茨城県は人口減少県だと言われるが、「県内のどこでも一様に人が減っている」わけではない。転入・転出という「社会増減(社会動態)」のデータを見ると、つくば市のように人を集め続けている市町村がある一方、日立市のように転出が続く市町村もある。この記事では、茨城県統計課の常住人口調査と総務省の住民基本台帳人口移動報告という2つの公的統計をもとに、県内でどこに人が動いているのかを整理する。

まず前提|2つの統計で「茨城県」の評価が違う

茨城県の社会増減を調べようとすると、実は2つの公的な数字にぶつかる。ひとつは茨城県統計課が毎月公表している「茨城県の人口と世帯(推計)月報」(茨城県常住人口調査)。もうひとつは総務省統計局が毎年1月に発表する「住民基本台帳人口移動報告」だ。この2つは集計方法が異なるため、同じ年の茨城県について異なる結論が出ることがある。

茨城県公式サイトも「令和6年茨城県の人口と世帯(推計)の概要」のなかで、わざわざ「茨城県常住人口調査と住民基本台帳人口移動報告の違いについて」という補足を設けている。県常住人口調査ベースでは令和6年(2024年)の茨城県は7,341人の転入超過(社会増)だったが、総務省の住民基本台帳人口移動報告に基づく報道(日本経済新聞、2025年1月31日)では、同じ令和6年の茨城県は6,040人の転出超過だったと伝えられている。数字の方向性そのものが逆転しているように見えるのは、集計対象の期間や移動者の定義(国外からの転入・国外への転出の扱いなど)が違うためだ。この記事では主に県公式の常住人口調査の数値を軸に、市町村単位の傾向を見ていく。

令和6年、県全体では7,341人の転入超過

茨城県統計課の集計によれば、令和6年(2024年)の1年間で県全体の転入者数は125,457人、転出者数は118,116人で、差し引き7,341人の転入超過(社会増)だった。前年の令和5年も8,134人の転入超過、令和4年は10,290人の転入超過と、ここ数年は県常住人口調査ベースで転入超過が続いている。ただし超過数自体は年々縮小傾向にある点は見ておきたい。

市町村別では、24市町村で転入超過、20市町村で転出超過となった。県内44市町村のうち半分をやや上回る自治体で「人が入ってくる方が多い」状態にあるということだ。

社会増でトップはつくば市、突出した強さ

令和6年の市町村別社会増減ランキング(上位5市町村)は、1位つくば市3,731人、2位土浦市1,248人、3位取手市945人、4位阿見町458人、5位古河市453人。つくば市の3,731人という数字は2位の土浦市の約3倍で、県内の転入超過を実質的に牽引している構図が浮かび上がる。研究学園都市としての雇用、つくばエクスプレス(TX)沿線の宅地開発、大学関連人口など、複数の要因が重なった結果だと考えられる。

一方、社会減(転出超過)が最も大きいのは日立市で-1,331人。以下、北茨城市-218人、ひたちなか市-208人、常陸太田市-188人、石岡市-184人と続く。日立市は前年(令和5年)も転出超過ランキング1位であり、2年連続で県内最大の転出超過となっている。

茨城県 市町村別 社会増減ランキング housedo.group
茨城県 市町村別 社会増減ランキング(出典:茨城県統計課)

自然動態と社会動態、それぞれの重み

茨城県の人口減少全体を見ると、令和6年は自然動態(出生-死亡)で24,395人の減少、社会動態(転入-転出)で7,341人の増加だった。自然減の規模は社会増の3倍以上あり、県全体としては「人が流出しているから減っている」のではなく「亡くなる方が生まれる方よりずっと多いから減っている」という構造がはっきり見える。出生者数14,556人は記録のある昭和40年以降で最少、死亡者数38,951人は同じく最多を更新している。

つまり、社会動態(転入・転出)だけを見て「この市町村は人気がある/ない」と判断するのは早計で、自然動態との組み合わせで人口の増減が決まる。実際、令和6年の市町村別人口増減トップ5は1位つくば市+3,765人、2位守谷市+241人、3位阿見町+154人、4位境町+132人、5位利根町+71人で、社会増減ランキングとは顔ぶれが少し異なる。守谷市や境町、利根町は社会動態だけでなく自然動態や年齢構成のバランスも人口増に寄与していると考えられる。

直近(2026年6月)の動き|月単位でも社会増が続く

より新しい動きを見ると、茨城県統計課「茨城県の人口と世帯(推計)」令和8年(2026年)7月1日現在の月報では、6月中に県人口が932人減少し2,777,226人(うち外国人101,790人)となった。この月の内訳は、自然動態で1,602人の減少(出生1,234人・死亡2,836人)、社会動態で670人の増加(転入9,636人・転出8,966人)。1か月単位で見ても、自然減が社会増を上回るという構図が繰り返されていることが分かる。

市町村別では、この月に人口が増加したのは6市1町(水戸市・結城市・常総市・つくば市・ひたちなか市・神栖市・阿見町)のみで、26市8町2村は減少、1町は増減なしだった。年間データのトップ常連であるつくば市に加え、水戸市・常総市・ひたちなか市・神栖市といった県央・県南・鹿行の拠点都市も増加組に入っている点は、単月の動きとして参考になる。

地域別に見た転入・転出の温度差

茨城県は県北・県央・鹿行・県南・県西の5地域に分けて集計されることが多い。令和6年の社会動態を地域別に見ると、県南地域が+7,247人と突出しており、県内の転入超過のほとんどをこの地域が生み出している構図が見える。県央地域も+659人、県西地域も+1,625人とプラスだが、県北地域は-2,123人、鹿行地域は-67人といずれもマイナスだった。つくば市・守谷市・つくばみらい市・取手市などが含まれる県南地域が、つくばエクスプレス(TX)や圏央道といった交通インフラの整備を背景に、県内の人口の受け皿になっていることがうかがえる。

一方、県北地域(日立市・北茨城市・常陸太田市など)は、社会動態・自然動態の両面でマイナスが重なりやすく、人口減少の圧力が県内でもっとも強いエリアのひとつになっている。同じ茨城県内でも、地域によって「人が増えているまち」と「人が減り続けるまち」がはっきり分かれているのが実態だ。

茨城県 地域別 社会動態早見表 housedo.group
茨城県 5地域別の社会動態(出典:茨城県統計課を基に作成)

なぜ社会増減が住まいの話とつながるのか

社会増減は、単なる統計上の数字にとどまらず、不動産の需要そのものに直結する。転入者が多い市町村では、賃貸・売買を問わず新しい住まいを探す人が一定数存在し続けるため、中古住宅や土地の流動性が保たれやすい。逆に転出超過が続く市町村では、空き家の増加や、売却しようとしても買い手が見つかりにくいという状況が起きやすくなる。

また、転入・転出は世帯単位の動きでもある。子育て世帯が転入すれば新築・中古を問わず住宅取得のニーズが生まれ、逆に高齢の親世代が施設に移る・子世帯と同居するなどの理由で実家を離れれば、その家は空き家予備軍になる。社会増減のデータは、いま自分が所有する(あるいはこれから相続する)不動産が置かれている市場環境を客観的に把握するための手がかりになる。

転入超過はいつから続いているのか

茨城県の社会動態(転入超過数)を過去にさかのぼると、令和4年(2022年)は10,290人、令和5年(2023年)は8,134人、令和6年(2024年)は7,341人と、いずれも県常住人口調査ベースではプラスが続いているものの、その規模は年々縮小している。転入者数自体は125,000人台でほぼ横ばいなのに対し、転出者数がじわじわと増えていることが、超過幅の縮小につながっている。新型コロナウイルス禍でのテレワーク普及を背景に、東京圏からの転入が一時的に押し上げられた反動が薄れつつある可能性も考えられる。

なぜ市町村によって転入・転出の差が生まれるのか

県常住人口調査や過去の県公式アンケート調査(市町村における住民の転入・転出理由に関するアンケート調査)を踏まえると、転入・転出の理由としては、通勤・通学の利便性、住宅取得のしやすさ(地価・分譲地の供給量)、子育て・教育環境、就業機会などが複合的に影響していると考えられる。つくば市や守谷市のようにTX沿線で新規の宅地開発が続くエリアは、通勤利便性と住宅供給の両方が揃っているため転入者を集めやすい。一方、日立市のように単一の企業城下町的な産業構造を持つ地域では、雇用の変化がそのまま転出の増減に直結しやすい傾向がある。

転入超過エリアと店舗サイトの担当地域

令和6年の社会増減で上位に入ったつくば市・土浦市・取手市・阿見町・古河市、そして年間人口増減トップ5の守谷市は、いずれも茨城県南から県西にかけての地域に集中している。この一帯は、ハウスドゥの4店舗(つくば市・水戸市・取手市・守谷市)が個別にエリア情報を発信している範囲でもある。つくば市の詳しい住みやすさや地価の動きはハウスドゥ つくば研究学園都市(housedo.jp)、取手市はハウスドゥ 取手戸頭(housedo.life)、守谷市・つくばみらい市はハウスドゥ 守谷(moriya-housedo.com)で、それぞれ市町村単位の人口・地価・子育て環境などをより具体的に解説している。

一方、社会減の規模が県内最大となっている日立市や、県北地域全般については、水戸市エリアを担当するハウスドゥ 家・不動産買取専門店 県庁水戸(mito-housedo.com)が県北方面の情報もカバーしている。転出超過が続くエリアでは空き家が増えやすい傾向があるため、解体や空き家活用を検討する場合は解体Do!(kaitai-ibaraki.com)もあわせて参考にしてほしい。

関連する茨城県のデータもあわせて見る

社会増減は、人口全体の推移・世帯構成・高齢化率・市町村別の人口ランキングといった他の指標と組み合わせて見ることで、より立体的に茨城県の姿が見えてくる。県全体の人口推移と2050年までの将来推計は茨城県の人口推移と将来推計|2050年までの見通し【2026年】、単身高齢世帯の急増については茨城県の世帯数と世帯構成の変化|単身高齢世帯が急増【2026】、44市町村の人口そのものの多寡は茨城県44市町村の人口ランキング【2026年】、高齢化率の地域差は茨城県の高齢化率|44市町村の地域差【2026】で、それぞれ詳しく取り上げている。

まとめ|「県全体」でなく「市町村ごと」に見る視点を

茨城県全体としては、県常住人口調査ベースで見る限りここ数年転入超過が続いているが、その中身は市町村によって大きく異なる。つくば市を筆頭とする県南地域が転入超過を牽引する一方、日立市をはじめとする県北地域では転出超過が続いている。「茨城県は人口が減っている/増えている」という県全体の一言では、実際に自分の不動産がある市町村の状況を正しく捉えられない。社会増減のデータは、市町村単位で見て初めて意味を持つ情報だと言える。

よくある質問

Q1. 茨城県は転入超過ですか、転出超過ですか?

集計方法によって結論が変わります。茨城県統計課の常住人口調査ベースでは令和6年(2024年)は7,341人の転入超過でした。一方、総務省の住民基本台帳人口移動報告に基づく報道では、同じ令和6年の茨城県は6,040人の転出超過と伝えられています。集計対象期間や移動者の定義の違いによるもので、どちらが「正しい」というより、見ている統計が違うことを理解しておく必要があります。

Q2. 茨城県内で最も転入超過が多い市町村はどこですか?

令和6年の県常住人口調査によると、社会増減(転入超過)が最も多かったのはつくば市で3,731人でした。2位の土浦市(1,248人)を大きく引き離しており、県内の転入超過を実質的に牽引しています。

Q3. 茨城県内で最も転出超過が多い市町村はどこですか?

令和6年は日立市が-1,331人で県内最大の転出超過でした。前年(令和5年)も同様に転出超過ランキング1位で、2年連続で県内最大となっています。

Q4. 茨城県のどの地域で人口が増えていますか?

令和6年の社会動態を5地域別に見ると、県南地域(つくば市・守谷市・取手市などを含む)が+7,247人と突出してプラスでした。県央・県西もプラスでしたが、県北・鹿行はマイナスとなっています。

Q5. 社会増減と人口増減は同じ意味ですか?

異なります。人口増減は「社会動態(転入-転出)」と「自然動態(出生-死亡)」の合計です。茨城県は令和6年、社会動態は+7,341人のプラスでしたが、自然動態が-24,395人と大きなマイナスだったため、県全体の人口は減少しました。

Q6. 2026年の直近の動きはどうなっていますか?

茨城県統計課の月報(令和8年7月1日現在)によると、2026年6月中の社会動態は転入9,636人・転出8,966人で670人の社会増となりました。ただし同月の自然動態は1,602人の減少で、差し引き県全体の人口は932人減少しています。

Q7. 社会増減のデータは不動産の売却判断に関係しますか?

関係します。転入超過が続く市町村では住宅需要が保たれやすく、中古住宅・土地の流動性も高い傾向があります。逆に転出超過が続く市町村では空き家が増えやすく、売却時の相場や成約までの期間にも影響します。ご自身の物件がある市町村の傾向を把握したうえで、査定のタイミングを検討することをおすすめします。

茨城県の平均通勤時間や都心アクセスの詳しいデータは「茨城県の平均通勤時間と都心アクセス【2026年】」でも解説しています。

産業構造と雇用の全体像は茨城県の産業構造と雇用|製造業・農業・研究都市で詳しく解説しています。

▶ あわせて読みたい:茨城県の外国人住民数の推移|賃貸・売買の新しい買主層【2026】