結論:敷引(しきびき)とは、賃貸借契約の終了時に、預けた敷金(保証金)から契約で決めた一定額を差し引き、借主に返還しない特約のことです。礼金のように入居時に別途払うお金ではなく、預けた敷金のうち「返ってこない部分」を契約書で先に決めておく仕組みで、関西地方や九州地方などで古くから見られます。敷引の額が賃料の3.5倍程度にとどまる事案では、最高裁平成23年3月24日判決が直ちに無効とはいえないと判断していますが、高額すぎる場合は無効となる可能性もあります。この記事では、敷引の意味、敷金・礼金との違い、計算例、返還されるケースと争われるケース、契約前のチェックポイント、さらに賃貸中物件を売却する際の敷金の扱いまで、茨城県の不動産売却を担当するハウスドゥがやさしく解説します。
敷引とは?意味をわかりやすく解説
敷引の基本的な意味
敷引とは、賃貸借契約で入居時に預けた敷金(地域によっては「保証金」と呼ばれます)から、退去時に一定額を差し引く取り決めのことです。「敷引き」と送り仮名を付けて書かれることもあります。差し引く額は「敷引30万円」のように金額で書かれる場合と、「敷引賃料の2か月分」のように賃料を基準にして書かれる場合があります。
敷引特約と「保証金償却」の関係
契約書では「敷引」のほか、「保証金償却」「敷金償却」「解約引き」といった表現が使われることがあります。呼び方は違っても、預けた金銭から一定額が返還されない点は共通です。契約書の特約欄で、いつ・いくら差し引かれるのかを確認することが大切です。
敷引が見られる主な地域
敷引は関西地方や九州地方などで古くから慣行として見られます。一方、関東では敷金を預けて退去時に清算する形が一般的で、敷引特約を目にする機会は多くありません。茨城県でも一般的な賃貸契約は敷金・礼金の形が中心ですが、県外の物件に住んだ経験がある方や、相続した賃貸物件の契約書では敷引の記載に出会うことがあります。
敷引と敷金・礼金の違い
敷金とは
敷金とは、家賃の滞納や部屋の損傷などに備えて、入居時に貸主へ預けるお金です。民法622条の2(2020年4月施行)では、賃貸借が終わって部屋を返したときに、未払い家賃などを差し引いた残りを借主へ返す旨が明確に定められています。
礼金とは
礼金とは、入居時に貸主へ「お礼」として支払うお金です。敷金と違って預け金ではないため、原則として退去時に返還されません。
敷引は「敷金のうち返らない部分」
敷引は、敷金(保証金)という預け金のうち、あらかじめ返還しないと決めた部分です。礼金は入居時に別途支払う費用、敷引は退去時に預け金から引かれる費用、というタイミングと名目の違いがあります。下の図のとおり、3つを並べて整理すると違いが分かります。

敷引特約はなぜあるのか
通常損耗の補修費を先に精算するため
貸主が敷引を設ける趣旨としてよく挙げられるのは、通常の使用によって生じる壁紙の日焼けや床の摩耗などの補修費に充てる、という考え方です。退去ごとに細かな修繕費を請求して揉めることを避け、あらかじめ定額で処理しておく狙いがあります。
空室期間の損失などを補う意味合い
契約によっては、賃料に含まれない負担や、入居者が入れ替わる際の空室期間の損失などに充てる性質を持たせる場合もあります。ただし、どのような趣旨かは契約ごとに異なるため、契約書や重要事項説明書で確認する必要があります。
敷引の金額の計算例と返還される敷金
敷引の計算の流れ
敷引がある場合の返還額は、預けた敷金から敷引額を引き、さらに未払い家賃や借主の故意・過失による修繕費があればそれも引いて計算します。下記は説明用の仮の数字による例です。
- 預けた敷金:30万円(仮)
- 敷引特約:20万円(仮)
- 未払い家賃・借主負担の修繕費:0円(仮)
- 退去時に返還される額:30万円-20万円=10万円(仮)

敷引の金額が賃料の何か月分かを確認する
契約書の敷引額を月額賃料で割ると、賃料の何か月分にあたるかが分かります。たとえば賃料6万円で敷引18万円なら3か月分です。この倍率が大きいほど、後述する消費者契約法との関係で問題になりやすくなります。
敷引は有効?無効?消費者契約法と判例の考え方
消費者契約法10条との関係
消費者契約法10条は、消費者の利益を一方的に害する条項を無効とする規定です。敷引特約は借主に不利な内容になりうるため、この規定に反しないかが争われてきました。
最高裁平成23年3月24日判決のポイント
最高裁平成23年3月24日判決は、敷引特約が通常損耗の補修費などに充てる趣旨のもので、敷引額が賃料の3.5倍程度にとどまる事案では、直ちに消費者契約法10条により無効とはいえないと判断しました。一方で、敷引額が賃料などに照らして高額に過ぎる場合には、無効となる余地があるとも示しています。
敷引が無効とされやすい考え方
- 敷引額が賃料に比べて著しく高い
- 契約締結時に敷引の内容や金額が十分に説明されていない
- 短期間で退去しても同額が引かれ、実態とかけ離れている
最終的には個別の契約内容と事情で判断されるため、納得できない場合は、消費生活センターや弁護士など専門家へ相談するのが安全です。
敷引と原状回復費用の関係
通常損耗は借主負担にならないのが原則
民法621条は、賃借人の原状回復義務について、通常の使用による損耗や経年変化は含まれないと定めています(2020年4月の民法改正で明文化)。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも、通常損耗や経年劣化の修繕費は貸主負担が基本とされています。
敷引があるときの原状回復費用の考え方
敷引が通常損耗の補修費に充てる趣旨で定められている場合、通常の使用による汚れや傷について、別途借主へ費用を請求しないのが一般的な考え方です。一方で、タバコのヤニ汚れ、ペットによる傷、故意・過失による破損などは、通常損耗を超える修繕として別に請求される可能性があります。
敷引のある賃貸を借りるときのチェックポイント
- 契約書の特約欄に「敷引」「保証金償却」などの記載がないか
- 敷引額が金額か、賃料の何か月分かを確認する
- 退去時期(短期解約)によって敷引額が変わるかどうか
- 敷引とは別に、退去時のクリーニング費用などを請求される特約がないか
- 重要事項説明書で敷引の説明が行われているか
契約前なら、敷引の有無や金額は物件ごとに交渉や比較の余地がある場合もあります。初期費用の総額だけでなく、退去時に返ってくる金額まで含めて検討しましょう。
退去時に敷引で揉めたときの対処法
精算書の内訳を確認する
退去後に届く精算書で、預けた敷金、敷引額、修繕費の内訳を確認します。敷引以外の項目で通常損耗に当たる費用が含まれていないかを見ます。
契約書と国交省ガイドラインで照らし合わせる
契約書の特約と、国土交通省の原状回復ガイドラインの考え方を照らし合わせます。不明な点は、貸主や管理会社へ根拠の説明を求めましょう。
専門家や公的な窓口へ相談する
話し合いで解決しない場合は、消費生活センターや弁護士会の相談窓口、少額訴訟などの手続きもあります。個別の金額の妥当性は事案ごとの判断になるため、早めの相談が安心です。
賃貸中物件を売却するときの敷金・敷引の扱い
敷金返還義務は新しい所有者に引き継がれる
入居者が住んだままの賃貸中物件(オーナーチェンジ物件)を売却すると、敷金の返還義務は買主である新しい所有者に引き継がれます(民法605条の2第4項)。売主は、預かっている敷金の額を買主へ正確に引き継ぐ必要があります。
売買代金の精算と敷引特約の確認
売買では、預かっている敷金相当額を売買代金から差し引くなどして精算するのが一般的です。敷引特約がある場合は、退去時に返還される金額が変わるため、賃貸借契約書や敷金の明細を買主へ正しく開示することが欠かせません。
売却前に準備しておきたい書類
- 賃貸借契約書(敷引などの特約を含む)
- 敷金・保証金の預かり明細
- 家賃の入金状況が分かる書類
- 更新契約書・覚書などの付属書類
契約内容の整理が遅れると、買主との交渉や契約不適合責任の判断に影響することがあります。売却を決めた段階で、早めに書類をそろえておくと安心です。
賃貸の売却と他の売却手続きとの関連
賃貸借契約の解除や滞納がある場合の整理は、賃貸借契約の解除とは|家賃滞納・無断転貸で使える解除事由と手続きの流れで解説しています。県内の賃貸需要の目安は茨城県の賃貸市場|家賃相場の県内比較、売買契約の手付の扱いは解約手付とはの記事も参考にしてください。築年数の目安は築年数の目安は何年?で整理しています。
賃貸中の住宅を売却するときの査定・相場・会社選びのポイント
賃貸中物件の相場と査定で見られる情報
入居者がいる住宅の査定では、周辺の売買相場に加えて、現在の賃料、入居者の入居期間、契約期間、預かっている敷金や保証金の額などの情報が確認されます。賃貸借契約書や敷引特約の内容が整理されていると、不動産会社も物件の収益性を正確に見積もりやすくなります。
不動産会社を選ぶときの確認事項
賃貸中の住宅の売却は、通常の自宅売却とは必要な情報が違います。会社を比べる際は、賃貸中物件の取扱実績や、買主を探す方法、売却後の入居者対応についてのサポート体制などを確認しておくと安心です。
売却に関する制度や情報の一覧を確認する
売却では、契約不適合責任や税金の制度など、確認すべき情報が多くあります。物件情報、賃貸条件、費用の見積もりを一覧にまとめておくと、複数の会社の提案を比較しやすくなります。ハウスドゥ茨城では、無料査定のご相談を承っています。
よくある質問(FAQ)
Q. 敷引とは何ですか?
A. 賃貸借契約の終了時に、預けた敷金(保証金)から、あらかじめ契約で定めた金額や賃料の○か月分を差し引き、借主に返還しない旨を定めた特約のことです。「敷引き」「敷引特約」とも呼ばれ、関西地方や九州地方などで古くから見られます。
Q. 敷引と礼金はどう違いますか?
A. 礼金は入居時に貸主へ支払い、原則として返還されないお金です。敷引は入居時に預けた敷金(保証金)の中から、退去時に契約で定めた額が差し引かれる仕組みで、入居時に支払うお金の名目が違います。
Q. 敷引は法律上、有効ですか?
A. 敷引特約は契約自由の範囲で認められ、最高裁平成23年3月24日判決は、通常損耗の補修費などに充てる趣旨で、敷引額が賃料の3.5倍程度にとどまる事案では直ちに消費者契約法10条により無効とはいえないと判断しました。ただし金額が高すぎる場合は無効となり得るため、個別の事情で判断されます。
Q. 敷引の金額は退去時にいくら引かれますか?
A. 契約書に「敷引○万円」「敷引賃料○か月分」などと書かれた額が、原則として退去時の状況にかかわらず差し引かれます。金額は物件や地域によって異なるため、契約前に特約条項を必ず確認してください。
Q. 敷引があっても原状回復費用は別に請求されますか?
A. 敷引は通常損耗の補修費などに充てる趣旨で定められるのが一般的です。そのため、通常の使用による損耗について、別途借主へ請求されないのが基本です。故意・過失による破損や汚れの修繕費は、別に請求される場合があります。
Q. 賃貸中の物件を売却すると、敷金や敷引はどうなりますか?
A. 賃貸中の物件の所有者が変わると、敷金の返還義務は新しい所有者に引き継がれます(民法605条の2第4項)。売買の際は、預かっている敷金の額と敷引特約の内容を買主へ引き継ぎ、売買代金の精算で調整するのが一般的です。
Q. 賃貸中の住宅を売却するとき、査定は無料でできますか?
A. ハウスドゥ茨城では、賃貸中の物件を含む無料査定のご相談を承っています。賃貸借契約書や敷金の明細があると、査定がスムーズに進みます。
賃貸中の物件・相続した賃貸物件の売却はハウスドゥ茨城にご相談ください
敷金や敷引特約の引き継ぎ、入居者がいる状態での売却など、賃貸物件の売却は契約内容の確認が欠かせません。ハウスドゥ茨城(取手戸頭店・守谷店・筑波研究学園都市店・県庁水戸店)では、不動産の売却・買取のご相談を承っています。お急ぎの場合は、お電話(0120-565-072)または査定・相談フォームからお気軽にご連絡ください。
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