「いざというとき、救急車はどれくらいで来てくれるのか」「近くに救急を受け入れてくれる病院はあるのか」。住まいを選ぶとき、学校や買い物の便利さは意識しても、救急医療体制まで確認する人は多くありません。しかし茨城県は救急搬送件数が2024年(令和6年)に過去最多を更新し、搬送先が決まるまでに時間がかかる「搬送困難事案」も9千件を超えています。この記事では茨城県公式情報をもとに、県全体の救急医療体制の仕組みと現状、住まい選びとの関係を整理します。
本記事の数値・制度内容はすべて茨城県公式ページ(保健医療部医療政策課、防災・危機管理部消防安全課)で公表されている情報にもとづいています。市町村単位の統計ではなく、茨城県全体としての救急医療の仕組みを整理していますので、ご自身の地域の詳細な受け入れ状況は各消防本部・医療機関へ直接ご確認ください。
茨城県の救急医療は3段階で支えられている
茨城県は「初期」「第二次」「第三次」の3段階と、救急医療情報システムを組み合わせて救急医療体制を整備しています。県保健医療部医療政策課が公表する体制図(令和8年6月22日時点)によると、それぞれの役割は次のとおりです。

初期救急医療機関
比較的軽症の患者を受け入れる休日夜間急患センターや在宅当番医が中心です。「今すぐ受診すべきか迷う」という場面での最初の受け皿になります。
第二次救急医療機関
入院や手術が必要な中等症患者に対応する病院群です。県内の多くの地域中核病院がこの役割を担っています。
第三次救急医療機関(救命救急センター)
生命の危険がある重篤な患者を24時間体制で受け入れる最後の砦です。県公式の「救急医療体制図(二次・三次)」(PDF)に医療圏ごとの指定医療機関が一覧化されており、水戸医療センター・水戸済生会総合病院など複数の医療機関が中核を担っています。
茨城県の救急搬送は過去最多を更新中
茨城県公式ページ「安全・安心な救急医療体制の整備」(2026年7月27日更新)によると、県内の救急搬送件数は近年増加傾向にあり、2023年(令和5年)には14万件を超え、2024年(令和6年)には過去最多を更新しました。

搬送困難事案も9千件超で過去最多
救急隊が現場で搬送先医療機関を決めるまでに「照会4回以上かつ現場滞在30分以上」を要した「救急搬送困難事案」も9千件を超え、こちらも過去最多を更新しています。背景には高齢化の進展に伴う救急需要の増加と、医療機関の入院病床が満床になりやすいことが挙げられています。
救える命が救えなくなる懸念と「転院の円滑化」の取り組み
県はこの状況について「救える命が救えなくなる事態が懸念される」としており、症状が安定した患者を地域の後方支援医療機関へ円滑に転院してもらうことで、救急医療の中核病院の病床を新たな重症患者のために確保する取り組みを進めています。
ドクターヘリ・ドクターカーで県内どこでも約30分
茨城県は水戸医療センターと水戸済生会総合病院を基地病院として、県内全域を対象にドクターヘリを運航しています。救急医療の専門医・看護師が同乗し、現場から適切な医療機関へ搬送するまでの間、救急医療を行うことができる専用ヘリコプターです。
運航実績と到達時間
県公式情報によると、県内のどこへでも約30分以内に到着でき、2024年度(令和6年度)の出動件数は742件(1日あたり2.03件)でした。運航時間は午前8時30分から日没(または午後5時30分)までです。
ドクターカー・病院救急車も県内で活躍
医師・看護師が同乗して搬送途上から医療を行う「ドクターカー」は県内で計11台が運行し、年間の運行件数はおおむね3千件程度です。また病院間の転院搬送や高齢者施設からの搬送に使われる「病院救急車」の運行件数も増加傾向で、2024年度(令和6年度)は1,700件程度でした。いずれも厚生労働省「救急医療提供体制の現況調べ」に基づく各医療機関の報告が根拠です。
「救急車を呼ぶべきか迷う」ときに使える茨城県の窓口
茨城県では救急車を真に必要な人が使えるよう、判断に迷ったときの相談窓口を複数用意しています。
おとな救急電話相談・子ども救急電話相談
急な病気やけがで救急車を呼ぶべきか迷ったときは、看護師等の専門家に24時間365日相談できます。おとな救急電話相談は「#7119」または「050-5445-2856」、子ども救急電話相談は「#8000」または「050-5445-2856」です(いずれも茨城県公式ページに記載)。
全国版救急受診アプリ「Q助」
総務省消防庁が提供する「Q助」は、症状を入力すると緊急度に応じた対応の目安を示してくれるアプリです。パソコン版・スマートフォン版があり、県公式ページでも案内されています。
救急搬送における選定療養費制度
県内の大病院が重篤な救急患者の受け入れという本来の役割を果たせるよう、救急車で搬送された方のうち緊急性が認められない場合、一部の大病院(水戸協同病院・水戸赤十字病院・水戸済生会総合病院・茨城県立中央病院・水戸医療センター・日立総合病院・ひたちなか総合病院・茨城東病院・小山記念病院・白十字総合病院・土浦協同病院・霞ヶ浦医療センター・筑波大学附属病院・筑波メディカルセンター病院・筑波記念病院・筑波学園病院・龍ケ崎済生会病院・JAとりで総合医療センター・牛久愛和総合病院・つくばセントラル病院・東京医科大学茨城医療センター・茨城県西部メディカルセンター・茨城西南医療センター病院の計23病院)で選定療養費を徴収する制度が2024年(令和6年)12月から始まっています。
AED設置施設も4千か所を突破
「茨城県AED設置施設登録制度」に登録され、一般の人が利用できるAED設置施設数は年々増加し、2026年(令和8年)4月時点で4千施設を超えました。救急車が到着するまでの間に居合わせた人が対応できる環境が広がっています。
救急搬送のもうひとつの実情|転院搬送が約1割
茨城県公式ページ「救急車の適正な利用をお願いします」(2026年6月2日更新)によると、県内の救急搬送人数のうち、病院から病院への「転院搬送」が占める割合は約1割に及んでいます。救急車という限られた資源を真に必要な人が使えるよう、県の救急業務高度化推進協議会は医療関係者向けに「茨城県転院搬送ガイドライン」を作成し、地域のルールに基づいた転院搬送の実施を呼びかけています。
「症状は軽いが交通手段がない」ときの選択肢
緊急性はないものの、通院や退院、転院で自力の移動が難しい場合には、県内各消防本部の認定を受けた「患者等搬送事業者(民間救急車)」を利用する方法もあります。乗務員は専門講習を修了しており、ストレッチャーや車いすのまま乗車できる車両を備えています。サービス内容や料金は事業者ごとに異なるため、利用時は各事業者への確認が必要です。
住まい選びと救急医療体制の関係
救急医療体制は日々の暮らしからは見えにくいインフラですが、実際に家族の急病やけがに直面したとき、搬送先までの距離や地域の医療体制は大きな安心材料になります。持ち家の住み替えや実家の売却を検討する際、「今の地域にどんな医療資源があるか」「近くに救急告示医療機関があるか」を確認しておくことは、暮らしの見通しを立てるうえで役立つ視点のひとつです。
茨城県内でも、水戸市・つくば市・土浦市周辺には第二次・第三次救急医療機関が比較的集積している一方、地域によっては最寄りの救急告示医療機関までの距離や、ドクターヘリ・ドクターカーの役割が相対的に大きくなる地域差があります。県が「等しく適切なへき地医療体制の整備」にも別途取り組んでいるとおり、県全体で医療資源の配置には差があるのが実情です。売却や住み替えの相談では、こうした生活インフラの実情もあわせてお伝えできます。
特に高齢のご家族と同居・近居を検討する場合や、持病があり定期的な通院が必要な場合は、単に病院の数だけでなく「二次救急・三次救急の受け入れ体制が整っているか」「ドクターヘリの基地病院からの距離」といった視点も、住まい選びの判断材料になります。茨城県4店舗(つくば・水戸・取手戸頭・守谷)では、地域ごとの暮らしの実情を踏まえたご相談を承っています。
よくある質問
Q1. 茨城県で救急車を呼ぶべきか迷ったときはどこに相談できますか?
茨城県救急電話相談を利用できます。おとなの場合は「#7119」または「050-5445-2856」、子どもの場合は「#8000」または「050-5445-2856」で、24時間365日、看護師等の専門家に相談できます。
Q2. 茨城県のドクターヘリは県内どこでも来てくれますか?
茨城県公式情報によると、水戸医療センターと水戸済生会総合病院を基地病院として県内全域を対象に運航しており、県内のどこへでも約30分以内に到着できるとされています。運航時間は午前8時30分から日没(または午後5時30分)までです。
Q3. 救急搬送困難事案とは何ですか?
救急隊が現場で搬送先医療機関を決めるまでに、照会4回以上かつ現場滞在30分以上を要した事案を指します。茨城県では2024年(令和6年)に9千件を超え、過去最多を更新しています。
Q4. 選定療養費とはどのような制度ですか?
緊急性が高くない状態で救急車を利用し、県内の一部の大病院(23病院)に搬送された場合に徴収される費用です。大病院が重篤な救急患者の受け入れという本来の役割を果たせるよう、2024年(令和6年)12月から導入されています。
Q5. 茨城県の救急搬送件数はどのくらいですか?
茨城県公式情報によると、2023年(令和5年)に14万件を超え、2024年(令和6年)は過去最多を更新しました。高齢化の進展などにより増加傾向が続いています。
Q6. AEDはどこで確認できますか?
「茨城県AED設置施設登録制度」に登録された一般利用可能なAED設置施設は2026年(令和8年)4月時点で4千施設を超えています。詳細は茨城県のAED普及啓発サイト「AEDのココロエ」で確認できます。
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