「実家の土地を売ろうとしたら、隣の家との境界がはっきりしないと言われた」——茨城県内の不動産相談では、こうした声が珍しくありません。境界標が見当たらない、古い分筆図と現況が合わない、隣地の所有者が遠方に住んでいて連絡が取れない。こうした「境界未確定」の状態は、日本全国の土地に共通する構造的な問題であり、茨城県も例外ではありません。この記事では、境界未確定土地がなぜ生まれるのか、放置するとどうなるのか、そして売却前に何をすべきかを、法務局・国土交通省の一次情報に基づいて整理します。
境界には2種類ある——「筆界」と「所有権界」
境界トラブルを理解するうえで欠かせないのが、「筆界(ひっかい)」と「所有権界(しょゆうけんかい)」という2つの概念の違いです。この2つを混同すると、話がかみ合わなくなります。
筆界とは何か
法務局のQ&Aによれば、筆界とは登記の際に定められた公法上の境界線であり、当事者どうしの合意だけでは動かすことができません。明治期の地租改正以来、一筆の土地が登記された時点の区画がベースになっているため、現況の塀やフェンスの位置と必ずしも一致しないことがあります。
所有権界とは何か
一方の所有権界は、実際に所有権が及ぶ範囲を示す私法上の境界です。こちらは隣接地の所有者どうしの合意によって変わることがあり、長年の占有によって時効取得が生じるケースもあります。不動産売買で使われる確定測量は、この所有権界について隣地所有者と合意し、書面(境界確認書)に残す作業です。
なぜこの違いが重要なのか
「境界が分からない」と一口に言っても、実際には「筆界の記録が古くて現況と合わない」場合と、「所有権界について隣地と合意ができていない」場合の2パターンがあります。前者は法務局の筆界特定制度、後者は確定測量や当事者間の話し合いで対応する、というように解決の道筋が異なります。
茨城県内でも境界未確定土地は珍しくない
境界が明確でない土地が生まれる最大の背景は、「地籍調査」が全国的に道半ばであることです。地籍調査とは、一筆ごとの土地について所有者・地番・地目・境界・面積を調べる作業で、「土地の戸籍」とも呼ばれます。昭和26年の国土調査法制定以来、市町村が主体となって70年以上かけて進められていますが、いまだに完了していません。
全国の地籍調査の進捗率
国土交通省の発表によると、令和6年度末時点での地籍調査の進捗率は、全国の「地籍調査対象地域」で53%にとどまっています。土地区画整理事業などで地籍が明確になっている地域を除いた「優先実施地域」に限定しても81%であり、全体で見ればおよそ半分の土地は、公的な地籍調査による境界確定がまだ済んでいないという計算になります。
地帯別に見ると、都市部(人口集中地区)と山間部で調査の遅れが目立つとされています。都市部は土地が細かく分筆され権利関係者が多いこと、山間部は所有者の特定や現地立会いが難しいことが、それぞれ遅れの要因です。
茨城県の状況について(正直な情報開示)
茨城県内の市町村別の地籍調査進捗率は、国土交通省「地籍調査Webサイト」の地図ツールで確認できるようになっています。ただし、当記事の作成時点で県内市町村ごとの数値を一次資料から個別に確定することはできなかったため、確度の高い「全国平均53%(令和6年度末)」という数字を基準として紹介するにとどめます。市町村単位の最新の進捗率を知りたい場合は、国土交通省「地籍調査Webサイト」の地図ツールで確認することをおすすめします。
境界未確定のまま放置するとどうなるか
境界が確定していない土地は、売れないわけではありません。しかし、実務上いくつかの不利益が生じやすくなります。
売却時に買主から敬遠されやすい
不動産売買では、面積や境界を明確にした確定測量図の提示が実務上のスタンダードになっています。確定測量図がない土地は、買主にとって「あとで面積が違った」「隣地とトラブルになるかもしれない」という不安要素になり、価格交渉や契約条件で不利に働くことがあります。
相続の場面で分割が難航する
境界が不明確な土地を複数の相続人で分ける場合、どこまでが対象地なのかが確定していないと、遺産分割協議そのものが進めにくくなります。将来的に土地を売る予定がなくても、相続のタイミングで境界問題が表面化することは珍しくありません。
越境トラブルが表面化しやすい
ブロック塀や擁壁の基礎が地中で隣地に越境しているケースは、境界が曖昧な土地で特に発覚しやすい問題です。所有権に基づく妨害排除請求権により、越境した工作物の撤去を求められる可能性があるため、売却前に越境の有無を確認しておくことが望ましいとされています。
境界を明らかにする3つの方法
境界を明確にする方法は、目的や予算に応じていくつかの選択肢があります。
現況測量——おおまかな形状を把握する
境界標をもとに、現状の土地の形状や面積を測る方法です。隣地所有者の立会いや合意は不要なため、比較的短期間・低コストで実施でき、費用の目安は10万〜20万円程度とされています。ただし、あくまで「現況」を測っただけで、法的な境界確定とは異なります。
確定測量——隣地所有者と合意して境界を確定する
確定測量は、隣接するすべての土地の所有者に立会いを依頼し、境界について合意したうえで境界確認書を取り交わす方法です。不動産売買では、この確定測量図が用いられるのが一般的です。費用は土地の形状や隣接地の数、官民境界(道路や水路との境界)の有無によって変わりますが、一般的な住宅地で30万〜80万円程度が目安とされています。官公署が関わる官民査定を伴う場合は、さらに時間と費用がかかる傾向があります。
筆界特定制度——法務局に公的な判断を求める
隣地所有者との話し合いがまとまらない場合や、そもそも所有者と連絡が取れない場合に活用できるのが、法務局の筆界特定制度です。法務局に配置された筆界特定登記官が、登記記録・測量図・現地調査などをもとに、公的に筆界を特定します。
申請手数料は、対象地とその隣接地の固定資産税評価額の合計額に応じて決まります。法務局の公式Q&Aでは、評価額の合計が4,000万円の場合の手数料は8,000円という例が示されています。これとは別に、法務局が選任する測量実施者による測量費用が発生し、数十万円規模になることがあります。裁判(境界確定訴訟)に比べると、時間・費用・当事者の精神的負担を抑えられる点がメリットとされています。

茨城県内でよくある境界トラブルのパターン
不動産の実務でよく見られる境界トラブルには、いくつかの典型パターンがあります。
ブロック塀・擁壁の越境
ブロック塀の基礎は、I形・逆T形・L形などの形状があり、地表からは見えない部分で隣地に越境していることがあります。売却前に「地表の塀の位置」だけでなく「基礎の位置」まで確認しておくことが望ましいとされています。
境界標の紛失・移動
古い分譲地や、造成から数十年が経過した土地では、境界標(境界プレートや金属鋲)が工事や経年で失われていることがあります。境界標が見当たらない場合、過去の測量図や登記記録をもとに復元作業が必要になります。
隣地所有者が遠方在住・不明
相続によって隣地の所有者が変わり、しかも遠方に転居している、あるいは所有者自体が不明というケースも増えています。このような場合、分筆登記のための筆界確認ができないことがあり、法務局への相談や筆界特定制度の活用が選択肢になります。

確定測量を依頼してから完了までの流れ
確定測量を土地家屋調査士に依頼する場合、一般的には次のような流れで進みます。あらかじめ流れを把握しておくと、依頼後の見通しが立てやすくなります。
1. 資料調査
法務局で登記事項証明書・地積測量図・公図などを取得し、既存の記録を確認します。過去に測量図が作成されていれば、作業の効率が大きく変わります。
2. 現地調査・仮測量
現地で境界標の有無を確認し、仮の測量を行います。境界標が見当たらない箇所は、過去の資料や工作物の位置などから推定します。
3. 隣地所有者への立会い依頼
隣接するすべての土地の所有者(民有地に加え、道路や水路に接する場合は市町村・県などの管理者)に立会いを依頼します。ここで日程調整に時間がかかることが多く、確定測量全体の期間を左右する要因になります。
4. 境界確認・境界標の設置
立会いのもとで境界を確認し、合意が得られれば境界標を設置します。合意内容は境界確認書として書面化し、関係者が署名・押印します。
5. 測量図の作成・引き渡し
確定した境界に基づいて確定測量図(地積測量図)を作成し、依頼者に引き渡されます。分筆登記や売買契約では、この測量図が使われます。
一般的な住宅地であれば、資料調査から測量図の完成まで1〜3か月程度が目安とされますが、隣地所有者の人数が多い場合や、官公署が管理する道路・水路との境界(官民査定)が絡む場合は、半年以上かかることもあります。
境界に関するよくある誤解
境界をめぐっては、いくつかの誤解が広まりがちです。売却や相続を検討する前に整理しておきましょう。
誤解1:登記簿に面積が載っているから境界は確定している
登記簿(登記事項証明書)に記載された地積は、あくまで登記上の数値であり、現況の測量結果と一致しない「縄伸び・縄縮み」が生じていることがあります。古い測量技術で作成された地積測量図ほど、この傾向が見られます。
誤解2:塀があるところが境界である
塀やフェンス、生垣の位置は、必ずしも法的な境界(筆界・所有権界)と一致するとは限りません。慣習的に「ここが境界」として扱われてきた場所と、実際の登記上の境界がずれているケースは各地で見られます。
誤解3:境界確定訴訟でしか解決できない
境界をめぐる争いは、最終的には裁判所の境界確定訴訟で決着させることもできますが、時間と費用の負担が大きくなりがちです。多くのケースでは、確定測量による当事者間の合意や、法務局の筆界特定制度で解決に至っています。訴訟は最後の手段と位置付けて差し支えありません。
住まい・不動産への接点——売却・相続の前に確認したいこと
境界未確定の土地は、売却でも相続でも「早めに専門家に相談する」ことが結果的に近道になります。実務では、次のような順番で進めることが多くなります。
- 登記事項証明書・地積測量図の有無を確認する
- 現地で境界標の有無を確認する
- 隣地所有者との関係性(連絡が取れるか)を確認する
- 必要に応じて土地家屋調査士に確定測量を依頼する
- 隣地所有者と連絡が取れない場合は法務局に相談し、筆界特定制度を検討する
茨城県内で不動産の売却や相続の相談を検討している方は、測量の要否も含めて早い段階でご相談いただくことをおすすめします。ハウスドゥでは、つくば市周辺はハウスドゥ つくば研究学園都市店、水戸市周辺はハウスドゥ 水戸店、取手市・戸頭周辺はハウスドゥ 取手戸頭店、守谷市周辺はハウスドゥ 守谷店が、それぞれの地域で境界確認を含めた売却相談に対応しています。解体を伴う土地活用をご検討の場合は解体Do!もあわせてご相談ください。
また、相続した土地の境界が未確定のまま活用が難しい場合は、相続土地国庫帰属制度(申請の流れと費用を7ステップで解説)や、共有持分の解消(共有持分とは|売却・放棄と共有解消の方法)といった選択肢もあわせて検討する価値があります。擁壁や傾斜地がある土地の場合は茨城県の擁壁・傾斜地の物件、私道に接する土地の場合は茨城県の私道・共有道路の物件もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q1. 境界標が見当たらないのですが、これは境界未確定ということですか。
A1. 境界標が見当たらなくても、登記記録や過去の測量図に境界の情報が残っている場合があります。まずは法務局で地積測量図の有無を確認し、必要であれば土地家屋調査士に境界標の復元を依頼することをおすすめします。
Q2. 境界が未確定でも土地は売却できますか。
A2. 売却自体は可能ですが、多くの取引では確定測量図の提示が求められます。境界が未確定のまま契約すると、後日の面積相違やトラブルのリスクが残るため、実務上は売却前に確定測量を行うケースが一般的です。
Q3. 隣地の所有者と連絡が取れません。それでも境界を確定できますか。
A3. 隣地所有者が不明、または相続人が不明で立会いができない場合でも、法務局の筆界特定制度を利用できる可能性があります。まずは管轄の法務局・地方法務局の筆界特定室に相談することが第一歩です。
Q4. 確定測量と現況測量はどちらを選べばよいですか。
A4. 隣地との合意までは不要で、おおまかな形状や面積を把握したいだけであれば現況測量で十分です。一方、不動産の売買を予定している場合は、隣地所有者との合意を取り付けた確定測量図が必要になるのが一般的です。
Q5. 筆界特定制度を使うと、必ず自分の主張どおりの境界になりますか。
A5. いいえ。筆界特定制度は、法務局の筆界特定登記官が登記記録や測量図、現地調査などをもとに客観的に筆界を特定する制度であり、申請者の主張がそのまま採用されるとは限りません。
Q6. 境界確定にかかる費用は誰が負担するのですか。
A6. 法律上の明確な負担ルールがあるわけではなく、売主・買主のどちらが負担するかは取引ごとの交渉次第です。実務上は、売却を希望する売主側が測量費用を負担して確定測量図を用意するケースが多く見られます。
まとめ
境界未確定土地は、茨城県に限らず全国的に見られる構造的な問題です。国土交通省の発表では、令和6年度末時点の地籍調査進捗率は全国で53%にとどまっており、多くの土地でまだ公的な境界確定が済んでいません。「筆界」と「所有権界」という2つの視点を持ち、現況測量・確定測量・筆界特定制度という3つの解決手段を理解しておくことが、いざというときの落ち着いた対応につながります。売却や相続を検討し始めた段階で、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
茨城県内の不動産売却・境界に関するご相談はハウスドゥへ
境界確認・測量が必要かどうかの判断も含めて、無料でご相談いただけます。
電話:0120-565-072
LINEで相談:https://lin.ee/0TOaDYu
無料査定はこちら:無料査定・相談はこちら
無料相談フォーム
この記事に関するご相談はこちらから。秘密厳守で対応いたします。




