「茨城県は治安が悪い」という噂を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。実際、人口当たりの犯罪率で見ると茨城県は全国的にも上位に入る年があり、不動産売却・購入を検討する際に治安が気になるのは当然のことです。この記事では、茨城県警察が公表する一次統計(令和7年確定値)に基づき、県全体の犯罪情勢・44市町村別の犯罪率・推移とその背景を正確に整理します。あわせて、治安が住まいの資産価値にどう影響するのか、空き家が治安リスクにつながる理由についても不動産会社の視点で解説します。
1. 茨城県の治安・犯罪の全体像(令和7年確定値)
まず、茨城県警察が公表する最新の一次情報から、県全体の犯罪情勢を確認します。数字は茨城県警察「茨城県の犯罪情勢(令和7年中)」(令和8年2月28日更新)によるものです。
1-1. 刑法犯認知件数は19,273件・前年比8.6%減
令和7年(2025年)1〜12月の刑法犯認知件数は19,273件で、前年(21,094件)から1,821件、率にして8.6%減少しました。検挙件数は7,982件(前年比1,790件増・28.9%増)、検挙率は41.4%で前年(29.4%)から12.0ポイント上昇しています。認知件数が減り、検挙率が上がるという「治安改善」を示す方向のデータです。
1-2. 罪種別の内訳|窃盗犯が7割超を占める
刑法犯総数19,273件の内訳は、窃盗犯14,179件(構成比約73.6%)が最も多く、次いでその他の刑法犯2,104件、粗暴犯1,278件、知能犯1,345件、風俗犯237件、凶悪犯130件と続きます。窃盗犯は前年比13.9%減と大きく減少した一方、粗暴犯は9.3%増、知能犯は32.3%増と増加している点は見過ごせません。
1-3. 重要犯罪(殺人・強盗・放火等)は237件
殺人・強盗・放火・不同意性交等・略取誘拐・不同意わいせつを合わせた「重要犯罪」は237件(前年比12件減)、検挙率は98.3%と極めて高い水準です。内訳は不同意わいせつ100件、不同意性交等76件、強盗26件、殺人21件、放火7件、略取誘拐・人身売買7件でした。
2. 刑法犯認知件数・検挙率の5年推移
単年の数字だけでなく、過去5年の推移を見ることで「増えているのか減っているのか」という傾向が正確に分かります。
2-1. R3〜R7の推移データ
令和3年から令和7年までの刑法犯認知件数・検挙件数・検挙率の推移は以下の通りです(茨城県警察公表データ)。
| 年 | 認知件数 | 検挙件数 | 検挙率 |
|---|---|---|---|
| 令和3年 | 14,277件 | 5,833件 | 40.9% |
| 令和4年 | 15,986件 | 4,988件 | 31.2% |
| 令和5年 | 19,767件 | 5,958件 | 30.1% |
| 令和6年 | 21,094件 | 6,192件 | 29.4% |
| 令和7年 | 19,273件 | 7,982件 | 41.4% |

2-2. 令和3〜6年は増加、令和7年に反転減少
令和3年の14,277件から令和6年の21,094件まで3年連続で増加した後、令和7年に19,273件へと減少に転じました。令和3〜4年は新型コロナ禍の外出制限で犯罪機会そのものが減っていた反動で、令和5〜6年にかけて社会活動の正常化とともに認知件数が押し上げられた可能性があり、令和7年の減少は各種防犯施策の効果が表れ始めた時期と重なります(要因の断定はできませんが、一次データからはこの傾向が読み取れます)。
2-3. 重要窃盗犯(侵入窃盗・自動車盗)の動き
空き巣や忍び込みなどの「侵入窃盗」を含む重要窃盗犯総数は3,438件(前年比480件増・16.2%増)で、認知件数は増加傾向にあります。一方で検挙件数は1,016件(前年比162件減)、検挙率は29.6%(前年比10.2ポイント減)と、侵入窃盗の検挙は依然として難しい領域であることが分かります。特に侵入窃盗(空き巣・忍び込み等)は2,880件(前年比506件増・21.3%増)と大きく増えており、住宅の防犯対策の重要性を裏付けるデータです。
3. 県内の地域差|44市町村の犯罪率ランキング
治安は県内でも地域差が大きいのが実情です。茨城県警察「市町村別の認知件数・犯罪率」(令和7年12月末確定値)から、犯罪率(人口1,000人当たりの認知件数)の高い市町村・低い市町村を整理しました。
3-1. 犯罪率が高い市町村TOP5
| 順位 | 市町村 | 認知件数 | 犯罪率(人口千人当たり) |
|---|---|---|---|
| 1位 | 稲敷市 | 335件 | 9.283 |
| 2位 | 鹿嶋市 | 564件 | 8.720 |
| 3位 | 土浦市 | 1,231件 | 8.661 |
| 4位 | 結城市 | 401件 | 8.210 |
| 5位 | 茨城町 | 243件 | 8.138 |
3-2. 犯罪率が低い(順位が44位に近い)市町村TOP5
| 順位(安全な順) | 市町村 | 認知件数 | 犯罪率(人口千人当たり) |
|---|---|---|---|
| 44位 | 大子町 | 51件 | 3.675 |
| 43位 | 北茨城市 | 170件 | 4.358 |
| 42位 | 常陸太田市 | 208件 | 4.663 |
| 41位 | つくばみらい市 | 256件 | 4.982 |
| 40位 | 城里町 | 88件 | 5.232 |

3-3. 犯罪率の統計上の注意点|人口が少ない市町村は率が高く出やすい
犯罪率は「認知件数÷人口×1,000」で算出されるため、人口が少ない市町村では件数が少なくても率が高く出やすいという統計上の特性があります。例えば稲敷市(人口36,088人)は認知件数335件で率9.283と県内ワースト1位ですが、水戸市(人口266,660人)は認知件数2,111件と件数自体は県内最多でも、率では7.916(ワースト10位)にとどまります。「犯罪率ランキング」を見る際は、件数と人口の両方を確認することが大切です。
3-4. 4店舗担当エリアの犯罪率
当社(ハウスドゥグループ)が茨城県内で店舗展開する4エリアの犯罪率は次の通りです。
| エリア | 認知件数 | 犯罪率 | 県内順位(ワースト順) |
|---|---|---|---|
| つくば市(つくば研究学園都市店) | 1,769件 | 6.796 | 24位 |
| 水戸市(県庁水戸店) | 2,111件 | 7.916 | 10位 |
| 取手市(取手戸頭店) | 788件 | 7.608 | 16位 |
| 守谷市(守谷店) | 460件 | 6.568 | 28位 |
4エリアはいずれも県内中位〜下位(=比較的落ち着いた水準)に位置しています。ただし取手市は前年から認知件数が183件増(+30.2%)と増加率が大きく、注意が必要な傾向です。
4. 犯罪の種類別に見る地域差|乗り物盗・住宅侵入窃盗
「治安」とひとくちに言っても、犯罪の種類によって多い地域は異なります。住まい選びで特に気になる「乗り物盗」と「住宅侵入窃盗(空き巣・忍び込み)」を個別に見ていきます。
4-1. 乗り物盗(自動車盗・オートバイ盗・自転車盗)のワースト市町村
県全体の乗り物盗は3,177件(前年比132件減・4.0%減)でした。市町村別に見ると龍ケ崎市(182件・犯罪率2.439で県内1位)、守谷市(124件・1.770で4位)、取手市(182件・1.757で5位)が上位に入っています。自動車盗単体では、つくば市が126件と県内最多で、坂東市・下妻市も自動車盗の増加率が高い結果でした。
4-2. 住宅侵入窃盗(空き巣・忍び込み)のワースト市町村
住宅侵入窃盗は世帯当たりで見ると、河内町(犯罪率3.156)、茨城町(2.729)、筑西市(2.595)、結城市(2.429)、大洗町(2.228)が上位です。侵入窃盗の主な手口は「空き巣」(在宅していない時間帯を狙う)が最も多く、次いで「忍び込み」(就寝中を狙う)となっています。住宅侵入窃盗は前年比271件増(27.3%増)と県全体で大きく増加しており、施錠の徹底や防犯カメラの設置が重要性を増しています。
5. 特殊詐欺(ニセ電話詐欺)の実態
刑法犯には含まれない特殊詐欺(ニセ電話詐欺)も、高齢化が進む茨城県で見過ごせないリスクです。茨城県警察「ニセ電話詐欺の認知状況について(令和6年確定値)」によると、令和6年中の認知件数は224件・被害額は約10億6,694万円でした(前年比:件数18件減、被害額は567,715千円の大幅増)。
5-1. 手口別の内訳|オレオレ詐欺が4割超
手口別ではオレオレ詐欺95件(構成比42.4%・被害額約7億5,362万円)が最多で、次いで架空料金請求86件(同38.4%)、キャッシュカード詐欺盗9件、預貯金詐欺16件、還付金詐欺6件と続きます。
5-2. 地域別では県南が5割近くを占める
地域別では県南が105件(46.9%)と約半数を占め、県央49件(21.9%)、県西41件(18.3%)、県北20件(8.9%)、鹿行9件(4.0%)の順でした。県南エリア(つくば市・土浦市・牛久市など)は人口集積地であるとともに、特殊詐欺の標的にもなりやすい傾向がうかがえます。
6. 生活者から見た意味|数字と体感のギャップ
統計上の数字と、住民の「体感治安」には差があることも珍しくありません。ここでは一次データから読み取れる生活実感との関わりを整理します。
6-1. 「刑法犯の7割は窃盗」=体感より「モノを盗まれる」リスクの方が高い
刑法犯認知件数19,273件のうち、殺人・強盗などの重要犯罪はわずか237件(構成比1.2%)にとどまり、大半(73.6%)は窃盗犯です。ニュースで報じられる凶悪事件のインパクトに比べ、実際に住民が直面しやすいのは「空き巣」「自転車盗」「万引き」といった財産犯であるというギャップがあります。
6-2. 検挙率41.4%の意味
令和7年の検挙率41.4%は、裏を返せば認知された事件の半数以上が未解決のまま残っているということでもあります。特に侵入窃盗の検挙率は27.0%と低く、「盗まれたら取り返しがつきにくい」領域であることは事実として押さえておく必要があります。
6-3. 高齢化と特殊詐欺の関係
茨城県は高齢化率31.2%(令和7年10月時点、別記事「茨城県の高齢化率」で解説)と全国平均を上回る水準にあり、特殊詐欺の被害者は高齢者に偏る傾向が全国的にも指摘されています。県南エリアで特殊詐欺の認知件数が多いのは、人口集積地であることに加え、高齢単身世帯の多さも一因と考えられます。
7. 住まい・不動産への接点|防犯と資産価値
治安の情報は「怖い・怖くない」で終わらせず、住まいの選び方・守り方・売り方に落とし込むことで初めて実用的な知識になります。ここが不動産会社である当社の専門領域です。
7-1. 防犯性能は資産価値・成約スピードに影響する
買主・借主が物件を検討する際、立地の利便性や価格と並んで「防犯」は重要な判断材料です。二重ロック・センサーライト・防犯カメラ・オートロックなどの防犯設備は、同条件の物件と比較したときの成約スピードや印象に直結します。中古住宅を売却する際は、こうした防犯設備の有無を告知資料に明記することで、買主の不安を先回りして解消できます。
7-2. 空き家は「侵入窃盗」の温床になりやすい
令和7年の住宅侵入窃盗(空き巣・忍び込み)は前年比27.3%増と県全体で増加しています。管理が行き届かない空き家は、人目が少なく侵入が発覚しにくいという性質上、狙われやすい対象です。総務省統計調査に基づく当社の別記事「茨城県の空き家率・世帯数データ」でも触れている通り、茨城県の空き家率は14.1%(令和5年住宅・土地統計調査)で、放置空き家は10年で1.4倍に増えています。空き家の増加と侵入窃盗の増加は、直接の因果関係を一次データで証明することはできませんが、無関係とも言い切れない関係にあります。
7-3. 空き家の治安リスクは早期の売却・活用で下げられる
空き家を放置すればするほど、外観の劣化・雑草の繁茂・郵便物の滞留などが「人が住んでいない」というサインとして周囲に伝わり、侵入窃盗や不法投棄のリスクが高まります。相続などで空き家を所有することになった場合、以下のいずれかの対応が治安リスクを下げる有効な手段です。
- 定期的な管理(換気・通水・清掃)を専門業者に委託する
- 賃貸・売却によって「人の気配がある状態」に戻す
- 活用の見込みがない場合は解体して更地にし、管理負担を減らす
解体をご検討の場合は、姉妹サイト「解体Do!」で茨城県内の解体費用相場・補助金情報をご確認いただけます。
7-4. 売却前にできる防犯チェック
売却を検討する際は、以下の点を確認しておくと買主への訴求材料になります。
- 玄関・窓の鍵が二重ロックになっているか
- センサーライト・防犯カメラの有無
- 塀や植栽が死角を作っていないか(見通しの良さは防犯上のプラス評価)
- 町内会・自治会の防犯活動(防犯パトロール等)の有無
これらは「いばらき防犯ファイル」(茨城県警察公表)でも防犯対策のポイントとして紹介されている内容と共通しています。
8. よくある質問(FAQ)
Q1. 茨城県は本当に治安が悪いのですか?
A. 一次データで見ると、令和7年の刑法犯認知件数は19,273件で前年比8.6%減少しており、検挙率も41.4%まで改善しています。重要犯罪(殺人・強盗等)は237件で刑法犯全体の1.2%にとどまり、大半は窃盗犯です。「治安が悪い」と一律に語るのではなく、罪種別・地域別に見ることが重要です。全国順位との厳密な比較については、都道府県別の最新公式統計(警察庁)を確認することをおすすめします。
Q2. 茨城県内で特に犯罪率が高いのはどこですか?
A. 茨城県警察「市町村別の認知件数・犯罪率」(令和7年12月末確定値)によると、人口千人当たりの犯罪率が最も高いのは稲敷市(9.283)、次いで鹿嶋市(8.720)、土浦市(8.661)でした。ただし人口が少ない市町村は件数が少なくても率が高く出やすい統計上の特性がある点に注意が必要です。
Q3. 4店舗(つくば・水戸・取手・守谷)エリアの治安はどうですか?
A. 犯罪率(ワースト順位)で見ると、つくば市24位、水戸市10位、取手市16位、守谷市28位で、いずれも県内44市町村中で中位〜下位(比較的落ち着いた水準)です。ただし取手市は前年から認知件数が30.2%増加しており、直近の傾向には注意が必要です。
Q4. 空き家を放置すると治安面でどんなリスクがありますか?
A. 管理が行き届かない空き家は人目が少なく、侵入が発覚しにくいため、空き巣や不法投棄の対象になりやすいとされています。令和7年の住宅侵入窃盗は前年比27.3%増と県全体で増加傾向にあり、空き家の適切な管理・早期の売却や活用が治安リスクを下げる有効な手段です。
Q5. 特殊詐欺(オレオレ詐欺等)の被害は多いですか?
A. 茨城県警察の確定値によると、令和6年中の特殊詐欺(ニセ電話詐欺)認知件数は224件、被害額は約10億6,694万円でした。手口別ではオレオレ詐欺が42.4%と最多で、地域別では県南エリアが46.9%を占めています。
Q6. 物件を売却するとき、治安の悪さを買主に伝える義務はありますか?
A. 一般的な犯罪発生状況そのものについて売主に法的な告知義務はありません。ただし、事故物件に該当するような事案(人の死に関する事案等)は、国土交通省「人の死の告知に関するガイドライン」に基づき告知義務の対象となる場合があります(詳細は当社の別記事「事故物件の売却は可能」をご参照ください)。
Q7. 防犯性能の高い家は高く売れますか?
A. 防犯設備の有無が査定額に直接加算されるとは限りませんが、二重ロックや防犯カメラなどは買主の安心材料となり、内見時の印象や成約スピードにプラスに働くケースが多くあります。売却をご検討の際は、防犯面の強みも整理した上で査定を受けることをおすすめします。
9. まとめ
茨城県の治安・犯罪発生状況を一次統計で見ると、令和7年の刑法犯認知件数は19,273件(前年比8.6%減)、検挙率41.4%と改善傾向にある一方、住宅侵入窃盗は27.3%増と警戒が必要な領域も存在します。地域差も大きく、県内44市町村の犯罪率には最大2.5倍以上の開きがあります。数字を正しく理解した上で、防犯対策や空き家の適切な管理・活用を進めることが、住まいの安全と資産価値の両方を守ることにつながります。
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