「地盤が弱い土地は売れにくいのでは」「液状化のリスクはどう調べればいいのか」——茨城県で不動産の売却を考えるとき、こうした疑問を持つ方は少なくありません。茨城県は霞ヶ浦・北浦をはじめとする水郷地帯を抱え、県南部には利根川・鬼怒川・小貝川沿いの低地が広がる一方、県北部から筑波山周辺には比較的安定した台地・山地も存在し、地盤の性質が地域によって大きく異なる県です。
この記事では、茨城県が公表している「茨城県地震被害想定調査報告書」(平成30年12月)などの一次情報にもとづき、茨城県の地形・地盤の特徴、液状化が起こりやすい土地の見分け方、過去の被害の記録、そして売却時にどう向き合えばよいかを、不動産会社の視点で整理します。数字は「目安」であり、個別の土地の判定ではない点にご留意ください。
茨城県の地形は大きく4つに分けられる
茨城県は総面積約6,097km²で、県土の約3割が山地・丘陵地、残り約7割が平野です。さらに霞ヶ浦をはじめとした湖沼・河川の水域が県土の8%を占める、全国でも有数の「水郷県」でもあります(出典:茨城県地震被害想定調査報告書)。地形は大きく次の4つに区分できます。
①県北部|山地と海岸段丘
北部から北西部にかけては久慈山地・多賀山地・八溝山地が連なり、県内最高峰の八溝山(標高1,022m)がそびえます。北茨城市から日立市にかけての沿岸部は、海に迫る山地が隆起してできた海岸段丘が発達しており、市街地の多くはこの段丘上、またはその裾野の砂丘上に立地しています。
②県中央部〜南西部|洪積台地
那珂台地・東茨城台地・鹿島台地(標高35〜55m)・行方台地(同30〜35m)・筑波稲敷台地(同20〜35m)などの洪積台地が広がり、さらに西部には利根川沿いに猿島台地(同15m程度)が続きます。これらの台地は「関東ローム層」に覆われた比較的安定した地盤とされています。
③県南部|沖積低地
利根川・鬼怒川・小貝川の流域には沖積低地が発達し、霞ヶ浦・北浦などの湖沼も形成されています。この沖積低地は砂・粘土・腐植土が堆積した軟弱地盤になりやすい地形です。
④鹿行・利根川下流部|干拓地・埋立地
神栖市・潮来市・行方市など鹿行地域の一部には、かつての沼地や湿地を干拓・埋め立てて宅地化した地域が広がっています。干拓地・埋立地は液状化被害も発生しやすい条件がそろっているとされます(出典:住宅地盤品質協会)。
茨城県内エリア別の地盤・想定震度の違い【比較表】
茨城県が実施した地震被害想定調査(平成28〜30年度)では、県内44市町村を対象に、複数の想定地震ごとの最大震度を試算しています。地形の傾向とあわせて整理すると、次のような違いが見えてきます。

たとえば同調査の「茨城県南部の地震」(Mw7.3)を想定した場合、水戸市が震度6弱、土浦市・取手市・つくば市・龍ケ崎市・稲敷市などの県南部は震度6強と、県内でも高めの想定になっている市町村が目立ちます。一方、大子町・北茨城市・高萩市などの県北部は同じ想定地震では震度5弱〜5強にとどまる一方、県北部の活断層による地震(F1断層連動)を想定した場合には日立市・高萩市・北茨城市が震度7という最大クラスの想定になるなど、「どの地震を想定するか」によって危険度の高いエリアが入れ替わる点が実務上重要です。単純に「県南は危険」「県北は安全」と一括りにできるものではありません。
液状化はどこで起きやすいのか
液状化の判定手法(PL値)
茨城県の被害想定調査では、砂質土層の液状化判定手法(FL法・PL法、道路橋示方書に準拠)を用い、液状化指数(PL値)によって次のように可能性を区分しています。
- PL値が15を超える:液状化の可能性が非常に高い
- PL値が5を超え15以下:液状化の可能性が高い
- PL値が0を超え5以下:液状化の可能性がやや高い
- PL値が0:液状化の可能性があり
- 該当する微地形:液状化の可能性がややあり
液状化しやすいとされる微地形
同調査では、若松・松岡(2013)による微地形区分をもとに、液状化の評価対象となる地形として「谷底低地・扇状地・自然堤防・後背湿地・旧河道・旧池沼・三角州・海岸低地・砂州砂礫州・砂丘・砂州砂丘間低地・干拓地・埋立地・河川敷・河原」を挙げています。

逆に、台地や丘陵地は一般に液状化の評価対象からは外れやすく、比較的安定した地盤とされています。ただし、報告書自身が明記しているとおり、これは250mメッシュ単位の代表的な地盤モデルによる評価であり、同じメッシュ内でも地形・地質は一様ではなく、今回の評価で「可能性なし」となった場所でも、川や池を埋め立てた盛土部分などで液状化が発生する可能性があるとされています。個別の土地の判定には、より詳細なボーリングデータや地盤調査が必要です。
茨城県で実際に起きた液状化被害の記録
2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震では、茨城県内の複数の地域で液状化現象が発生しました。特に神栖市では、地盤の傾斜・沈下、地割れ、マンホールの浮き上がり、噴砂(砂が地表に噴き出す現象)、上下水道管の破損といった被害が広範囲で確認されています(出典:日本地理学会災害対応本部の報告等)。神栖市はこの経験を踏まえ、被害の大きかった地区を対象に液状化対策事業を実施し、対策が完了した区域は今回の被害想定調査でも液状化評価の対象外とされています。
潮来市の対応
潮来市の一部地域でも東日本大震災後に液状化対策が実施されており、神栖市と同様に、対策実施箇所は今回の想定調査で評価対象から除外されています。これは裏を返せば、震災の実績データが茨城県の液状化評価の精度向上に活かされているということでもあります。
被害の記録は「過去にその土地で何が起きたか」を知る手がかりになる
不動産の売却においては、将来の予測(ハザードマップ・PL値)だけでなく、「過去にその土地・その地域で実際に何が起きたか」という記録も重要な判断材料です。市町村の防災担当課や図書館の郷土資料コーナーでは、震災時の被害状況をまとめた記録集が閲覧できる場合があります。
地盤の弱さは「売れない理由」になるのか
液状化そのものは法定の告知事項ではないが、事実は伝える必要がある
液状化の「リスク」自体は宅地建物取引業法上の重要事項説明の必須項目には含まれていません(水害ハザードマップの説明義務とは異なる点に注意が必要です)。ただし、過去にその土地で実際に液状化被害が発生した事実がある場合は、契約不適合責任の観点から売主が把握している事実として買主に伝えるべき情報にあたります。知っていて黙っていた場合、契約解除や損害賠償請求につながるおそれがあります。
「地盤が弱い=売れない」ではない
台地に比べて低地・干拓地の土地評価が相対的に低く見られる傾向はありますが、地盤改良工事や適切な基礎設計によって住宅としての安全性を確保することは可能で、実際に鹿行地域や県南部の低地でも住宅は数多く取引されています。価格面では、地盤改良の想定コストを踏まえた交渉材料になることはあっても、「取引が成立しない」という意味ではありません。
むしろ影響が出やすいのは「金融・保険の条件」
液状化リスクが取引そのものを止めることは多くありませんが、住宅ローンの審査や火災保険・地震保険の条件(保険料・特約の有無)に影響することがあります。買主が事前にこうした条件を確認できるよう、資料を整理しておくことが売却をスムーズに進めるポイントです。
売却前に確認しておきたい3つのポイント
ポイント1:地盤情報を自分で一度確認しておく
国が公開する「重ねるハザードマップ」(ハザードマップポータルサイト)や、お住まいの市町村が公表している液状化マップ・揺れやすさマップで、対象地の状況を確認できます。神栖市・鹿嶋市・土浦市・取手市・ひたちなか市・阿見町など、県内の複数市町村が独自の液状化ハザードマップを公表しています。
ポイント2:過去の被害の有無を整理する
東日本大震災当時、その土地・建物に沈下や損傷があったかどうかは、修繕履歴や当時の写真・罹災証明の有無などで確認できます。液状化対策工事を行った履歴があれば、それはむしろ安心材料として買主に伝えられる情報です。
ポイント3:地盤調査報告書があれば保管しておく
新築時にスウェーデン式サウンディング試験などの地盤調査を行っている場合、その報告書は買主の安心材料になります。紛失している場合は、建築時の施工会社や地盤調査会社に問い合わせると再発行・写しの取得ができる場合があります。
地盤に関連するもう一つのリスク|土砂災害
茨城県内には土砂災害警戒区域(急傾斜地の崩壊)が約2,200箇所、山腹崩壊危険地区が約460箇所存在します(出典:茨城県地震被害想定調査報告書)。県北部の山地や台地の崖線に近い土地では、地震時の急傾斜地崩壊・山腹崩壊のリスクも想定されています。液状化が主に低地・埋立地の課題であるのに対し、土砂災害は山地・丘陵地・台地の縁辺部の課題であり、茨城県は地形が多様なぶん、エリアによってチェックすべきリスクの種類も異なる点を押さえておくとよいでしょう。
茨城県内エリア別に見る地盤の考え方
県北エリア(日立市・常陸太田市・高萩市・北茨城市・大子町など)
山地・段丘が中心で全体としては比較的安定した地盤が多い一方、活断層を想定した地震では最大震度7という想定もあり、地形の安定性と地震動の強さは別軸で考える必要があります。
県央エリア(水戸市・ひたちなか市など)
台地部分は比較的安定していますが、那珂川・涸沼川沿いの低地は軟弱地盤になりやすい傾向があります。
県南エリア(土浦市・つくば市・龍ケ崎市・取手市など)
洪積台地と利根川・小貝川沿いの沖積低地が混在するエリアです。つくば市の研究学園都市周辺は台地上に整備された比較的新しい市街地である一方、周辺の低地部では液状化評価の対象となる微地形も見られます。
鹿行エリア(神栖市・潮来市・行方市・鹿嶋市・鉾田市)
霞ヶ浦・北浦・利根川に囲まれた干拓地・埋立地が多く、県内でも液状化への注意が特に必要とされてきたエリアです。神栖市・潮来市のように、震災の経験を踏まえて対策工事を実施してきた地域もあります。
よくある質問
Q1. 液状化のリスクがある土地は、住宅ローンが組みにくくなりますか?
A. リスクの有無だけで一律に融資が受けられなくなるわけではありません。ただし金融機関によっては地盤に関する追加資料の提出を求められることがあります。事前に地盤調査報告書やハザードマップの情報を整理しておくと審査がスムーズです。
Q2. 過去に液状化被害があった土地は、必ず告知しなければなりませんか?
A. 売主が把握している事実である以上、告知義務・調査義務の観点から買主に伝える必要があります。告知せずに売却し後から発覚すると、契約不適合責任を問われるおそれがあります。
Q3. 自分の土地が液状化しやすいかどうか、どこで調べられますか?
A. 国のハザードマップポータルサイト(重ねるハザードマップ)や、市町村が公表している液状化ハザードマップで確認できます。茨城県内では神栖市・鹿嶋市・土浦市・取手市・ひたちなか市・阿見町などが独自マップを公表しています。より詳しい判定は地盤調査会社への相談が確実です。
Q4. 地盤改良をしないと売却できませんか?
A. 地盤改良が売却の必須条件になるわけではありません。現況のまま売却し、価格や条件面で調整するケースも一般的です。買取という選択肢であれば、地盤の状態を踏まえたうえで買主側(不動産会社)が引き取る形になるため、個人間売買より手続きがシンプルになる場合があります。
Q5. 茨城県で最も地盤が強いエリアはどこですか?
A. 一律に「ここが一番強い」と断定できる公式な県内順位はありませんが、一般的には山地・台地に位置する地域(大子町周辺や桜川市周辺など)は比較的安定した地盤とされることが多いです。ただし活断層による地震では想定震度が高くなるケースもあり、地盤の強さと地震動の大きさは別の指標として捉える必要があります。
Q6. 液状化した土地でも解体や建て替えはできますか?
A. 可能です。建て替えの際に地盤改良工事をあわせて行うケースが一般的です。解体を検討する場合は、解体Do!(茨城県の解体専門サイト)で地域の解体費用の目安を確認することもできます。
まとめ|地盤の特徴を知ることは、売却の第一歩
茨城県は山地・台地・低地・干拓地と多様な地形を持つ県であり、地盤の性質も地域によって大きく異なります。液状化のリスクは「調べればわかる」情報であり、過度に恐れる必要はありません。大切なのは、①ハザードマップ等で現状を把握すること、②過去の被害の有無を正直に整理すること、③地盤調査報告書があれば保管しておくこと、の3点です。こうした準備があれば、買主にも安心して判断してもらいやすくなり、結果的に売却がスムーズに進みます。
ハウスドゥは茨城県内に4店舗(つくば・水戸・取手戸頭・守谷)を展開し、それぞれの地域の地盤・地形の傾向を踏まえた売却サポートを行っています。県南・県西エリアはハウスドゥ つくば店(housedo.jp)、県央・県北・鹿行エリアはハウスドゥ 水戸店(mito-housedo.com)、取手・我孫子周辺はハウスドゥ 取手戸頭店(housedo.life)、守谷・つくばみらい周辺はハウスドゥ 守谷店(moriya-housedo.com)が担当しています。解体をあわせて検討したい場合は解体Do!(kaitai-ibaraki.com)もご活用ください。




