結論:親族が住んでいる家から出てもらえるかどうかは、「家賃をもらっているか」で決まります。家賃なしで貸している(使用貸借)なら、借地借家法の「正当事由」は不要で、期間や目的の定めがなければ貸主はいつでも解除を求められるのが原則です。一方、家賃を受け取っている(賃貸借)なら、貸主からの解約には正当事由と6か月前の通知が必要になります。
この記事では、親・兄弟・子ども・内縁のパートナーなど親族が住んでいる家の「立ち退き」について、居住権の有無の見分け方、明渡しまでの手順、立ち退き料の考え方、売却したいときの選択肢を、茨城県で不動産売却のご相談を受けるハウスドゥ茨城の視点でわかりやすく整理します。なお、法律上の最終判断は個別の事情で変わるため、紛争になりそうな場合は弁護士や司法書士などの専門家にご相談ください。
親族が住む家の立ち退きは「契約の種類」で決まる
親族だからといって、立ち退きのルールが特別になるわけではありません。まず確認すべきは、親族と貸主(所有者)のあいだに、どんな「貸し借り」があるのかです。

家賃をもらっていない場合は「使用貸借」
親が子どもに、兄が弟に、無償で家を使わせているケースは、民法上の使用貸借にあたります。使用貸借には借地借家法が適用されないため、賃貸借のように「正当事由がなければ解約できない」という強い保護はありません。
家賃をもらっている場合は「賃貸借」
たとえ親族でも、毎月決まった金額の家賃を受け取っていれば、賃貸借と判断されやすくなります。賃貸借には借地借家法が適用され、貸主から契約を終わらせるには、更新拒絶・解約申入れの通知(期間満了の1年前から6か月前までなど)と正当事由が求められます。正当事由の考え方は、借地借家法の立ち退きと正当事由・6か月ルールで詳しく解説しています。
「少額の光熱費だけ」「固定資産税相当額だけ」の場合
親族が光熱費や固定資産税程度の負担しかしていない場合、家賃の対価性が薄いとして使用貸借と扱われることが一般的です。ただし最終的には、金額や実態を踏まえた総合判断になるため、通帳の振込記録などの証拠を残しておくことが大切です。
契約書がないときの確認ポイント
親族間では契約書を作らないことが多く、判断が難しくなります。次の表の項目を確認すると、使用貸借か賃貸借かの見当がつきます。
| 確認項目 | 使用貸借になりやすい | 賃貸借になりやすい |
|---|---|---|
| 家賃の支払い | なし、または名目的な少額 | 相場に近い金額を毎月支払い |
| 契約書・覚書 | なし | あり(口約束でも成立) |
| 固定資産税の負担 | 貸主が負担 | 家賃に含まれる |
| 貸し始めた経緯 | 好意・援助 | 収益目的 |
使用貸借の場合の立ち退き
期間も目的も決めていない場合
民法598条2項により、期間と使用の目的を定めていなかった使用貸借は、貸主がいつでも解除できるのが原則です。親族が「ずっと住んでいいと言われた」と主張しても、書面などの裏付けがなければ「期間の定めなし」と扱われる可能性があります。
「子どもが独立するまで」など目的を決めている場合
使用の目的を決めていた場合は、その目的に従った使用・収益をするのに足りる期間が経過したときに、貸主は解除できます(民法598条1項)。たとえば「大学卒業まで」「再就職先が決まるまで」といった約束は、その時期が来れば解除を求めやすくなります。
借りている親族が亡くなった場合
使用貸借は借主の死亡によって終了します(民法597条3項)。借主の子や同居していた家族に、使用貸借がそのまま引き継がれるわけではありません。ただし、実際には話し合いで猶予期間を設けるのが現実的です。相続が絡むケースは使用貸借の土地は相続でどうなる?貸主死亡・借主死亡のケース別解説も参考にしてください。
正当事由は不要でも「円満な話し合い」が基本
法律上は立ち退きを求められる場面でも、いきなり訴訟に進むと親族関係が壊れてしまいます。まずは出てもらいたい理由(売却、建て替え、自分たちが住むなど)と時期を丁寧に伝え、引っ越し先探しの協力などで歩み寄るのが、結果的に早く確実です。
居住権が認められるケース
親族の中には、法律上の居住の保護を受けられる人もいます。立ち退きを求める前に、次のケースに当たらないか確認しましょう。
配偶者居住権(2020年4月施行)
配偶者居住権は、被相続人(亡くなった方)の法律上の配偶者が、相続開始時に被相続人の所有する建物に住んでいた場合に、終身または一定期間、その建物に無償で住み続けられる権利です。遺産分割や遺言などで設定され、登記をすることで第三者にも主張できます。権利の内容や注意点は相続不動産と配偶者居住権|失敗しない3つの要点で解説しています。
配偶者短期居住権
配偶者居住権が設定されない場合でも、配偶者は、遺産分割が確定する日または相続開始から6か月を経過する日のいずれか遅い日まで、その建物に無償で住み続けられます。この期間は、他の相続人が追い出すことはできません。
内縁のパートナー・同居の子ども・兄弟姉妹の場合
配偶者居住権は法律上の配偶者に限られ、内縁関係の方には認められません。ただし、被相続人との生前のやり取りから使用貸借の合意があったと認められるなど、事情によっては居住が一定程度守られる場合があります。同居の子どもや兄弟姉妹も、原則としては上で説明した使用貸借のルールで判断されます。
立ち退き(明渡し)を求める手順
親族が任意に出ていかない場合の一般的な流れは、次の5ステップです。

ステップ1:話し合いで理由と期限を伝える
売却や建て替えなど、出てほしい理由と希望する時期を具体的に示します。引っ越し費用の一部を負担するなど、相手が動きやすい提案を用意しておくと進みやすくなります。
ステップ2:書面(内容証明郵便)で解除を通知する
話し合いで合意できない場合は、使用貸借契約の解除と明渡しの期限を、内容証明郵便などの記録が残る方法で通知します。後の調停や訴訟で「いつ、何を求めたか」の証拠になります。
ステップ3:調停で合意を目指す
裁判所の調停(家庭の事情が絡む場合は家事調停)を利用すれば、第三者を交えて冷静に条件を調整できます。合意内容は調停調書にまとめられます。
ステップ4:建物明渡請求訴訟
調停でも解決しない場合は、建物明渡請求訴訟を起こします。判決で明渡しが命じられても、相手が従わないときは次の強制執行が必要です。詳しい流れは立ち退き拒否されたらどうする?明渡し請求から強制執行までの流れと費用をご覧ください。
ステップ5:強制執行
判決などの債務名義を得たうえで、裁判所の執行官が明渡しを実施します。費用や期間は事案によって異なり、数か月以上かかることもあります。
やってはいけない「自力救済」
鍵を勝手に交換する、荷物を運び出す、水道や電気を止めるといった行為は、たとえ所有者でも違法とされるおそれがあります。必ず法的な手続きを踏んでください。
立ち退き料・引っ越し費用の考え方
使用貸借では、立ち退き料を支払う法律上の義務はありません。一方、賃貸借で正当事由が弱い場合は、立ち退き料が正当事由を補う要素のひとつになります。立ち退き料の相場の考え方は立ち退き料の相場のページもあわせてご確認ください。
法的な義務がなくても、引っ越し費用や敷金・礼金相当額の一部を「協力金」として負担すると、合意が早まることがあります。後から「言った・言わない」にならないよう、金額・支払い時期・明渡し期限を書面(合意書)に残しましょう。
共有名義の家で親族が住んでいる場合
相続した実家を兄弟で共有していて、その一人だけが住み続けているケースはよくあります。共有者の一人が使用貸借の解除を求める場合は、共有物の管理に関わる事項として、共有持分の過半数で決める考え方が基本です。持分の割合によっては、単独では解除を求められないこともあります。
話し合いがまとまらないときは、共有物分割(売却して代金を分ける、持分を買い取るなど)を検討することになります。住んでいる親族が買い取るのか、全員で売るのかを早めに話し合うことが、関係悪化を防ぐポイントです。
親族が住んだまま・住んでいる家を売却できる?
「親族が住んでいて出てもらえない」状態でも、売却の選択肢はあります。
退去してもらってから売る
一般的な仲介による売却では、買主に引き渡すまでに居住者が退去している必要があります。売却のスケジュールから逆算し、退去時期を決めておきましょう。仲介と買取の違いは不動産の売買とは?仲介と買取の違い・流れ・費用や税金で整理しています。
親族に買い取ってもらう
住んでいる親族が購入する選択肢もあります。その場合は時価と大きく離れた価格にすると贈与税の問題になることがあるため、適正価格の決め方が重要です。親族間売買とは|注意点と適正価格の決め方を確認してください。
状況を相談しながら買取・仲介を比較する
居住者の問題、共有、相続など、事情が複雑な不動産は、買取という売却方法でスムーズに進むことがあります。ハウスドゥ茨城では、取手戸頭・守谷・つくば研究学園都市・県庁水戸の4店舗で、売却のご相談を受け付けています。
親族間の立ち退きで起きやすいトラブルと交渉の進め方
親族間では、法律上の結論よりも「納得できるかどうか」が争いの種になりがちです。ここでは、よくある事例と、トラブルを避けながら交渉を進めるポイントをまとめます。
よくあるトラブルの例
- 「親から一生住んでいいと言われた」という口約束を理由に、所有権を取得した兄弟や相続人からの退去要求を拒否される
- 相続した実家に兄弟の一人が住み続け、遺産分割や財産の分け方がまとまらない
- 賃料を払っているつもりの親族と、お小遣い・援助だったと考える貸主の認識がずれている(賃貸借契約の有無で争いになる)
- 売却の日程が決まっているのに、退去の期限を明確にしていなかった
交渉を進めるときのポイント
自分の主張だけを伝えるのではなく、相手の事情(仕事、学校、収入、健康状態など)を聞いたうえで、現実的な退去時期を一緒に決めることが大切です。要求する根拠(売却の予定や建物の老朽化など)を整理し、複数の選択肢(退去の時期、協力金、住み替え先の紹介)を提示すると、相手も納得しやすくなります。
話し合いの内容は、日付・退去期限・費用負担を明確にして合意書を作成し、双方が署名しておきましょう。賃貸借契約として家賃が発生していた場合は、未払い賃料や敷金の精算も合意書に記載します。
話し合いがこじれたときの対応手段
当事者同士での解決が難しい場合は、弁護士の事務所に依頼して代理交渉を行ってもらう、家庭裁判所の調停を利用する、といった手段があります。裁判まで進むと時間も費用もかかるため、早い段階での相談が結果的にメリットになります。
相談先の選び方|弁護士・司法書士・税理士・不動産会社
立ち退きや相続には複数の専門家が関わります。目的に応じて相談先を選びましょう。
| 相談先 | 主な対応内容 | 向いている悩み |
|---|---|---|
| 弁護士 | 交渉の代理、明渡し請求、訴訟対応 | 親族が退去に応じない、争いが大きい |
| 司法書士 | 相続登記、書類作成のサポート | 名義変更や登記を進めたい |
| 税理士 | 相続税・譲渡所得税の試算 | 売却後の税金や遺産分割の税負担を知りたい |
| 不動産会社 | 査定、売却や買取の提案、専門家の紹介 | 売却方法や価格、スケジュールを決めたい |
相談の際は、専門家の得意分野や実績を事前に確認し、複数に相談して比較するとよいでしょう。ハウスドゥ茨城でも、売却に関する情報提供と、必要に応じた専門家のご紹介をサポートしています。
専門家に相談する前に準備しておくもの
次の資料をそろえておくと、弁護士・司法書士・不動産会社への相談が円滑に進みます。
- 登記事項証明書(所有者・共有者・持分の確認)
- 貸し始めた経緯がわかるメモ、メール、LINEなどのやり取り
- 家賃や光熱費の支払いがわかる通帳や領収書
- 相続が関係する場合は戸籍・遺言書・遺産分割協議書
- 固定資産税の納税通知書
よくある質問(FAQ)
Q1. 親族が住む家から出てもらうのに、正当事由は必要ですか?
家賃を受け取っていない使用貸借であれば、借地借家法の正当事由は不要です。ただし、家賃をもらっている賃貸借の場合は、正当事由と事前の通知が必要になります。
Q2. 親が子どもに家を貸している場合、いつでも出ていってもらえますか?
期間と目的を決めていない使用貸借なら、原則としていつでも解除を求められます。ただし、目的(子どもが独立するまでなど)を決めていた場合は、その目的に足りる期間が過ぎるまで待つ必要があります。
Q3. 借りていた親族が亡くなったら、その子どもはそのまま住めますか?
使用貸借は借主の死亡で終了するため、子どもが自動的に住み続けられるわけではありません。ただし現実には、引っ越し準備の猶予期間を設けて話し合うことが多くなります。
Q4. 内縁のパートナーにも居住権はありますか?
配偶者居住権は法律上の配偶者に限られます。内縁の方は同権利の対象外ですが、事情によっては使用貸借の合意があったと判断される場合があります。
Q5. 立ち退き料は必ず払う必要がありますか?
使用貸借では支払い義務はありません。賃貸借で正当事由が弱い場合に、立ち退き料が正当事由を補う要素として考慮されます。
Q6. 親族との話し合いがまとまらないとき、最初に相談すべき先は?
紛争性が高い場合は弁護士、登記や相続の手続きは司法書士、売却や買取の方針は不動産会社が目安です。ハウスドゥ茨城では売却の方向性のご相談をお受けしています。
まとめ|親族の立ち退きは「契約の種類の確認」から
親族が住む家の立ち退きは、まず使用貸借か賃貸借か、居住権が認められる事情がないかを確認することから始まります。使用貸借なら法的には解除を求めやすい場面でも、親族関係を考えれば、理由と期限を伝えた話し合い、必要に応じた協力金の提案、書面での合意が基本です。
売却を前提に進める場合は、退去のタイミングと売却方法(仲介・買取)をセットで検討することをおすすめします。まずはお気軽にご相談ください。
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