「茨城県は農業と工業のどちらが盛んなのか」と聞かれて、即答できる県民は多くない。実は答えは両方で、しかも全国トップクラスの規模を持つ。茨城県の産業構造には、住宅需要を左右する3つの顔がある。全国7位級の製造品出荷額を誇る工業県、農業産出額が8年連続で全国3位という農業県、そしてつくば・鹿嶋という2つの巨大な産業集積を抱える県である。この記事では、茨城県の産業構造と雇用の実態を一次統計で確認し、それが不動産の売却や相続にどうつながるのかを整理する。
茨城県の県内総生産は14兆7,355億円で過去最高
茨城県政策企画部統計課が2026年3月30日に公表した「令和5年度茨城県県民経済計算」によると、県内総生産(名目)は14兆7,355億円だった。前年度の14兆5,352億円から1.4%増加し、統計開始以来の過去最高額を更新している。1人当たり県民所得は352万6千円で3年連続の増加、1人当たり県民雇用者報酬は483万4千円だった。
一方で実質経済成長率は−1.4%(前年度−0.1%)とマイナスに転じた。コロナ後の需要正常化で第3次産業(サービス業)は伸びたものの、製造業の一部(特に一次金属、前年度比−2,040億円)が落ち込んだことが要因とされている。名目値は過去最高でも、実質の伸びは頭打ちという二面性がある。
過去5年の推移で見える回復力
県内総生産(名目)の推移をたどると、令和元年度14兆513億円→令和2年度13兆7,315億円(コロナ禍で減少)→令和3年度14兆5,720億円(前年比+6.1%、名目・実質とも全国平均を大幅に上回る伸び)→令和4年度14兆5,352億円→令和5年度14兆7,355億円という軌跡をたどっている。コロナ禍からの反発が全国平均より力強かった点は、茨城県経済の底力を示す一つの材料といえる。
有業者152万1千人、産業別の構成比
茨城県が2024年1月31日に公表した「令和4年就業構造基本調査結果報告書」(2022年10月1日時点)によると、県内の有業者数は152万1千人だった。5年前の調査に比べて6千人増加している(男性85万8千人、女性66万3千人)。有業率は60.5%(男性68.7%、女性52.5%)で、女性の社会進出が進んでいることがうかがえる。
従業上の地位別では、雇用者が135万6千人(89.4%)を占め、自営業主は12万2千人(8.0%)にとどまる。雇用者のうち正規職員・従業員は80万3千人(53.0%)、非正規は48万3千人(31.8%)だった。
産業別では製造業が最大の21.4%
産業大分類別の有業者構成比を見ると、製造業が21.4%(31万6千人)で最大のシェアを占めた。次いで卸売業・小売業13.8%(20万4千人)、医療・福祉12.5%(18万4千人)、建設業7.2%、農業・林業5.5%、運輸業・郵便業5.8%と続く。男性は製造業26.8%が最多である一方、女性は医療・福祉21.4%が最多という性別による違いも見られる。
5年前との比較では、医療・福祉が+2.1ポイントと最も伸び、製造業は−1.1ポイントとやや低下した。高齢化に伴う介護・医療需要の拡大が、産業構造そのものを緩やかに変えつつある。

製造業の中身:鹿島臨海工業地帯と日立の企業城下町
茨城県の製造業は、平成29年(2017年)時点の製造品出荷額等が12兆2,795億円で全国7位という報告がある(都道府県別ランキングを集計する複数の民間調査による)。数字の性質上、最新年次の確定値は経済産業省や茨城県統計課「茨城の工業」の最新報告書での再確認が必要だが、上位県の一角を占める工業県であることは間違いない。
この製造業を支える二大拠点が、鹿島臨海工業地帯と日立・ひたちなか地域である。産業の集積地は、そのまま人口が集まるエリアでもある。茨城県の人口推移と将来推計で見た通り、TX沿線(つくば・守谷・つくばみらい)の人口増加は先端産業の集積と軌を一にしている。
鹿島臨海工業地帯(神栖市・鹿嶋市)
神栖市・鹿嶋市にまたがる鹿島臨海工業地帯は、県内最大級の工業集積地である。1963年に新産業都市の指定を受け、1969年に鹿島港が開港して以降、鉄鋼(日本製鉄東日本製鉄所鹿島地区)や石油化学のコンビナートが立地してきた。周辺の各種調査では、進出企業は約180社、従業員規模は約22,000人前後とされる。この地域の不動産市況は、他の県内エリアとは異なり工業需要と結びついている点が特徴的だ。
日立・ひたちなか地域
日立市を中心とするエリアは、日立製作所の企業城下町として発展してきた歴史を持つ。周辺調査によれば「日立・ひたちなか地域」の人口は約35万人、工業出荷額は2兆3,221億円規模とされる。大手製造業の雇用が地域経済の土台を支える構造は、県北エリアの住宅需要・空き家発生の両方に影響している。
つくばの研究学園都市とTSMC研究拠点の存在
茨城県のもう一つの産業的な顔が、つくば市を中心とする筑波研究学園都市である。東京の過密緩和と高水準の研究・教育拠点形成を目的とした国家プロジェクトとして整備され、国等の研究・教育機関が集積している(機関数は出典により31機関、160機関、300機関前後と幅があり、算入範囲の違いによるものと見られるため断定は避ける)。JAXA筑波宇宙センターは1972年開設、敷地面積は約53万平方メートルに及ぶ。
近年の象徴的な動きが、2022年6月に産業技術総合研究所つくばセンター内に開所した「TSMCジャパン3DIC研究開発センター」である。半導体の3次元パッケージ技術開発を目的に、日本政府が約190億円の助成を行って誘致した。これに合わせて茨城県はつくばエクスプレス沿線に「最先端リサーチパーク」を創設しており、研究学園都市としてのつくばの位置づけは今後も強まる見通しだ。こうした研究機関の集積は、つくば市周辺の地価上昇(茨城県の公示地価の推移|10年でみる資産価値の流れでも解説)の背景の一つになっている。
茨城県の農業は8年連続で全国3位
茨城県は工業県であると同時に、全国有数の農業県でもある。農林水産省関東農政局が公表した「茨城県の農業産出額(令和5年)」によると、県の農業産出額は4,536億円(前年4,384億円から+3.5%)で、全国3位を8年連続で維持している(2017年以降)。1位は北海道1兆3,478億円、2位は鹿児島県5,438億円、4位は千葉県4,029億円である。
野菜が構成の36.7%、品目別では日本一が7つ
部門別の内訳を見ると、野菜が36.7%(1,664億円)と最大で、米15.5%(703億円)、鶏11.3%(514億円)が続く。品目別の全国順位(令和5年)では、ピーマン(143億円)、メロン(142億円)、れんこん(88億円)、こまつな(66億円)、かんしょ・さつまいも(343億円、2位鹿児島の1.8倍)が全国1位、ねぎ・はくさい・レタスが全国2位という結果になっている。市町村別では鉾田市が676.2億円で県内トップの農業産出額を誇り、野菜の一大産地として知られる。
この農業の厚みは、県内の土地利用(茨城県の土地利用|農地・宅地・山林と市街化調整区域で解説した「農林業的土地利用57.8%」)とも直結している。相続で農地を引き継いだものの営農できないというケースは、県南・県西エリアでは珍しくない相談の一つだ。
有効求人倍率1.14倍、全国順位は28位
雇用の需給を示す有効求人倍率について、茨城労働局が2026年5月29日に公表した令和8年(2026年)4月の数値は、季節調整値で1.14倍だった(前月1.12倍から+0.02ポイント)。全国順位は28位で、雇用情勢の判断は「求人が求職を上回るが改善の動きは弱まっている」という表現が13か月連続で維持されている。
年平均で見ると、令和7年(2025年)は1.23倍で、前年の1.30倍から0.07ポイント低下した。有効求人数は前年比−6.3%、有効求職者数は−1.1%となっており、求人側の減少ペースが求職側を上回っている状況がうかがえる。
賃金水準は上昇基調
茨城県統計課「茨城県の賃金・労働時間・雇用の動き」によれば、令和8年(2026年)5月の現金給与総額(調査産業計)は300,388円で、名目賃金指数は前年同月比+5.0%と24か月連続の増加を記録した。実質賃金指数も前年同月比+3.3%で3か月連続の増加となっている。総労働時間は135.4時間で前年同月比−1.3%だった。
年間ベースでは、令和7年(2025年)の現金給与総額(調査産業計)は346,084円で、名目賃金指数は前年比+5.2%と3年連続の増加、実質賃金指数も前年比+1.2%と4年ぶりの増加に転じた。常用労働者数(調査産業計)は1,053,011人で前年比+0.8%増となっている。物価上昇を上回る賃金上昇が定着しつつあるかどうかは、今後数年の推移を見極める必要がある。
産業構造が生む県内の地域差
ここまで見た産業構造は、県内で一様に分布しているわけではない。おおまかに整理すると次のような構図になる。
- 県南(つくば市周辺)=研究学園都市・先端産業の集積エリア。人口増加と地価上昇が続く
- 鹿行(鹿嶋市・神栖市周辺)=鉄鋼・石油化学の重工業エリア。企業の設備投資動向が地域経済を左右する
- 県北(日立市周辺)=製造業の企業城下町。大手企業の雇用動向が住宅需要と直結する
- 県西・県南の一部=農業が基幹産業。相続農地の扱いが不動産相談の中心になりやすい
この産業構造の違いは、そのまま人口動態(茨城県の転入・転出|どの市町村に人が動く?で扱った社会増減)や地価動向にも反映されている。同じ茨城県内でも、どの産業がその地域を支えているかによって不動産需要の性質はまったく異なる。
生活者・所有者にとっての意味
産業構造のデータは、統計として眺めるだけでは実感が湧きにくい。しかし所有する不動産の将来を考えるうえでは、次のような形で影響してくる。
製造業の雇用動向は地域の住宅需要を左右する
企業城下町型の地域(日立・ひたちなか、鹿嶋・神栖など)では、主要企業の設備投資・雇用動向が地域の住宅需要に直結しやすい。転勤・異動による住み替えの発生パターンも、こうした産業構造の影響を受ける。
研究学園都市エリアは人口流入が続く
つくば市周辺のように研究機関・先端産業が集積するエリアは、他の県内エリアとは異なる人口動態・地価動向を示す。このエリアの不動産は、県平均とは切り離して考える必要がある。
農地を相続した場合の選択肢は限られる
農業産出額全国3位という数字の裏側には、相続した農地をどう扱うかという課題を抱える所有者が多いという実態がある。農地は宅地とは異なる法規制(農地法)があり、転用や売却には制約が伴う。
茨城県の産業構造と不動産売却・相続の接点
産業構造のデータは、不動産の売却や相続を考える際にいくつかの実務的な判断材料になる。
- 製造業の雇用が厚いエリアでは、賃貸需要・売却需要がその企業の動向に左右されやすいため、地域の主要企業の状況を把握しておくことが望ましい
- 研究学園都市周辺(つくば市とその近隣)は先端産業の集積が続く限り地価上昇が期待できる一方、それ以外のエリアでは横ばい・下落基調のところもある
- 相続した不動産が農地であれば、宅地とは異なる売却手続き(農業委員会の許可等)が必要になる
- 賃金・雇用情勢は住宅ローンの組みやすさにも影響するため、買主層の実像を把握するうえでも産業構造の理解は有用(詳しくは茨城県の平均世帯年収と住宅取得力を参照)
私たちハウスドゥ茨城グループは、つくば市・水戸市・取手市・守谷市の4店舗と、県内解体を専門とする解体Do!を通じて、こうした産業構造の違いを踏まえたエリアごとの提案を行っている。相続した農地・工業地帯周辺の不動産・研究学園都市エリアの住まいなど、それぞれ事情が異なる物件について、まずは無料査定でご相談いただきたい。
エリア別・担当店舗のご案内
茨城県内で不動産の売却や相続の相談先をお探しの方は、お住まいのエリアに応じて次の店舗もご活用いただきたい。
- つくば市・土浦市周辺(研究学園都市エリア)=ハウスドゥ つくば研究学園都市
- 水戸市周辺(県央エリア)=ハウスドゥ 家・不動産買取専門店 県庁水戸
- 取手市・戸頭周辺(県南エリア)=ハウスドゥ 取手戸頭
- 守谷市周辺(TX沿線エリア)=ハウスドゥ 守谷
- 解体を含めたご相談=解体Do!(茨城県内対応)
まとめ:産業構造を知ることは、不動産の将来を知ること
茨城県は、製造業(全国7位級の出荷額)、農業(全国3位の産出額)、そして先端研究(つくば研究学園都市)という3つの強みを併せ持つ県である。有効求人倍率1.14倍・賃金上昇基調という数字は、雇用情勢が緩やかに改善していることを示している。ただし、その恩恵の受け方は地域によって大きく異なる。研究学園都市エリアは人口流入が続く一方、企業城下町型のエリアは主要企業の動向次第という側面がある。所有する不動産がどの産業構造の上に立っているかを理解することが、売却・相続のタイミングを見極める第一歩になる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 茨城県の主要産業は何ですか?
製造業が有業者構成比21.4%で最大のシェアを占め、次いで卸売業・小売業13.8%、医療・福祉12.5%と続きます(令和4年就業構造基本調査)。県内総生産で見ても製造業は主要な柱の一つです。また農業産出額は8年連続で全国3位を維持しており、工業県であると同時に農業県でもあるのが茨城県の特徴です。
Q2. 茨城県の有効求人倍率はどのくらいですか?
茨城労働局の発表によると、令和8年4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.14倍で、全国順位は28位でした。令和7年の年平均は1.23倍でした。求人が求職をやや上回る状態が続いていますが、改善のペースは弱まっています。
Q3. 茨城県の平均的な賃金水準はどれくらいですか?
茨城県統計課の調査では、令和7年の現金給与総額(調査産業計)は年間346,084円で、名目賃金指数は前年比+5.2%と3年連続の増加でした。実質賃金指数も前年比+1.2%とプラスに転じており、物価上昇分を上回る賃金上昇が見られます。
Q4. 鹿島臨海工業地帯とはどんな場所ですか?
神栖市・鹿嶋市にまたがる県内最大級の工業集積地です。1963年の新産業都市指定、1969年の鹿島港開港を経て、鉄鋼・石油化学のコンビナートが立地してきました。周辺調査では進出企業約180社、従業員規模約22,000人前後とされています。
Q5. つくば市の研究学園都市には何があるのですか?
JAXA筑波宇宙センターや産業技術総合研究所など、国等の研究・教育機関が集積しています。2022年には産総研つくばセンター内に「TSMCジャパン3DIC研究開発センター」が開所し、日本政府が約190億円の助成で誘致しました。これに合わせて茨城県はつくばエクスプレス沿線に「最先端リサーチパーク」を創設しています。
Q6. 茨城県の農業で全国1位の品目は何ですか?
令和5年の農林水産省関東農政局のデータによると、ピーマン・メロン・れんこん・こまつな・かんしょ(さつまいも)の5品目で全国1位となっています。ねぎ・はくさい・レタスは全国2位です。市町村別では鉾田市が県内最大の農業産出額を誇ります。
Q7. 産業構造は不動産の売却時期にどう関係しますか?
企業城下町型のエリアでは主要企業の雇用動向が住宅需要に直結しやすく、研究学園都市エリアは産業集積が続く限り人口流入・地価上昇が期待できます。所有する不動産がどちらの構造に近いエリアにあるかによって、売却のタイミングや価格動向の見通しは変わってきます。判断に迷う場合は、エリアの実情を把握している地元の不動産会社への相談が有効です。




