「実家を建て替えようとしたら、市役所の窓口で『地区計画の届出が必要です』と言われた」——茨城県内で不動産の売却や建て替えを検討していると、こうした場面に出会うことがあります。景観条例や地区計画は、景観法・都市計画法という法律に基づく制度で、県内では市町村ごとに適用状況が大きく異なります。本記事では茨城県公式サイトの一次情報をもとに、県内12市町の「景観行政団体」一覧、県全体をカバーする景観形成条例、つくば市・守谷市など具体的な地区計画の実例まで、不動産の売却・購入・解体を検討する人が知っておきたいポイントを整理します。

目次
  1. 景観条例と地区計画は「別の制度」茨城県内の全体像
    1. 景観法・景観形成条例が規制するもの
    2. 地区計画が規制するもの
    3. 用途地域とは何が違うのか
  2. 茨城県内で「景観行政団体」になっている12市町
    1. 景観行政団体になると何ができるのか
    2. 【一覧表】県内12市町と移行年(令和8年4月1日現在)
  3. 県内全域をカバーする「茨城県景観形成条例」
    1. 平成6年制定・大規模行為届出の仕組み
    2. 景観行政団体がある市町とない市町の二重構造
    3. 届出の窓口と相談先
  4. 地区計画は「街」単位でもっと細かい規制(県内の実例で比較)
    1. つくば市|研究学園都市を支える地区計画群
    2. 守谷市|ニュータウン型の複数地区計画
    3. 常総市・龍ケ崎市|工業団地を守る地区計画
    4. 日立市|駅前再開発・住宅地型の地区計画
  5. 景観整備機構という民間の担い手
    1. 県内3団体の顔ぶれ
  6. 指定の広がりを時系列で見る
    1. 平成17年から令和2年、15年かけて広がった12市町
    2. 令和8年3月も続く決定・変更告示
  7. 暮らしの中で実際に何が制限されるのか
    1. 外壁の色・屋外広告物・建物の高さ
    2. 建て替え・増改築のときの届出タイミング
  8. 売却・購入・解体の前に確認したい実務ポイント
    1. つくば市・水戸市・守谷市は景観行政団体エリア
    2. 取手市はまだ景観行政団体ではない
    3. 解体を検討している場合の注意点
  9. よくある質問
  10. まとめ|制度を知ってから動けば遠回りにならない

景観条例と地区計画は「別の制度」茨城県内の全体像

景観法・景観形成条例が規制するもの

景観法は平成16年に公布された、日本で初めての景観に関する総合的な法律です。景観計画の策定などを通じて、美しく風格のある国土の形成や、個性的で活力ある地域社会の実現を目的としています。都市部だけでなく農山漁村や自然公園の区域も対象に含まれる、幅広い制度です(茨城県公式サイト)。

地区計画が規制するもの

一方、地区計画は都市計画法に基づき、建物の用途・高さ・壁面の位置・敷地の最低面積などを「街区」単位でより具体的に定める制度です。景観計画が主に色彩・形態・意匠を扱うのに対し、地区計画は建築の可否そのものに踏み込みます。つくば市の研究教育施設地区計画のように、両方の制度が重なって適用されている土地もあります。

用途地域とは何が違うのか

茨城県内の用途地域や市街化調整区域の基本的な仕組みは、既存記事「茨城県の土地利用|農地・宅地・山林と市街化調整区域」でも解説しています。用途地域が「その土地に何を建てられるか」の大枠を決めるのに対し、地区計画・景観計画はその枠の中にさらに細かい追加ルールを重ねる仕組みです。

茨城県内で「景観行政団体」になっている12市町

景観行政団体になると何ができるのか

景観法に基づき、良好な景観の保全・形成を図る主体となる自治体を「景観行政団体」と呼びます。市町村は都道府県知事との協議を経て景観行政団体に移行でき、移行すると独自の「景観計画」を策定して、区域内の建築等に対する届出・勧告、必要な場合の変更命令まで行えるようになります(景観法第8条第2項、茨城県公式サイト)。

【一覧表】県内12市町と移行年(令和8年4月1日現在)

景観行政団体 移行年月日
つくば市 平成17年8月24日
守谷市 平成17年8月24日
水戸市 平成18年7月1日
牛久市 平成19年4月1日
桜川市 平成21年2月25日
土浦市 平成21年9月1日
古河市 平成23年1月4日
石岡市 平成24年3月20日
大洗町 平成24年3月26日
つくばみらい市 平成24年4月1日
結城市 平成27年4月1日
笠間市 令和2年2月1日

茨城県内44市町村のうち、景観行政団体に移行しているのはこの12市町のみです(令和8年4月時点)。残る32市町村には、次に説明する県の条例に基づく規制が適用されます。

茨城県 景観条例 二層構造 housedo.group
茨城県景観形成条例(県内全域)と、12市町独自の景観計画の二層構造

県内全域をカバーする「茨城県景観形成条例」

平成6年制定・大規模行為届出の仕組み

景観行政団体でない市町村でも、景観に関する規制が全くないわけではありません。茨城県は平成6年(1994年)に「茨城県景観形成条例」を制定し、大規模な建築など景観に大きな影響を及ぼす行為(大規模行為)について、届出による規制誘導を行っています(茨城県公式サイト)。

景観行政団体がある市町とない市町の二重構造

つくば市・水戸市・守谷市など12市町は、県条例に加えて独自の景観計画を持つため、より地域の実情に即したきめ細かな基準が上乗せされます。一方、それ以外の32市町村では県条例の大規模行為届出が基本の規制となります。どちらの制度が具体的にどう適用されるかは土地・行為の内容によって異なるため、着工前に市町村または県の窓口へ確認するのが確実です。

届出の窓口と相談先

県条例に関する相談窓口は、茨城県土木部都市計画課都市行政(水戸市笠原町978番6、電話029-301-4579)です。景観行政団体に移行した市町では、各市町の都市計画担当課が窓口となります。

地区計画は「街」単位でもっと細かい規制(県内の実例で比較)

つくば市|研究学園都市を支える地区計画群

つくば市は県内でも地区計画の指定が多い自治体の一つです。研究教育施設地区計画、宿西地区地区計画(旧大穂町中心市街地周辺)、薬師地区地区計画、台町地区地区計画(旧谷田部・谷田部インターチェンジ周辺)、研究学園地区中心部の吾妻第三地区・吾妻第四地区地区計画、つくばエクスプレス沿線の上河原崎・中西地区地区計画など、研究学園都市としての街づくりの経緯を反映した地区計画が複数存在します(つくば市公式サイト)。地区計画区域内で建築や土地の区画形質の変更を行う場合、着手の30日前までにつくば市(都市計画部建築指導課)への届出書提出が必要です。

守谷市|ニュータウン型の複数地区計画

守谷市には、中央地区計画(旧守谷駅周辺地区地区計画)、ひがし野地区計画、上裏地区計画、ひがし野四丁目地区計画(旧原東地区計画)、松並青葉地区計画など、複数の地区計画が指定されています(守谷市公式サイト)。つくばエクスプレス開通に伴う駅周辺・住宅地開発の経緯を反映した内容です。

常総市・龍ケ崎市|工業団地を守る地区計画

常総市では坂手工業団地東部地区・北東部地区、花島工業団地地区、内守谷工業団地北部地区、内守谷地区など、工業団地の用途を守るための地区計画が中心です(常総市公式サイト)。龍ケ崎市でも中根台1丁目地区やつくばの里工業団地地区など、住宅地と工業団地の両方で地区計画が指定されています(龍ケ崎市公式サイト)。

日立市|駅前再開発・住宅地型の地区計画

日立市では日立駅前地区、折笠地区、平沢地区、東滑川地区などに地区計画が指定されており、駅前の再開発や住宅地の環境維持を目的とした内容です(日立市公式サイト)。

茨城県 地区計画 4タイプ比較 housedo.group
茨城県内の地区計画に見られる4つの代表的なタイプ

景観整備機構という民間の担い手

県内3団体の顔ぶれ

景観法では、地方公共団体とともに良好な景観形成に取り組む団体を「景観整備機構」として県が指定できる仕組みがあります(景観法第92条)。茨城県内では、NPO法人茨城の暮らしと景観を考える会(水戸市河和田町4471-45、平成17年6月17日指定)、社団法人茨城県建築士会(水戸市笠原町978-30、平成17年7月28日指定)、社団法人茨城県建築士事務所協会(水戸市笠原町978-30、平成17年9月28日指定)の3団体が指定されており、景観形成に関するアドバイザー派遣や調査研究などを担っています(茨城県公式サイト)。

指定の広がりを時系列で見る

平成17年から令和2年、15年かけて広がった12市町

最初に景観行政団体となったのはつくば市・守谷市で、平成17年8月のことでした。その後、水戸市(平成18年)、牛久市(平成19年)、桜川市・土浦市(平成21年)、古河市(平成23年)、石岡市・大洗町・つくばみらい市(平成24年)、結城市(平成27年)と続き、直近では笠間市が令和2年2月に移行しています。15年近くかけて少しずつ広がってきた制度であることが分かります。

令和8年3月も続く決定・変更告示

茨城県公式サイトの「都市計画に関する情報提供」ページでは、直近でも那珂市(令和8年3月31日決定告示)・境町(同3月27日)・古河市(同3月23日)・水戸市(同3月)など、複数市町で地区計画や都市計画の決定・変更の告示が続いていることが確認できます。景観・地区計画は過去に決まって終わりの制度ではなく、現在進行形で見直しが続いています。

暮らしの中で実際に何が制限されるのか

外壁の色・屋外広告物・建物の高さ

景観計画区域内では、建築物の色彩や意匠、屋外広告物の設置などに基準が設けられることがあります。地区計画区域内では、これに加えて建物の用途・高さ・壁面の位置・敷地の最低面積など、より具体的な制限が定められる場合があります。

建て替え・増改築のときの届出タイミング

つくば市の例では、地区計画区域内で建築や土地の区画形質の変更を行う場合、着手の30日前までに届出が必要です。工事を始めてから慌てて届出することのないよう、建て替えや増改築を検討する段階で、早めに区域の該当有無を確認しておくことが重要です。

売却・購入・解体の前に確認したい実務ポイント

つくば市・水戸市・守谷市は景観行政団体エリア

ハウスドゥの茨城4店舗のうち、つくば店の商圏であるつくば市、水戸店の商圏である水戸市、そして守谷店の商圏である守谷市は、いずれも景観行政団体として独自の景観計画を持つエリアです。つくば市エリアの売却・購入相談はハウスドゥつくば店(housedo.jp)、水戸市エリアはハウスドゥ水戸店(mito-housedo.com)、守谷市エリアはハウスドゥ守谷店(moriya-housedo.com)で承っています。

取手市はまだ景観行政団体ではない

一方、取手戸頭店の商圏である取手市は、2026年4月時点では景観行政団体には含まれていません。この場合は県条例である「茨城県景観形成条例」の大規模行為届出が基本の規制となります。取手市エリアの売却・購入相談はハウスドゥ取手戸頭店(housedo.life)までお問い合わせください。

解体を検討している場合の注意点

更地にしてから売却や建て替えを検討している場合、地区計画区域内では建築だけでなく土地の区画形質の変更も届出の対象に含まれることがあります。解体工事の前に、対象区域かどうかを市町村へ確認しておくと安心です。解体費用の目安や市町村別の補助金については解体Do!(kaitai-ibaraki.com)で解説しています。

よくある質問

Q. 茨城県内どこでも景観の届出が必要になりますか?
A. いいえ。県内44市町村のうち、独自に「景観計画」を持つのはつくば市・水戸市・守谷市など12市町(2026年4月時点)に限られます。それ以外の32市町村では、県が定める「茨城県景観形成条例」に基づく大規模行為の届出が適用されます。地域によって窓口や基準が異なるため、着工前に市町村または県土木部都市計画課都市行政(029-301-4579)へ確認するのが確実です。

Q. 地区計画と景観計画はどう違いますか?
A. 景観計画は景観行政団体(市町村)が景観法に基づき定める、色彩・形態・意匠中心の計画です。一方、地区計画は都市計画法に基づき、建物の用途・高さ・壁面の位置・敷地の最低面積などを地区単位でより細かく定める制度で、つくば市の研究教育施設地区計画や守谷市の複数地区計画のように、景観計画とは別に指定されているケースが多くあります。両方が重なって適用される土地も存在します。

Q. 自分の家がある場所に地区計画があるかどうかはどう調べられますか?
A. 各市町村の都市計画課、またはつくば市「つくミル」のような地図データサイトで住所から確認できます。地区計画区域内で建築や土地の区画形質の変更を行う場合、つくば市では着手の30日前までに届出書の提出が必要とされており、他の市町村でも同様の事前届出が求められるのが一般的です。

Q. 景観条例や地区計画があると売却価格に影響しますか?
A. 制限の内容(色彩基準・高さ制限・用途制限など)や届出の要否は重要事項説明の対象になり得るため、購入検討者への説明が必要です。ただし「景観規制の有無による価格差」を示す公的な統計データは確認できておらず、価格への影響は個別の制限内容・立地・需要によって異なるとしか言えません。制限の内容を正確に把握したうえで売却活動を進めることが重要です。

Q. 解体工事も景観条例の対象になりますか?
A. 「茨城県景観形成条例」の大規模行為届出は主に建築物や工作物の新築・増築等を想定した制度ですが、地区計画区域内では建築だけでなく土地の区画形質の変更も届出対象に含まれる場合があります。更地にしてから売却・建て替えを検討している場合は、解体前に対象区域かどうかを市町村へ確認しておくと安心です。

Q. 景観行政団体でない市町村(例:取手市)に住んでいても関係ありますか?
A. 関係します。景観行政団体でない市町村でも、一定規模以上の建築などは「茨城県景観形成条例」の大規模行為届出の対象になるためです。ハウスドゥ取手戸頭店の商圏である取手市は2026年4月時点で景観行政団体には含まれていませんが、県条例そのものは県内全域に適用されます。

まとめ|制度を知ってから動けば遠回りにならない

景観条例や地区計画は、茨城県内であれば一律に同じ内容が適用されるわけではありません。12市町の独自の景観計画、残る32市町村に適用される県条例、そして市町村ごとに指定される地区計画——重なり合ういくつかの制度を、まず「自分の土地がどれに該当するか」から確認することが、建て替えや売却で遠回りをしないための第一歩です。制度の詳細は市町村・県の窓口で必ず確認したうえで、売却や建て替えの計画を進めてください。

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