「古いアパートは売れない」と聞いて、相続や賃貸経営の見直しをきっかけに売却をためらっている方は少なくありません。たしかに築年数が経ったアパートは、新築や築浅の物件と同じようには売れません。しかし「売れない」のではなく「売り方を選ばないと損をする」というのが実情です。
この記事では、古いアパートが売りにくいと言われる理由を整理したうえで、仲介・買取・解体して土地で売るという3つの道の選び方、税金の計算、そして茨城県内での賃貸需要の地域差までを、不動産会社の実務目線でまとめました。ハウスドゥは茨城県内に4店舗(つくば研究学園都市・県庁水戸・取手戸頭・守谷)を構え、地域の賃貸相場と買取の両方を扱っています。
古いアパートは「売れない」は本当か
結論から言うと、古いアパートでも売却は可能です。築40年、築50年を超える木造アパートであっても、買い手や買取業者が存在します。ただし「新築時の価格で」「仲介で時間をかければ誰でも」売れるわけではなく、築年数が進むほど売り方の選択が結果を大きく左右するという点が、築浅物件との決定的な違いです。
「売れない」という思い込みだけで放置してしまうと、空室が増えて収益が下がり、修繕費がかさみ、固定資産税だけが毎年出ていく状態が続きます。まず売れない理由を正しく理解することが、損をしない売却の第一歩です。
なぜ「古いアパートは売りにくい」と言われるのか
古いアパートの売却が難しくなる理由は、主に4つに整理できます。いずれも「売れない」のではなく「買い手が慎重になる」理由です。
法定耐用年数を超えると融資が組みにくくなる
金融機関がアパートローンの融資期間を決める際、目安にするのが建物の法定耐用年数です。国税庁が定める法定耐用年数は、木造アパートで22年、軽量鉄骨造(厚さ3mm超4mm以下)で27年、鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造で47年です。中古建物の場合は「法定耐用年数-経過年数+経過年数×20%」という簡便法で残存耐用年数を算出しますが、木造で築22年を超えると、この計算式上は残存耐用年数がゼロに近づき、融資期間が大幅に短縮されるか、金融機関によっては新規融資そのものに慎重になります。買い手がローンを組みにくいということは、現金一括で買える投資家か買取業者に対象が絞られるということです。
昭和56年5月31日以前の建築確認は旧耐震基準
建築基準法の耐震基準は昭和56年(1981年)6月1日に大きく改正されました。判定の基準は建物の完成日ではなく建築確認申請が受理された日で、昭和56年5月31日以前に確認済証が交付された建物は「旧耐震基準」、6月1日以降は「新耐震基準」に区分されます。旧耐震基準の建物は、震度6強〜7程度の大地震で倒壊しない基準を満たしていない可能性があり、買い手が住宅ローン控除や各種の税制優遇を受けられないケースがあるため、この一点だけで敬遠されることがあります。
入居率が下がり収益力そのものが落ちる
設備の古さや間取りの陳腐化により、新しい賃貸物件との競争で入居者が決まりにくくなります。収益物件は「今いくらの家賃収入があるか」で価格が決まる側面が強いため、空室が増えるほど収益還元法による評価額が下がり、売却価格そのものが目減りします。
修繕費がかさみ買い手の実質負担が増える
外壁・屋根・給排水管など、建物の主要な設備は経年で更新時期を迎えます。買い手からすれば、購入価格に加えて近い将来の大規模修繕費用を見込む必要があるため、その分を差し引いた金額でしか買えません。
結論、古いアパートは3つの道で売却できる
売りにくい理由が分かれば、対処法も見えてきます。古いアパートの売却には、大きく分けて3つの道があります。
1. 仲介で買い手を探す
不動産会社に仲介を依頼し、収益物件を探している投資家や、土地目的の実需層に買い手を探してもらう方法です。時間はかかりますが、買取よりも高値での成約が期待できます。特に入居率が高く、利回りが確保できている物件は、投資家から一定の需要があります。
2. 買取業者に直接売却する
不動産会社が直接買主となるため、仲介手数料がかからず、早ければ数週間から1〜2か月程度で現金化できます。老朽化が進み仲介では買い手が付きにくい物件、相続で急いで整理したい物件、入居者がいたまま売りたい(オーナーチェンジ)物件に向いています。売却価格は仲介より下がる傾向がありますが、「売れるかどうか分からない」という不確実性を避けられる点が最大の利点です。
3. 解体して土地として売る
建物の老朽化が著しく、入居付けの見込みが薄い場合は、解体して更地にしてから土地として売る方法もあります。ただし解体費用は数百万円単位になることがあり、更地にした年の翌1月1日を境に固定資産税の住宅用地特例(最大6分の1の軽減)が外れて税額が上がる点に注意が必要です。解体の判断は、更地価格と解体費用・税負担の増加分を天秤にかけたうえで、契約の見通しが立ってから行うのが原則です。
3つの道をどう選ぶか、判断基準
迷ったときは、次の3つの状態を基準に考えると判断しやすくなります。
- 入居率が7割以上で修繕履歴もある→ 仲介で投資家に売る余地がある
- 空室が多く、相続などで早期の現金化が必要→ 買取業者へ直接売却
- 建物の傷みが激しく、土地としての価値のほうが高い→ 解体して更地で売る(ただし解体前に売却先の見込みを確認)

売却前に確認すべき4つの数字
売却方法を決める前に、次の4つの数字を確認しておくと、不動産会社との相談がスムーズになり、査定額の妥当性も判断しやすくなります。
築年数と法定耐用年数の残り
木造22年・軽量鉄骨27年・鉄骨鉄筋コンクリート/鉄筋コンクリート47年という法定耐用年数を基準に、残存耐用年数がどれくらいかを把握します。残存耐用年数が短い、またはゼロの場合、買い手の融資条件が厳しくなることを前提に売却戦略を立てる必要があります。
入居率(稼働率)
全戸数に対して現在入居している戸数の割合です。入居率が高いほど、投資家にとって「今すぐ収益が出る物件」として評価されやすくなります。
実質利回り
年間家賃収入から管理費・修繕費・固定資産税などの経費を差し引いた実質的な利回りです。表面利回り(経費を差し引かない単純計算)だけでなく、実質利回りで買い手は判断するため、経費の内訳を整理しておくと査定がスムーズです。
直近の大規模修繕履歴
外壁塗装・屋根防水・給排水管の更新をいつ行ったかは、買い手が今後の修繕費を見積もる際の重要な材料です。記録が残っていれば必ず提示しましょう。
高く売るための3つのポイント
古いアパートでも、次の3点を意識するだけで査定額や成約のしやすさが変わります。
- 最低限の原状回復と清掃をしておく:空室部分の簡易清掃だけでも印象は大きく変わります。大規模なリフォームは費用対効果が見合わないことが多く、まず不動産会社に相談してから判断するのが安全です。
- 売却のタイミングを見極める:入居率が一時的に上がっているとき、金利情勢が投資家に有利なときなど、市況を見て動くと有利です。
- 複数の不動産会社に査定を依頼する:ただし後述するとおり、運営会社が同じ査定サイトを何社比べても意味がありません。運営会社が異なる会社に依頼することが重要です。
古いアパート売却でかかる税金
アパートのような収益物件の売却では、居住用の自宅を売るときにはない税金の論点が加わります。捏造や断定を避けるため、正確な制度に基づいて解説します。
減価償却が終わっていると税金が高くなる仕組み
アパート経営中は建物を減価償却費として毎年経費計上できますが、法定耐用年数を超えて減価償却が終わっている(簿価がほぼゼロになっている)場合、売却額のほとんどが譲渡所得として課税対象になります。「古い建物だから税金は安いはず」と考えがちですが、減価償却が進んでいるほど取得費(簿価)が下がるため、実際には譲渡所得が大きくなり税額が増えるケースが多い点に注意が必要です。
譲渡所得税、長期と短期で税率が大きく違う
譲渡所得税の税率は、売却した年の1月1日時点での所有期間によって決まります。所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得(税率20.315%=所得税15.315%+住民税5%)、5年以下であれば短期譲渡所得(税率39.63%=所得税30.63%+住民税9%)です。相続したアパートの場合、被相続人(亡くなった方)が取得した日を引き継いで所有期間を計算できるため、相続してすぐの売却でも長期譲渡所得になっているケースが多くあります。投資用不動産全般の税金の計算方法は投資用不動産売却の税金は20%も違う?2026年版計算術で詳しく解説しています。

消費税は建物部分にだけかかる
個人がアパートを売却する場合でも、賃貸事業を行っている「事業者」としての売却とみなされ、建物部分の譲渡には消費税が課税されます(土地の譲渡は非課税)。売買代金の内訳で土地と建物の価格が分かれていない場合は、時価の比率や固定資産税評価額の比率で按分します。ただし、前々年の課税売上高(家賃収入など)が1,000万円以下の個人は原則として消費税の免税事業者にあたるため、多くの個人オーナーは実務上、消費税を意識せずに済むケースが大半です。判断に迷う場合は税理士に確認することをおすすめします。
相続したアパートなら取得費加算の特例
相続で取得したアパートを、相続開始日の翌日から相続税の申告期限(10か月)の翌日以後3年を経過する日まで、つまり相続開始から3年10か月以内に売却すると、納付した相続税額のうち一定額を取得費に加算できる「取得費加算の特例」が使えます。取得費が増える分だけ譲渡所得が圧縮され、譲渡所得税が軽くなります。相続税を納めた方が対象で、事業所得や不動産所得としての売却には使えず、譲渡所得としての売却が条件です。期限管理が要件のため、相続が発生したら早めに売却の検討を始めることが結果的に節税につながります。
茨城県内の賃貸事情、更地にすべきかの判断が変わる
「古いアパートを売る・解体する」の判断は、全国一律ではなく地域の賃貸需要によって変わります。総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、茨城県の空き家率は14.11%です。茨城県全体の不動産売却相場や市町村ごとの坪単価の違いは茨城の不動産売却|県内で坪単価3倍差の相場と高く売る方法で解説しています。このうち共同住宅(アパート・マンション)の空き家は、賃貸用の空き家が85.1%を占めており、茨城県内の空き家問題の中心が「賃貸に出しているが入居者が決まらない共同住宅」であることが読み取れます。
つくば市・水戸市は大学近接で賃貸需要が残りやすい
つくば市は筑波大学、水戸市は茨城大学の学生需要があり、大学から徒歩・自転車圏内のエリアでは築古のアパートでも一定の入居需要が見込めます。設備が古くても家賃を抑えれば決まりやすい傾向があり、仲介での売却(投資家への売却)を検討する余地があります。
郊外・県北エリアは入居付けが厳しく出口を急ぐべきケースも
大学や大規模事業所から離れたエリア、車移動が前提のエリアでは、新しい賃貸物件との競争にさらされやすく、空室の長期化が起きやすい傾向があります。こうしたエリアでは、仲介で買い手を探すより、早期に買取業者へ売却するか、更地にして土地として売る方が結果的に手残りが多くなるケースもあります。エリアごとの賃貸相場・空室の傾向は、茨城県内に4店舗を構える当社であれば、地域ごとの実感値を踏まえてお伝えできます。
売却の流れと必要書類
仲介・買取いずれの場合も、大まかな流れは共通しています。
- 不動産会社に査定を依頼する(現況の入居率・家賃明細・修繕履歴を提示)
- 査定額と売却方法(仲介・買取)を比較して決める
- 媒介契約(仲介の場合)または売買契約(買取の場合)を締結する
- 入居者がいる場合はオーナーチェンジとして賃貸借契約を引き継ぐ、または退去交渉を行う
- 決済・引き渡し
- 売却の翌年、利益が出ていれば確定申告(譲渡所得の申告)
必要書類としては、登記事項証明書、固定資産税納税通知書、賃貸借契約書一式、家賃明細(レントロール)、建物の図面、修繕履歴の分かる資料などが一般的に求められます。相続物件の場合はこれに加えて、相続関係を証明する戸籍謄本一式や遺産分割協議書が必要です。
買取業者選びで注意すべきこと
古いアパートは買取業者に相談するケースが多くなりますが、選び方には注意点があります。複数の査定サイトやサービス名で相見積もりを取ったつもりが、実際には運営会社が同じだったというケースが起こり得ます。サービス名やサイトデザインが違っても、会社概要のページで運営会社の商号・免許番号・所在地を確認すれば、同一の会社かどうかを判別できます。宅地建物取引業の免許番号は会社ごとに1つで、サービス名の数だけ増えるものではありません。免許番号が同じであれば、それは同じ会社です。茨城県内の不動産買取業者の選び方は茨城県の不動産買取業者の選び方|比較で失敗しない5つの確認でさらに詳しく解説しています。
加えて、査定額の根拠を明確に説明できるかどうかも判断材料になります。宅地建物取引業法第34条の2第2項では、媒介契約を締結した宅建業者に対して、価額について意見を述べるときはその根拠を明らかにするよう努める義務が定められています。「なぜその金額になるのか」を、周辺の取引事例や収益還元法の考え方に基づいて説明できる会社を選ぶことをおすすめします。
なお、買取(不動産会社が直接買主となる取引)にはクーリング・オフの制度はありません。宅地建物取引業法37条の2のクーリング・オフ制度は「宅建業者が売主で、買主が個人の場合」に買主を保護するための規定であり、所有者が不動産会社に売却する買取の場面では適用されない点も押さえておきましょう。
よくある質問
Q. 築50年のアパートでも売却できますか?
A. 可能です。仲介では買い手が限られますが、買取業者であれば築年数に関わらず査定の対象になります。入居者がいる状態(オーナーチェンジ)でも査定は可能です。
Q. 入居者がいたままでも売却できますか?
A. 可能です。賃貸借契約は売主から買主に引き継がれ、入居者の同意は法律上必須ではありません(オーナーチェンジ)。ただし入居者への告知や敷金の引き継ぎなど実務上の手続きは必要です。
Q. 古いアパートは解体してから売った方が高く売れますか?
A. 一概には言えません。解体費用に加えて、更地にした年の翌1月1日を境に固定資産税の住宅用地特例が外れて税額が上がる点を踏まえる必要があります。解体前に、更地としての売却見込みと解体費用・税負担増を比較したうえで判断することをおすすめします。
Q. 減価償却が終わったアパートを売ると税金はどれくらいかかりますか?
A. 所有期間が5年を超える長期譲渡所得であれば税率20.315%、5年以下の短期譲渡所得であれば39.63%が、売却益(譲渡所得)に対してかかります。減価償却が進んでいるほど取得費が小さくなり譲渡所得が大きくなる傾向があるため、事前に概算で確認しておくことをおすすめします。正確な税額計算は税理士にご相談ください。
Q. 相続したアパートを売る場合、いつまでに売れば税金が有利ですか?
A. 相続開始から3年10か月以内に売却すると「取得費加算の特例」が使え、納付した相続税の一部を取得費に加算できます。期限が過ぎると使えなくなるため、相続が発生したら早めに売却の検討を始めることをおすすめします。
Q. 茨城県内で古いアパートの売却を相談できますか?
A. ハウスドゥは茨城県内につくば研究学園都市店・県庁水戸店・取手戸頭店・守谷店の4店舗を構えています。運営会社は株式会社トーマン(茨城県知事(1)第7579号)と株式会社JOB HOPE(茨城県知事(2)第7366号)です。エリアの賃貸需要を踏まえた査定と、仲介・買取両方のご提案が可能です。
まとめ
古いアパートは「売れない」のではなく、法定耐用年数・旧耐震基準・入居率・修繕費という4つの理由から、売り方を選ぶ必要がある物件です。入居率が高ければ仲介、早期の現金化が必要なら買取、建物の傷みが激しければ解体して土地として売るというように、状態に合わせた出口を選ぶことで、放置による損失を防げます。税金の面では、減価償却が進んでいるほど譲渡所得が大きくなりやすいこと、相続物件は3年10か月以内の売却で取得費加算の特例が使えることを押さえておきましょう。まずは現況の家賃明細と修繕履歴を手元に用意し、複数の運営会社に査定を依頼するところから始めることをおすすめします。




