茨城県内で家や土地を所有していると、毎年の納税通知書に「固定資産税」と並んで「都市計画税」という項目が記載されていることがあります。しかし同じ茨城県内でも、都市計画税がかかる市町村とまったくかからない市町村があることは、意外と知られていません。
以前の記事「茨城県の固定資産税の実情」では、固定資産税という税目全体の仕組みを解説する中の一項目として、水戸市・石岡市・つくば市の3市を例に都市計画税に触れました。今回の記事はその一項目を掘り下げ、茨城県内44市町村すべてを対象に、都市計画税の課税有無・税率を一覧化することを主題にしています。「うちの市町村はかかるのか、かからないのか」をこの記事だけで確認できるように整理しました。
1. 都市計画税とはどんな税金か
都市計画税は、固定資産税とセットで語られることが多いものの、法律上は別の税目です。地方税法第702条に基づき、市町村が「都市計画区域のうち原則として市街化区域内」にある土地・家屋の所有者に対して課すことができる税金で、下水道事業・都市計画道路・土地区画整理事業・都市公園整備といった都市計画事業の費用に充てるための「目的税」という性格を持っています(出典:総務省・地方税法第702条の制度解説)。
固定資産税が「資産を持っていること」に対して広く課される税金であるのに対し、都市計画税は「その資産が都市計画事業の恩恵を受けやすい区域にあるかどうか」で課税の有無が分かれる点が最大の特徴です。制度が創設されたのは昭和31年度で、全国的には人口5万人以上の自治体の約80%が導入しているとされています(出典:つくば市「都市計画税のあらまし」2023年3月1日更新)。
1-1. 税率には上限がある
都市計画税の税率は各市町村の条例で個別に定められますが、地方税法第702条の4により、上限(制限税率)は0.3%と定められています。市町村はこの範囲内で独自に税率を設定でき、上限いっぱいの0.3%を採用する市町村もあれば、0.3%より低い税率にとどめている市町村もあります。固定資産税の標準税率が全市町村共通で1.4%であるのとは対照的に、都市計画税は「課税するかどうか」自体を市町村が選べる制度だという点を、まず押さえておく必要があります(出典:総務省「固定資産税の概要」)。
2. 【一覧】茨城県44市町村の都市計画税 課税状況
ここからが本記事の中心です。茨城県総務部市町村課税政が公表している「県内市町村の税率採用状況」(令和7年4月1日現在)をもとに、県内44市町村すべての都市計画税の課税状況を整理しました。数値はすべて公表資料に基づく目安としてご覧ください。

2-1. 都市計画税を課税している市町村(税率0.15〜0.3%・22市町村)
令和6年度において実際に都市計画税収入があった市町村は、次の22市町村です(税率が高い順)。
| 税率 | 市町村 |
|---|---|
| 0.30% | 日立市・土浦市・結城市・龍ケ崎市・常陸太田市・高萩市・取手市・牛久市・ひたちなか市・守谷市・那珂市・坂東市・つくばみらい市・東海村・阿見町 |
| 0.27% | 古河市 |
| 0.23% | 筑西市 |
| 0.20% | 水戸市・北茨城市・大洗町・利根町 |
| 0.15% | つくば市 |
制限税率である0.3%を採用している市町村が15市町村と最も多く、県内の「都市計画税がかかる地域」の標準といえる水準になっています。一方でつくば市の0.15%は上限の半分にとどまり、県内で最も低い税率です(詳細は5章で解説します)。
2-2. 税率の規定はあるが、令和6年度は収入がなかった市町村
石岡市・常陸大宮市・大子町の3市町は、条例上は都市計画税の税率規定を持っています(大子町は0.2%、石岡市・常陸大宮市は標準税率0.3%)が、令和6年度の実績としては収入がなかったと公表資料に記載されています。制度としては存在するものの、現時点で実際に課税対象となる区域・資産が実質的にない、または課税が行われていない状態と考えられます。実際の課税有無は、対象不動産の所在市町村へ個別に確認することをおすすめします。
2-3. 都市計画税を課税していない市町村(税率の規定なし・19市町村)
残る19市町村は、都市計画税の税率規定そのものがなく、非課税です。
下妻市・常総市・笠間市・鹿嶋市・潮来市・稲敷市・かすみがうら市・桜川市・神栖市・行方市・鉾田市・小美玉市・茨城町・城里町・美浦村・河内町・八千代町・五霞町・境町の19市町村が、これにあたります。
茨城県44市町村のうち、実に半数近くが都市計画税を課税していないという点は、県全体で不動産を検討する際に見落とされがちなポイントです。課税ゼロの市町村を含めると、「都市計画税がかからない市町村」の方がむしろ少数派ではないことがわかります。
3. なぜ市町村によって課税の有無が分かれるのか
ここまでの一覧を見ると、「なぜ同じ茨城県内なのに、これほど課税の有無が分かれるのか」という疑問が浮かびます。答えは、都市計画税が「市街化区域」という区域指定と強く結びついた税金だからです。

3-1. 市街化区域と市街化調整区域という区分
都市計画法では、都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に分ける「区域区分(線引き)」という制度があります。市街化区域は積極的に市街化を進める区域、市街化調整区域は市街化を抑制する区域という、正反対の位置づけです。都市計画税は原則としてこの市街化区域内の土地・家屋を課税対象とするため、市街化区域を持つ市町村ほど都市計画税を課税しやすい構造になっています。
3-2. 線引きが行われた時期は市町村ごとにバラバラ
茨城県土木部都市局都市計画課が公表する「都市計画区域図」(平成21年3月現在)によれば、県内の線引きは市町村ごとに異なる時期に行われています。水戸・勝田都市計画や日立都市計画、土浦・阿見都市計画は昭和46年3月15日、竜ヶ崎・牛久都市計画は昭和45年11月25日、取手都市計画・水海道都市計画は昭和45年7月15日など、いずれも昭和40年代の早い段階で線引きが完了しています。一方、つくばみらい市(旧谷和原地区は昭和45年、旧伊奈地区は昭和54年)のように地区によって線引き年月日が異なるケースや、八千代都市計画のように昭和61年と比較的遅い時期に線引きされた地域もあります。
こうした線引きの歴史の違いが、現在の市街化区域の有無・広さに反映されており、結果として都市計画税を課税できる/課税している市町村の分布にも影響しています。
3-3. 「非線引き都市計画区域」という選択肢
茨城県内には、区域区分(線引き)そのものを行っていない「非線引き都市計画区域」の市町村も多数存在します。非線引きの区域では、そもそも「市街化区域」という指定自体が存在しないため、都市計画税を課税する法的な前提区分がありません。前章で確認した「税率の規定なし=非課税」の19市町村の多くは、この非線引き都市計画区域に該当するか、あるいは市街化区域を持ちながらも条例で課税しない選択をしているものと考えられます。開発許可が必要となる面積基準も、市街化調整区域では全て許可対象となるのに対し、非線引き都市計画区域・準都市計画区域では3,000㎡以上、都市計画区域及び準都市計画区域外では1ha(10,000㎡)以上と、区域の性格によって大きく異なります(出典:茨城県「都市計画区域図」)。
4. 固定資産税との違いを正しく理解する
都市計画税は固定資産税と合算して納付書が届くため混同されがちですが、制度上はいくつかの重要な違いがあります。
4-1. 住宅用地の特例率が異なる
固定資産税にも都市計画税にも、住宅用地の課税標準額を軽減する特例措置がありますが、軽減の割合が異なります。固定資産税では小規模住宅用地(200㎡以下の部分)が課税標準額の6分の1、一般住宅用地(200㎡超の部分)が3分の1に軽減されるのに対し、都市計画税では小規模住宅用地が3分の1、一般住宅用地が3分の2までの軽減にとどまります。つまり同じ住宅用地でも、都市計画税の方が軽減幅は小さいということです(出典:総務省「固定資産税の概要」「都市計画税」制度解説)。
4-2. 新築住宅の減額措置は都市計画税には無い
固定資産税には新築住宅に対する税額の減額措置がありますが、この減額措置は都市計画税には適用されません。新築住宅を取得した際、固定資産税は一定期間軽減されても、都市計画税(課税対象地域の場合)は軽減されずに課税される点は見落としやすいポイントです(出典:つくば市「都市計画税のあらまし」)。
4-3. 納付はまとめて1本で行われる
都市計画税が課税される地域では、固定資産税と都市計画税は別々に納付書が届くのではなく、合算された金額で1本の納税通知書として送付されます。納税通知書の内訳欄を確認しないと、両者の金額を見分けにくい点にも注意が必要です。
5. つくば市に見る「例外課税」のケース
県内で最も税率が低いつくば市(0.15%)は、都市計画税の課税対象の考え方においても特徴的な事例です。
5-1. 市街化調整区域でも課税されることがある
つくば市公式サイト「都市計画税のあらまし」によれば、つくば市の都市計画税の課税対象は「市街化区域全域」に加えて「市街化調整区域のうち下水道処理区域内」の土地・家屋にも及びます。つまり、市街化調整区域だから一律に非課税というわけではなく、下水道が整備されている区域であれば、市街化調整区域であっても都市計画税が課税されるケースがあるということです。これは3章で整理した「原則」に対する重要な例外であり、購入予定地が市街化調整区域内にあるからといって都市計画税を無条件に非課税と考えるのは早計です。
5-2. なぜつくば市の税率は半分なのか
つくば市の税率0.15%は、制限税率0.3%のちょうど半分です。研究学園都市計画として昭和48年12月28日に線引きが行われて以降、市街化区域が計画的に拡大してきた経緯があり、課税対象となる資産の総量が比較的大きいことが、低めの税率設定を可能にしている一因と考えられます(公式な税率設定理由の一次情報は確認できず、あくまで区域構造からの推測です)。免税点は土地30万円・家屋20万円で、これは固定資産税と共通です。
6. 生活者・買主目線で知っておきたいこと
同じ茨城県内で家を探していても、住む場所によって都市計画税の負担は0円から0.3%まで幅があります。仮に評価額2,000万円の土地・家屋であれば、税率0.3%の市町村と非課税の市町村とでは、単純計算で年間数万円規模の差が生まれる可能性があります(実際の課税標準額は特例措置により評価額そのものではないため、あくまで概念的な目安です)。
特に次の2点は、物件を検討する段階で確認しておきたいポイントです。
- 検討している物件が「市街化区域」にあるか「市街化調整区域」にあるか、そして市街化調整区域であっても下水道処理区域に該当していないか
- 所在市町村が都市計画税を課税している22市町村(または収入ゼロの3市町)に含まれるか、非課税の19市町村に含まれるか
いずれも所在市町村の資産税課や都市計画課へ確認すれば把握できる情報です。年間の保有コストを事前に見積もっておくことは、購入後の資金計画のずれを防ぐうえで重要です。
7. エリア別・店舗へのご相談窓口
ハウスドゥは茨城県内に4店舗を構えており、それぞれ担当エリアの都市計画税事情も踏まえたご相談が可能です。
つくば市は0.15%と、課税対象となる22市町村の中では最も低い税率です。つくばエリアでの物件探し・売却のご相談はハウスドゥ つくば研究学園都市へ。
水戸市は0.2%です。水戸エリアの物件・売却はハウスドゥ 県庁水戸へお問い合わせください。
取手市は0.3%(制限税率)が適用されています。取手・戸頭エリアのご相談はハウスドゥ 取手戸頭が窓口です。
守谷市も0.3%です。守谷エリアの物件・売却相談はハウスドゥ 守谷にお任せください。
いずれのエリアも、査定のご相談は無料査定フォームから承っています。
8. 関連する茨城県の不動産データ
茨城県内の不動産市場を横断的に把握するには、あわせて次の記事もご参照ください。
- 茨城県の固定資産税の実情|税率と住宅用地特例を解説(今回の記事はこの記事の都市計画税部分を44市町村規模に掘り下げたものです)
- 茨城県の不動産取引件数の推移|年間3.7万件の登記データで読み解く
- 茨城県の住宅ローン事情|地銀・信金のシェアと選び方
9. まとめ
茨城県内44市町村を都市計画税の課税有無で仕分けると、実際に収入のある市町村が22、税率の規定はあるが令和6年度収入がゼロの市町村が3、税率規定そのものがなく非課税の市町村が19という内訳になります(令和7年4月1日現在・目安)。課税の有無を分ける最大の要因は「市街化区域」の指定と線引きの歴史であり、つくば市のように市街化調整区域でも下水道処理区域なら課税されるという例外もあります。同じ茨城県内でも住む場所によって年間の保有コストは変わるため、物件検討の段階で所在市町村の課税状況を確認しておくことをおすすめします。
なお、市街化区域内にある農地でも、生産緑地に指定されていれば宅地並み課税ではなく農地としての低い評価で都市計画税・固定資産税が課税されます。茨城県内の指定状況は茨城県の生産緑地・特定生産緑地|市町村別指定状況で解説しています。
あわせて読みたい:茨城県の水道加入金|市町村の金額差【2026年】
よくある質問
Q1. 都市計画税がかからない市町村を選べば、税負担は必ず軽くなりますか?
都市計画税がかからなくても、固定資産税は全市町村で課税されます。また非課税の市町村は市街化区域を持たない、または開発が進んでいない地域であることが多く、生活利便施設や公共インフラの整備状況が異なる場合があります。税負担だけでなく、生活環境全体を踏まえて検討することをおすすめします。
Q2. 都市計画税の税率は将来変わることがありますか?
都市計画税の税率は各市町村の条例で定められており、市町村の財政状況や都市計画事業の進捗によって改定される可能性があります。将来の税率は公表されていないため、最新の税率は所在市町村の資産税課へ都度ご確認ください。
Q3. 市街化調整区域の土地を買えば、都市計画税は絶対にかかりませんか?
本文5章で解説した通り、つくば市のように市街化調整区域のうち下水道処理区域内は例外的に課税対象となるケースがあります。市街化調整区域だからといって一律に非課税とは限らないため、所在市町村への個別確認が必要です。
Q4. 都市計画税と固定資産税は別々に納付するのですか?
都市計画税が課税される地域では、固定資産税と合算された1本の納税通知書で納付します。別々の納付書が届くわけではありません。
Q5. 税率規定はあるが収入ゼロの石岡市・常陸大宮市・大子町は、今後課税される可能性がありますか?
条例上の税率規定が既に存在するため、対象となる区域・資産が生じれば課税される可能性はあります。ただし将来の運用方針についての公表情報は確認できていないため、詳細は各市町村へお問い合わせください。
Q6. 都市計画税の課税状況は、この記事の一覧だけで正確に把握できますか?
本記事は茨城県総務部市町村課税政「県内市町村の税率採用状況」(令和7年4月1日現在)を出典とした目安です。制度は改定される可能性があるため、個別の不動産取引・購入判断の際は、必ず所在市町村の資産税課で最新情報をご確認ください。
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