相続した土地を分けて売る、住み替えのたびに家を売る、親族から引き継いだ不動産を数年かけて少しずつ手放す。こうしたとき、「何度も売ると宅建業の免許が必要になるのでは」と不安になる方は少なくありません。
この記事では、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(令和8年4月1日施行版)に書かれている判断の枠組みを、売主の立場でやさしく整理します。ご自身のケースがどうなるかを断定する記事ではありません。判断に迷うときの相談先と、不動産会社に任せるという選択肢もあわせてご紹介します。
結論:「何回売ったら宅建業」という回数の線引きはなく、複数の要素で総合的に判断される
宅地建物取引業(宅建業)は、宅建業法第2条第2号で「業として」行う宅地・建物の売買・交換や、売買・交換・貸借の代理・媒介と定められています。そして、免許は第3条第1項で定められています。
国土交通省の解釈・運用の考え方では、「業として行なう」とは、宅地建物の取引を社会通念上、事業の遂行とみることができる程度に行う状態を指し、次の5つの事項を参考に、諸要因を勘案して総合的に判断するとされています。つまり、「3回までなら大丈夫」「5回売ると宅建業」といった回数だけの基準は示されていません。

宅建業の定義と免許の基本(宅建業法2条2号・3条1項)
「宅建業」にあたる行為
宅建業にあたるのは、宅地・建物の売買や交換を自分で業として行うこと、そして、売買・交換・貸借の代理や媒介を業として行うことです。一方、自分の持ち物を貸す(自ら貸借)だけなら、宅建業の定義には含まれません。
宅建業を営むには免許が必要
宅建業を営もうとする者は、事務所を置く場所に応じて、国土交通大臣または都道府県知事の免許を受ける必要があります。免許なしに宅建業を営むことは宅建業法で禁じられており、法令上の罰則の対象となる場合があります。詳しい内容は、条文または所管の窓口でご確認ください。
国土交通省が示す5つの判断要素
解釈・運用の考え方に示された参考事項は、次の5つです。いずれも「事業性が高い/低い」という方向で整理されています。
① 取引の対象者
広く一般の者を対象に取引を行おうとするものは事業性が高く、取引の当事者に特定の関係が認められるものは事業性が低いとされています。特定の関係としては、親族間や、隣接する土地の所有者など、代わりを見つけにくい相手が挙げられています。
② 取引の目的
利益を目的とするものは事業性が高く、特定の資金需要を満たすことを目的とするものは事業性が低いとされています。特定の資金需要の例として、相続税の納税や、住み替えに伴う既存住宅の処分など、利益を得るために行うものではないケースが挙げられています。
③ 取引対象物件の取得経緯
転売するために取得した物件の取引は事業性が高く、相続または自分で使うために取得した物件の取引は事業性が低いとされています。自分で使うために取得した物件には、個人の居住用の住宅などが含まれます。
④ 取引の態様
自分で購入者を募り、一般の消費者に直接販売しようとするものは事業性が高く、宅建業者に代理や媒介を依頼して販売しようとするものは事業性が低いとされています。
⑤ 取引の反復継続性
反復継続的に取引を行おうとするものは事業性が高く、1回限りの取引として行おうとするものは事業性が低いとされています。ここで注意したいのは、反復継続性は現在の状況だけでなく、過去の行為や、将来の予定とその蓋然性も含めて判断されるとされている点です。また、1回の販売行為であっても、区画割りして行う宅地の販売のように、複数の人に対して行われるものは、反復継続的な取引にあたるとされています。
ケース別の考え方のヒント
以下は、上の5つの要素を当てはめるときの一般的な見方です。実際にどう判断されるかは、個別の事情によって変わります。
相続した土地・実家を売る場合
相続で取得した物件の取引は、取得経緯の面では事業性が低い方向とされています。ただし、相続した土地を多数の区画に分けて一般に販売するような場合は、態様や反復継続性の面から見られる可能性があります。区画割りを考えている場合は、事前に所管の窓口へ相談することをおすすめします。
住み替えのたびに売る場合
住み替えに伴う既存住宅の処分は、目的の面で事業性が低い例として挙げられています。ただし、「転売するために買って、また売る」ことを繰り返している状態は、取得経緯や目的の面で事業性が高い方向になります。
購入して貸す・売ることを繰り返している場合
購入した物件を自分で貸すだけなら宅建業の定義に含まれませんが、買って売ることを繰り返す場合は、5つの要素を総合して判断されます。回数や期間だけで判断できる性質のものではないため、不安がある場合は後述の窓口で確認してください。
判断に迷うときの相談先
宅建業にあたるかどうかは、個別の事情を踏まえて総合的に判断されるため、この記事だけで「大丈夫」「該当する」と決めることはできません。茨城県内で宅建業を所管するのは、基本的に茨城県の担当部署です。販売の方法や回数・時期の計画が固まった段階で、事前に所管の窓口へ確認するのが確実です。契約書の作成や税金の扱いが絡む場合は、弁護士・司法書士・税理士などの専門家にも相談してください。
不動産会社に仲介・買取を依頼するという選択肢
国土交通省の判断要素では、宅建業者に代理や媒介を依頼して販売するものは、取引の態様の面で事業性が低い方向とされています。自分で買主を探して広告し、契約書を作り、引渡しまで行う方法に比べて、免許を持つ不動産会社に任せる方法は、契約や手続きの面でも負担が小さくなります。
仲介と買取の違い、仲介会社の選び方については、不動産仲介業とは|仕組み・仲介手数料・免許と不動産業との違いで解説しています。個人どうしで売買する場合の流れと注意点は、不動産の個人売買とは?家・マンションの流れ・契約書・税金・住宅ローンの注意点をご覧ください。また、土地の買取を検討する場合は、業者を見極める視点として悪質な不動産買取業者の見分け方もあわせてご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 不動産を何回売ると宅建業になりますか?
回数だけで決まる基準は示されていません。国土交通省の解釈・運用の考え方では、対象者・目的・取得経緯・態様・反復継続性などを参考に、諸要因を勘案して総合的に判断するとされています。
Q. 相続した不動産を売る場合も免許が必要ですか?
相続で取得した物件の取引は、取得経緯の面では事業性が低い方向とされています。ただし、区画割りして多数に販売するなど、態様によっては別の見方をされる可能性があるため、迷う場合は所管の窓口にご確認ください。
Q. 過去に何度も売買したことがあります。今後1回だけ売る場合も影響しますか?
反復継続性は、現在の状況だけでなく、過去の行為や将来の予定・蓋然性も含めて判断されるとされています。過去の取引の状況によっては、今回の1回だけでも総合判断の材料になりえます。
Q. 不動産会社に仲介を頼めば心配ありませんか?
宅建業者に代理・媒介を依頼して販売する形は、取引の態様の面では事業性が低い方向とされています。ただし、判断は5つの要素の総合なので、これだけで結論が決まるわけではありません。
Q. 免許が必要かどうか、どこに確認すればよいですか?
宅建業を所管する都道府県の窓口(茨城県の場合は県の担当部署)にご確認ください。契約や税金が絡む場合は、弁護士・司法書士・税理士などの専門家への相談も有効です。
Q. ハウスドゥ茨城では売却の相談ができますか?
はい、不動産の売却・買取のご相談を承っています。「自分で売るのは不安」「手続きを任せたい」という方は、お電話またはお問い合わせフォームからご相談ください。
まとめ
宅建業にあたるかどうかは、売った回数だけでなく、対象者・目的・取得経緯・態様・反復継続性を総合して判断されます。売却の方法や回数・時期を決める前に、所管の窓口で確認し、不動産会社への仲介・買取の依頼も選択肢に入れて検討してください。
出典:国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(令和8年4月1日施行版)第2条第2号関係/宅地建物取引業法 第2条第2号・第3条第1項(e-Gov法令検索)。
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