結論:妨害排除請求権とは、所有権などの物権を持つ人が、その権利の行使を邪魔している相手に対して「邪魔な状態をやめて元に戻してほしい」と求められる権利です。土地への無断の資材置き、越境した建物や物置、他人名義のまま残る不実の登記、共有不動産の不法な占有などで使われます。相手に故意や過失がなくても請求できる点が特徴で、請求が通れば撤去や登記の抹消などを求められます。不動産を売却したいのに権利関係が乱れて前に進めない場合は、まずこの権利が使えるかを整理することが近道です。
この記事では、茨城県で不動産売却をサポートするハウスドゥ茨城(4店舗グループ)の視点で、妨害排除請求権の意味・要件・種類・進め方・売却への影響をできるだけやさしく解説します。法的な判断が必要な事案では、弁護士・司法書士へのご相談が前提です。
この記事でわかること:妨害排除請求権の意味/3つの物権的請求権の違い/成立要件/請求できる相手と内容/共有・不法占拠・登記・越境での使い方/手続きの流れ/費用と時効の考え方/売却への影響/よくある質問
妨害排除請求権とは?意味と読み方をわかりやすく解説
妨害排除請求権(ぼうがいはいじょせいきゅうけん)は、民法に1か条で書かれた権利ではなく、所有権・地上権・抵当権などの「物権」が持つ効力として、判例と学説で認められてきた権利です。物権は「物を直接支配できる権利」ですから、その支配が誰かに邪魔されたとき、邪魔を取り除くよう求められる、というイメージで理解できます。
身近なたとえで理解する
たとえば、自宅の駐車場に他人が勝手に車を置き続けて自分が使えない場合、「どけてください」と言えるのは当然だと感じるはずです。これを法律の言葉にしたものが妨害排除請求権です。土地や建物でも考え方は同じで、所有者は自分の不動産を自由に使い、貸し、売る権利を持っています。
民法上の位置づけ
民法には、所有者が「自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する」と定める条文があります。この所有権の中身を守るために、妨害排除請求権を含む「物権的請求権」が認められています。なお、占有(実際に使っている状態)そのものを守る「占有訴権」という別の制度もあり、両者は目的が重なる場面があります。
物権的請求権の3つの種類と妨害排除請求権の違い
物権的請求権には、次の3種類があります。混同されやすいので、下の図解で違いを確認してください。

返還請求権
占有を奪われたときに、物を返すよう求める権利です。たとえば、他人が土地に居座って完全に占有している場合が典型です。
妨害排除請求権
占有は奪われていないものの、権利の行使を現に邪魔されているときに、その妨害の除去を求める権利です。土地の一部に物置がはみ出している、勝手に他人名義の登記がされている、といった場面が当てはまります。
妨害予防請求権
今はまだ被害がなくても、将来の妨害が起こりそうなときに、その予防措置を求める権利です。たとえば、隣地の擁壁が崩れそうで自分の土地に被害が及ぶおそれがある、といったケースで検討されます。
どれを使うか迷ったときの考え方
「完全に奪われているか」「部分的に邪魔されているか」「これから起こりそうか」で整理すると選びやすくなります。実際の事案では、返還請求と妨害排除請求を併せて主張することも珍しくありません。
妨害排除請求権が成立する要件
一般に、次の要素がそろうと請求が認められやすくなります。
要件1:請求する側が物権(所有権など)を持っていること
土地や建物の所有者であることが基本です。登記簿の名義があると証明しやすくなりますが、登記がないと請求できないわけではありません。ただし、第三者に対して権利を主張する場面では、登記の有無が重要になることがあります。
要件2:現に妨害が続いていること
過去に妨害があっただけで、すでに終わっている場合は、妨害排除請求ではなく損害賠償の問題になります。「今も続いている状態」が対象です。
要件3:妨害が違法であること
相手に使用を認める正当な権利(賃借権、使用貸借、地上権など)がある場合は、妨害とは言えません。相手の権原の有無が争点になることが多く、契約書や過去のやり取りの確認が必要です。
要件4:相手の故意・過失は不要
損害賠償請求とは異なり、妨害排除請求は相手に悪意や不注意がなくても認められます。たとえば、前の所有者が置いていった物が残っている場合でも、現在の占有者に除去を求められる余地があります。
誰に何を請求できる?請求できる相手と請求内容
請求の相手方(誰に言うか)
原則として、現に妨害状態を作り出している人(物を置いている人、建物を所有している人、不実の登記名義人など)が相手です。建物が越境している場合は、その建物の所有者に請求するのが基本で、建物を借りているだけの人に撤去を求めても意味がないことがあります。
請求できる内容の例
具体的には、次のような内容が考えられます。
- 無断で置かれた資材・車両・ごみなどの撤去
- 越境した建物・塀・樹木の越境部分の除去(樹木の枝は改正民法で扱いが整理されています)
- 不実の登記(所有権移転登記や抵当権設定登記など)の抹消
- 通行の妨害となる物の撤去
費用は誰が負担するのか
原則として、妨害を除去するための費用は妨害している側が負担すると考えられています。ただし、台風や地震など不可抗力で他人の土地に物が流れ込んだ場合など、結論が分かれる事案もあるため、個別の確認が必要です。
妨害排除請求権の使い方:不動産でよくある5つのケース
ケース1:土地への無断の物の放置・不法占拠
空き地に無断で車や資材が置かれる、古い物置が残ったまま使えない、といった相談はよくあります。まず現況の写真・日付入りの記録を残し、内容証明郵便などで撤去を求めます。立ち退きや明渡しの流れについては、立ち退き拒否されたらどうする?明渡し請求から強制執行までの流れと費用も参考になります。
ケース2:隣地からの越境(建物・塀・樹木)
境界が不明確なままだと、越境の有無自体が争いになります。茨城県でも古い分譲地や農地転用地で境界が確定していないケースがあり、まず境界の確認から始めるのが実務的です。詳しくは茨城県の境界未確定土地の実情で解説しています。
ケース3:共有不動産で他の共有者や第三者が使っている
共有物を第三者が不法に占有している場合、各共有者は単独で、妨害排除や明渡しを求められると考えられています(保存行為)。一方で、共有者同士では、持分に応じて共有物の全体を使える関係にあるため、他の共有者に対して当然に明渡しを求められるわけではありません。共有の基本は共有持分とは|売却・放棄と共有解消の方法をご覧ください。
ケース4:他人名義の登記が残っている(不実の登記)
売買や相続で本来の所有者が別なのに、登記名義だけが他人のままというケースです。この場合、所有者は不実の登記の抹消(または真正な登記名義の回復)を請求できます。2024年4月から相続登記が義務化されたため、今後は名義の整理がより重視されます。
ケース5:売却したのに契約後も居座る人がいる
売買契約後、引渡しの時点で前の居住者や占有者が退去しないトラブルです。買主が所有権を取得した後は、居座る人に対して所有権に基づく明渡し請求ができる場合があります。売主としては、決済前に引渡し条件を整えておくことが肝心です。引渡しの段取りは引渡しとは?不動産売却の引渡し日・当日の流れ・準備と精算で確認できます。
共有名義の不動産と妨害排除請求権
相続で兄弟姉妹の共有になった実家などで、特に問題になりやすいのが共有です。ここでは考え方を整理します。
第三者の不法占拠には共有者が単独で請求できる
共有不動産を無断で使っている第三者がいる場合、共有者の1人でも、妨害の排除を請求できると解されています。共有者全員の同意を待つ必要がないため、早めに動けるのが利点です。
共有者同士の場合は慎重に
共有者の1人が実家に住み続けているケースでは、他の共有者から「出ていけ」とは直ちに言えません。持分に応じた使用の権利があるためです。ただし、使っていない共有者に対して、使用の対価(賃料相当額)の支払いを求められる余地があります。話し合いで解決しない場合は、共有物分割の手続きを検討することになります。
共有を解消して売却する選択肢
権利関係が複雑なまま争い続けると、時間と費用が膨らみがちです。共有者の合意が取れるなら、全員で売却して代金を分ける方法が最も早いこともあります。共有名義の不動産は共有者が反対でも売れるの記事もあわせてご確認ください。
妨害排除請求の手続きの流れ【5ステップ】

ステップ1:事実と証拠を確認する
登記事項証明書、公図、測量図、現況写真(日付入り)、過去のやり取りの記録などを集めます。「どこからどこまでが妨害されている範囲か」を図面で示せると、後の交渉が楽になります。
ステップ2:内容証明郵便で請求する
期限と内容を明確にした書面で、撤去や登記抹消を求めます。内容証明郵便は、「いつ・どんな内容を送ったか」の証拠になります。
ステップ3:交渉・話し合い
相手が応じるなら、撤去の時期や費用負担を合意書にまとめます。口約束のままにしないことが大切です。
ステップ4:調停・訴訟
話し合いで解決しない場合は、裁判所に調停や訴訟を申し立てます。請求額(訴額)によって簡易裁判所か地方裁判所かが分かれます。個人での手続きは負担が大きいため、弁護士に依頼するのが一般的です。
ステップ5:判決に基づく強制執行・登記
勝訴しても相手が従わない場合は、強制執行で撤去を実現します。不実の登記の抹消は、判決をもとに法務局へ登記申請を行います。
費用・期間・時効の考え方
費用の目安
費用は事案によって大きく異なります。内容証明郵便の作成のみなら数万円程度から、訴訟まで進めば弁護士費用・裁判所費用・測量費用などがかかります。見積りは複数の専門家に取り、「どこまでの手続きをいくらで依頼するのか」を事前に確認しておきましょう。
期間の目安
交渉で解決すれば数週間〜数か月、訴訟になれば半年〜1年以上かかることもあります。売却を急ぐ場合は、解決を待たずに売却できる方法を並行して検討することも大切です。
時効はあるのか
所有権そのものは時効で消えないため、所有権に基づく妨害排除請求権も、権利自体が時効消滅することは通常ありません。ただし、相手が長年占有を続けると、取得時効(20年、善意無過失なら10年)を主張される可能性があります。放置するほど不利になるため、気づいた時点での対応が重要です。
妨害排除請求権と損害賠償請求・占有訴権の違い
損害賠償請求との違い
損害賠償請求は、すでに生じた損害の金銭的な回復を求めるもので、原則として相手の故意または過失が必要です。妨害排除請求は、現在の妨害状態の除去を求めるもので、故意・過失を問いません。両方を併せて請求することもあります。
占有訴権との違い
占有訴権は、所有者でなくても「実際に占有している人」が使える制度で、占有保持の訴えなどがあります。所有権や借地権を証明しにくい場合でも、占有の事実で請求できる点が強みです。一方、占有訴権は一定期間内に提起しなければならないなど、期間の制限があります。
売却を考えている方への影響と注意点
権利関係が不安定だと売却が止まる
不実の登記や越境、不法占拠が残ったままだと、買主が購入を見送る、住宅ローンの審査が通らない、といった形で売却に影響します。解決してから売るか、現状のまま買取で売るかは、状況に応じて選択できます。
仲介と買取でどう変わるか
仲介は買主を探すため、権利関係の整理が前提になりやすい一方、買取は不動産会社が直接買い取るため、訳あり物件でも現状のまま対応できることがあります。ハウスドゥ茨城は買取専門の店舗を持ち、権利関係が複雑な不動産のご相談も承っています。
重要事項説明で告知が必要になる
売却時には、越境や権利関係の問題を買主へ正しく伝える義務があります。隠して売ると契約不適合責任や損害賠償の問題になります。事前に整理しておくほうが、結果的にトラブルを避けられます。
まず相談すべき専門家
法的な請求は弁護士、登記の手続きは司法書士、境界・測量は土地家屋調査士が担当します。ハウスドゥ茨城では、不動産会社の立場から売却全体の段取りを整理し、必要に応じて専門家との連携をご案内します。
妨害排除請求権の根拠・性質と、侵害・禁止の考え方
法令上の規定と性質の整理
妨害排除請求権は、民法に独立した規定があるわけではなく、所有権などの性質から導かれる請求権です。所有者が目的物を自己の意思で利用・収益・処分できるという所有権の内容が、他人の行為によって侵害されたときに発生します。法令の条文としては、所有権の内容を定める規定や、占有訴権に関する規定、そして不動産登記法の登記手続きの規定が関わります。
権利侵害にあたるケース・あたらないケース
権利侵害にあたるのは、目的物の利用を妨げる行為(無断での資材置き、通行の妨害など)です。反対に、法令に基づき許される行為や、所有者自身が認めた利用は、侵害にはなりません。たとえば、民法には、隣地の使用を認める規定や、公道に至るための通行を認める規定があり、これらに基づく行為まで禁止することはできません。自己の土地だからといって、すべての利用を一律に禁止できるわけではない点に注意が必要です。
裁判で争われやすい理由と防止策
裁判になりやすいのは、相手の権原(使ってよい理由)の有無と、妨害の範囲です。それ以外の事情として、境界が不明確な場合も争点になります。トラブルを防止するには、境界確認書の取得、賃貸借・使用貸借の書面化、相続登記の早期実施など、日頃の管理が有効です。急ぎの場合は、裁判の前に仮処分で現状を保全する方法もあります。
よくある事例の整理(一般論)
一般論として、よく見られる事例は次のとおりです。いずれも個別事情で結論が変わるため、実際の対応は専門家にご確認ください。
- 所有地に他人の物置や車両が置かれたままになっている(撤去の請求)
- 隣地の建物の一部が自分の敷地に越境している(越境部分の除去や、財産としての境界の整理)
- 譲渡したはずの不動産の登記名義が元の所有者のままで、変更されていない(登記手続きの請求)
- 利益を得る目的で、他人の土地を無断で駐車場として貸している(撤去と賃料相当額の請求)
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妨害排除請求権に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 妨害排除請求権は誰でも使えますか?
A. 所有権などの物権を持つ人が対象です。賃借人は債権の立場ですが、一定の場合に所有者の権利を代わって行使できると考えられています。個別の可否は専門家にご確認ください。
Q2. 相手が悪気なく置いた物でも撤去を求められますか?
A. 妨害排除請求は相手の故意・過失を要件としないため、求められる余地があります。ただし、相手に使用の正当な権利があれば認められません。
Q3. 共有者の1人でも請求できますか?
A. 第三者の不法占拠に対しては、共有者の1人でも単独で請求できると解されています。共有者同士の場合は、持分による使用権があるため直ちには認められません。
Q4. 時効で請求できなくなることはありますか?
A. 所有権に基づく請求権自体は通常消滅しませんが、相手方に取得時効が成立すると権利を失うおそれがあります。早期の対応をおすすめします。
Q5. 売却前に妨害排除請求をしないと売れませんか?
A. 必ずしもそうではありません。現状のまま買い取る不動産会社に相談する方法もあります。費用・期間・リスクを比べて選びましょう。
Q6. 弁護士に頼むと費用はどのくらいですか?
A. 事案や依頼範囲により大きく異なります。相談時に着手金・報酬・実費の内訳を確認し、複数の見積りを比較すると安心です。
Q7. 妨害排除請求と仮処分は何が違いますか?
A. 妨害排除請求は最終的な撤去や抹消を求める請求で、仮処分は判決までの間に現状を保全するための暫定的な手続きです。急ぎの場合は併用が検討されます。
まとめ:妨害排除請求権は「権利を守る手段」。売却の出口も同時に考える
妨害排除請求権は、所有者が自分の不動産を自由に使うための権利を守る強力な手段です。成立には、物権の存在・現在の妨害・違法性が必要で、相手の故意や過失は問われません。共有・越境・不実の登記・不法占拠など、不動産トラブルの多くで使われます。ただし、解決には時間と費用がかかるため、売却を急ぐ場合は並行して買取などの出口も検討してください。茨城県でお困りの方は、ハウスドゥ茨城(0120-565-072)までお気軽にご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の法的助言ではありません。具体的な事案は弁護士・司法書士等の専門家へご相談ください。
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