用の相場については、解体Do!(kaitai-ibaraki.com)で茨城県内の最新情報をご確認いただけます。

まとめ

茨城県では総農家数が20年間で約4割減少し、特に県北地域では5年間で39.7%という急速な減少が進んでいます。広い敷地と複数の建物を持つ農家住宅・古民家は、後継者不在のまま空き家化すると維持管理の負担が大きくなりやすく、農地が含まれる場合は売却手続きも複雑になります。空き家バンクへの登録、古民家としての再生、あるいは売却・解体など、選択肢は複数ありますが、まずは現況を正しく把握することが第一歩です。

ハウスドゥでは茨城県内4店舗(つくば・水戸・取手戸頭・守谷)のネットワークで、農家住宅・古民家を含む戸建て・土地の無料査定を承っています。相続や活用にお悩みの際は、お気軽にご相談ください。

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