茨城県には、国が指定した史跡だけで20か所、県指定・登録まで含めると「記念物」区分だけで166件、有形文化財を含む文化財全体では1,000件を超える指定・登録がある。虎塚古墳の極彩色壁画、鹿島神宮の境内、水戸徳川家の墓所——これらは単なる観光資源ではなく、その土地に長く人が住み続けてきた証拠でもある。この記事では茨城県教育委員会の公式データをもとに、県内の史跡・歴史資産の全体像と、それが不動産の価値や制約にどう関わるのかを整理する。

目次
  1. 茨城県の文化財、まず全体像をつかむ
    1. 史跡以外の記念物(名勝・天然記念物)
  2. 国指定史跡20か所の一覧(茨城県教育委員会公表)
    1. 県央エリアの国指定史跡
    2. 県南エリアの国指定史跡
    3. 県北・鹿行・県西エリアの国指定史跡
  3. 史跡の”時代の厚み”を数字で見る
    1. 貝塚が多いという茨城県特有の特徴
  4. 市町村別に見る文化財の分布
    1. 件数が少ない自治体も「文化財ゼロ」ではない
  5. 史跡・埋蔵文化財と不動産取引の関係
    1. 史跡指定地は現状変更に許可が必要
    2. 史跡指定地とは別に「埋蔵文化財包蔵地」がある
    3. 売却・購入時に確認すべきポイント
  6. 史跡を訪ねて茨城県の歴史を体感する
    1. 県央エリア(水戸市周辺)
    2. 県南エリア(石岡・土浦・つくば)
    3. 県北エリア(ひたちなか・常陸太田)
    4. 鹿行エリア(鹿嶋・潮来)
  7. 茨城県の歴史・史跡についてよくある質問
    1. Q. 自分の土地が史跡指定地かどうか、どこで調べられますか?
    2. Q. 埋蔵文化財包蔵地に該当すると家は建てられませんか?
    3. Q. 茨城県で最も文化財が多い市町村はどこですか?
    4. Q. 国指定史跡は茨城県に何か所ありますか?
    5. Q. 貝塚が茨城県に多いのはなぜですか?
    6. Q. 史跡指定地の土地は売却できますか?
    7. Q. 相続した土地に古い遺構がある場合、どう対応すればよいですか?
  8. 地域の歴史を知ることは、住まいを知ること
  9. 関連記事・エリア別のご相談窓口
  10. お問い合わせ

茨城県の文化財、まず全体像をつかむ

茨城県教育委員会「いばらきの文化財一覧」(2026年8月時点)によると、県内の指定・登録文化財は合計1,068件(延べ)にのぼる。内訳は有形文化財825件(建造物313・絵画91・彫刻183・工芸品145・書跡34・古文書10・考古資料35・歴史資料15)、無形文化財5件、有形民俗文化財9件、無形民俗文化財36件、記念物166件(史跡90・名勝10・天然記念物66)、記録作成等の措置を講ずべき無形・民俗文化財23件、重要伝統的建造物群保存地区1件、保存技術2件という構成になっている。

このうち不動産と関わりが深いのが「記念物」の中の「史跡」区分だ。史跡は古墳・城跡・貝塚・官衙(役所)跡・寺院跡など、土地そのものに価値が認められた文化財で、90件のうち国指定は20件、残りは県指定となる。

史跡以外の記念物(名勝・天然記念物)

名勝10件には偕楽園(水戸市)などの庭園・景勝地が含まれる。天然記念物66件は巨木・湧水・地質現象など自然由来のものが中心で、史跡とは性格が異なるため本記事では史跡を主な対象とする。

国指定史跡20か所の一覧(茨城県教育委員会公表)

茨城県内の国指定史跡は、令和4年8月26日時点の茨城県教育委員会公表データで以下の20件が確認できる。指定年月日は文化財ごとに異なるが、県教育委員会のページ更新日を一次情報として掲載順に整理した。

県央エリアの国指定史跡

  • 旧弘道館(水戸市)——水戸藩の藩校、日本最大規模の藩校建築
  • 常磐公園(偕楽園、水戸市)——名勝としても指定される兼務指定
  • 水戸徳川家墓所(常陸太田市)——歴代水戸藩主の墓所
  • 台渡里官衙遺跡群(水戸市)——古代の役所遺構
  • 大串貝塚(水戸市)——柳田國男も紹介した巨大貝塚

県南エリアの国指定史跡

  • 常陸国分寺跡・常陸国分尼寺跡(石岡市)——奈良時代の国分寺制度の遺構
  • 舟塚山古墳(石岡市)——県内2位の規模を誇る前方後円墳
  • 新治廃寺跡附上野原瓦窯跡(土浦市)
  • 新治郡衙跡(土浦市)
  • 上高津貝塚(土浦市)——縄文時代の大規模貝塚
  • 平沢官衙遺跡(つくば市)——奈良〜平安時代の郡役所跡
  • 小田城跡(つくば市)

県北・鹿行・県西エリアの国指定史跡

  • 虎塚古墳(ひたちなか市)——極彩色の壁画で知られる装飾古墳
  • 吉田古墳・愛宕山古墳(ひたちなか市周辺)
  • 馬渡埴輪製作遺跡(ひたちなか市)
  • 広畑貝塚(取手市)
  • 鹿島神宮境内附郡家跡(鹿嶋市)——常陸国一之宮の境内
  • 佐久良東雄旧宅(かすみがうら市)
  • 大宝城跡・関城跡(下妻市・筑西市)——南北朝時代の攻防戦の舞台

※上記は茨城県教育委員会公式サイトの掲載順に基づく代表例。全90件(国20・県70)の詳細な所在地・指定日は同委員会の公式ページで随時更新されている。

茨城県 記念物166件の内訳 史跡90件 housedo.group
茨城県「記念物」166件の内訳(史跡90・天然記念物66・名勝10)出典:茨城県教育委員会「いばらきの文化財一覧」

史跡の”時代の厚み”を数字で見る

茨城県の史跡ラインナップを時代で並べると、旧石器・縄文時代の貝塚(大串貝塚・上高津貝塚・広畑貝塚・陸平貝塚)、古墳時代の古墳群(舟塚山古墳・虎塚古墳・磯浜古墳群など)、奈良・平安時代の官衙遺跡(常陸国府跡・新治郡衙跡・台渡里官衙遺跡群・平沢官衙遺跡)、中世の城跡(大宝城跡・関城跡・小田城跡・真壁城跡・逆井城跡・石神城跡)、江戸時代の藩政遺構(旧弘道館・水戸徳川家墓所・西山御殿跡)、近代の産業遺構(那珂湊反射炉跡)まで、旧石器時代から明治期まで途切れなく続いている。

この「切れ目のなさ」は、茨城県が太平洋沿岸・霞ヶ浦沿岸という水運の要衝であり続け、常陸国の中心として一貫して人が住み続けてきたことの裏返しでもある。

貝塚が多いという茨城県特有の特徴

特に貝塚(縄文時代の集落跡)の指定件数が全国的に見ても多いことは茨城県の特徴のひとつだ。大串貝塚・陸平貝塚・上高津貝塚・広畑貝塚が国指定史跡となっており、これは霞ヶ浦・北浦周辺がかつて「香取海」と呼ばれる内海に面し、豊富な海産資源に恵まれた縄文人の生活拠点だったことを示している。

市町村別に見る文化財の分布

茨城県教育委員会の「市町村別文化財」ページ(2026年8月時点)によると、指定・登録文化財の件数は市町村ごとに大きな差がある。件数の多い上位10市町村は次のとおり。

順位 市町村 件数 エリア
1 桜川市 138件 県西
2 水戸市 97件 県央
3 土浦市 68件 県南
4 常陸太田市 63件 県北
5 石岡市 61件 県南
6 つくば市 47件 県南
7 結城市 38件 県西
8 笠間市 35件 県央
9 筑西市 33件 県西
10 潮来市 31件 鹿行
茨城県 市町村別文化財件数トップ10 housedo.group
市町村別 指定文化財件数トップ10 出典:茨城県教育委員会「いばらきの文化財」市町村別一覧

意外に思われるかもしれないが、県内で最も文化財件数が多いのは水戸市ではなく桜川市だ。桜川市は旧真壁町エリアに真壁城跡をはじめとする城跡・古い寺社建築・伝統的な町家が集積しており、平成22年には「桜川市真壁」地区が国の重要伝統的建造物群保存地区(茨城県内唯一)に選定されている。

件数が少ない自治体も「文化財ゼロ」ではない

一方で守谷市(1件)・河内町(1件)・阿見町(3件)・五霞町(2件)のように件数が少ない自治体もある。これは古くからの集落形成が比較的新しい、あるいは近代以降に急速に宅地化が進んだ地域である傾向があり、裏を返せば「開発規制のかかる史跡が少なく、宅地としての制約が少ない」というポジティブな見方もできる。

史跡・埋蔵文化財と不動産取引の関係

ここからは不動産会社の視点で、史跡・文化財が土地の売買・活用にどう関わるかを整理する。

史跡指定地は現状変更に許可が必要

文化財保護法により、国・県指定の史跡の指定地内で土地の形質を変更する場合(造成・建築・伐採など)は、教育委員会への許可申請が必要になる。指定地そのものを所有・売買することは可能だが、「自由に建て替えられる宅地」ではないため、購入検討時にはこの制約を正しく伝える必要がある。

史跡指定地とは別に「埋蔵文化財包蔵地」がある

史跡に指定されていなくても、茨城県内には「周知の埋蔵文化財包蔵地」が広く分布している。これは県教育委員会が公開する「いばらきデジタルマップ」で確認でき、該当地での住宅建設などの土木工事は事前の届出が必要になる。史跡指定と埋蔵文化財包蔵地は別の制度であり、両方に該当する土地・片方だけの土地・どちらにも該当しない土地がある点に注意したい。

売却・購入時に確認すべきポイント

県内で不動産の売却・購入を検討する際は、対象地が史跡指定地または埋蔵文化財包蔵地に該当するかを、市町村教育委員会への照会で確認できる。該当する場合でも売買自体は可能なケースが多いが、造成・建築の計画がある場合は着工前の手続き期間を考慮したスケジュールが必要になる。

史跡を訪ねて茨城県の歴史を体感する

最後に、実際に訪れやすい代表的な史跡を地域別に紹介する。旅行・移住検討の参考にもなるはずだ。

県央エリア(水戸市周辺)

旧弘道館は水戸駅から徒歩圏内にあり、幕末の藩校建築を間近で見られる。偕楽園(常磐公園)は日本三名園のひとつとして名勝にも指定されている。

県南エリア(石岡・土浦・つくば)

石岡市の常陸国分寺跡・常陸国分尼寺跡は、奈良時代に全国に置かれた国分寺制度の遺構が良好な状態で残る貴重な例。舟塚山古墳は県内2番目の規模を誇る前方後円墳で、墳丘に登ることもできる。

県北エリア(ひたちなか・常陸太田)

ひたちなか市の虎塚古墳は、内部の極彩色壁画で全国的に知られる装飾古墳(公開日は限定)。常陸太田市の水戸徳川家墓所(瑞龍山)は歴代藩主が眠る場所として今も大切に守られている。

鹿行エリア(鹿嶋・潮来)

鹿嶋市の鹿島神宮は常陸国一之宮として広大な境内が国指定史跡となっており、深い森に包まれた参道は年間を通じて多くの参拝者を集める。

茨城県の歴史・史跡についてよくある質問

Q. 自分の土地が史跡指定地かどうか、どこで調べられますか?

A. 所在地の市町村教育委員会、または茨城県教育庁文化課(有形・無形文化財担当)へ照会することで確認できます。国指定史跡の一覧は茨城県教育委員会公式サイト「いばらきの文化財一覧」でも公開されています。

Q. 埋蔵文化財包蔵地に該当すると家は建てられませんか?

A. 建築自体は可能なケースがほとんどですが、着工前に市町村教育委員会への届出と、場合によっては試掘調査が必要になります。スケジュールに余裕を持った計画が必要です。

Q. 茨城県で最も文化財が多い市町村はどこですか?

A. 茨城県教育委員会の公表データ(2026年8月時点)では桜川市が138件で最多です。旧真壁町エリアの城跡・伝統的建造物群が中心です。

Q. 国指定史跡は茨城県に何か所ありますか?

A. 茨城県教育委員会の公表データで20か所です。県指定史跡70か所とあわせて史跡区分は合計90件になります。

Q. 貝塚が茨城県に多いのはなぜですか?

A. 縄文時代、霞ヶ浦・北浦一帯が「香取海」と呼ばれる内海だったため、海産資源が豊富で集落が形成されやすかったことが背景にあると考えられています。大串貝塚・陸平貝塚・上高津貝塚・広畑貝塚が国指定史跡です。

Q. 史跡指定地の土地は売却できますか?

A. 所有権の売買自体は可能です。ただし現状変更(造成・建築など)には教育委員会の許可が必要なため、購入希望者への説明と条件整理が重要になります。

Q. 相続した土地に古い遺構がある場合、どう対応すればよいですか?

A. まず市町村教育委員会に土地の状況(史跡指定・埋蔵文化財包蔵地の該当有無)を照会することをおすすめします。相続登記の手続きとあわせて確認しておくと、将来の売却・活用の計画が立てやすくなります。

地域の歴史を知ることは、住まいを知ること

史跡や文化財は、その土地に人が住み続けてきた年月の証しであり、同時に不動産取引における確認事項のひとつでもある。茨城県内で不動産の売却・購入・相続を検討する際は、対象地の歴史的背景や規制の有無を含めて、地域に精通した専門家に相談することが安心につながる。

ハウスドゥでは、つくば市・水戸市・取手市戸頭・守谷市の4店舗が茨城県内の不動産売却・買取をサポートしている。相続した実家や土地の取り扱いに迷う場合は、無料査定・相談を通じて状況を整理することができる。

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