賃貸中のアパートや戸建てを「そろそろ売却したい」と考えたとき、まず立ちはだかるのが入居者との賃貸借契約です。家賃を滞納している、無断で又貸し(転貸)されている、契約で決めた用法を守ってもらえない――こうした場合、貸主は一定の条件のもとで契約を解除できます。ただし賃貸借契約の解除には、単発の違反だけでは足りない独特のルールがあります。この記事では、ハウスドゥ茨城が一次情報にもとづき、賃貸借契約を解除できる法的根拠・手続きの流れ・費用・注意点を整理します。
賃貸借契約の「解除」とは|まず押さえておきたい全体像
「解除」という言葉は日常的にも使われますが、法律上は複数の終了パターンが存在し、それぞれ要件がまったく異なります。
賃貸中の物件を売却したいオーナーが直面する「解除」の壁
売却を検討する際、賃貸借契約が残ったままだと買主候補が限定されたり、価格に影響したりすることがあります。空室にしてから売りたい場合、貸主側の一存で自由に契約を終わらせられるわけではない点が最初のハードルになります。
「解除」「解約」「更新拒絶」の違い
「解除」は主に賃借人の債務不履行(家賃滞納や無断転貸など)を理由に、契約を遡って終了させる民法上の制度です。一方「解約」は期間の定めのない契約や中途解約条項にもとづく将来効の契約終了、「更新拒絶」は借地借家法にもとづき、期間満了時に契約を更新しない意思表示を指します。同じ「終わらせる」でも根拠となる法律・必要な手続き・認められやすさが大きく異なります。
賃貸借契約を終了させる4つの法的ルート
貸主の都合で契約を終わらせたい場合、主に次の4つのルートがあります。
①民法の法定解除(債務不履行解除)
家賃滞納や無断転貸など、賃借人に契約違反があった場合に使える解除です。民法541条にもとづき、原則として相当の期間を定めて履行を「催告」し、それでも是正されない場合に初めて解除できます(催告解除)。
②借地借家法の正当事由による更新拒絶・解約申入れ
賃借人に契約違反がなくても、老朽化や自己使用の必要性などの事情と立退料の提供によって「正当事由」が認められれば、更新拒絶や解約申入れができます。こちらは借地借家法28条が定める要件で、民法の法定解除とはまったく別のルートです。立退料の相場や交渉の進め方は、関連記事「立ち退き料の相場はいくら?|借家人への支払いと売却への影響」で詳しく解説しています。
③借主からの中途解約
期間内解約は本来「借主に有利な特約」として契約書に定められている場合に限られます。貸主側から一方的に中途解約を求めることは、原則としてできません。
④双方合意による合意解除
最も手続きが軽く、トラブルになりにくいのが話し合いによる合意解除です。立退料や退去時期を交渉のうえ、合意書を取り交わして終了させる方法です。

信頼関係破壊の法理とは|賃貸借契約の解除に共通する大原則
賃貸借契約の解除を検討するうえで欠かせないのが「信頼関係破壊の法理」という判例上のルールです。
なぜ賃貸借だけ「信頼関係の破壊」が必要なのか
賃貸借は貸主と借主が長期間にわたり継続する契約であるため、些細な契約違反のたびに解除を認めると借主の生活基盤が不安定になりすぎます。そこで裁判例は、民法541条を適用しつつ、違反の程度が「当事者間の信頼関係を破壊するに至った」といえる場合に限って解除を認める、という修正を加えています。
一度の違反では解除できないケースが多い理由
家賃滞納であれば一般的に3ヶ月分程度の滞納が催告解除の目安とされていますが、金額や滞納の経緯によっては1ヶ月の滞納でも信頼関係の破壊が認められる場合があります。逆に3ヶ月分滞納していても、直前に一部弁済があるなど事情次第では認められないこともあり、機械的な判断はできません。
家賃滞納を理由とする契約解除の流れ
何ヶ月の滞納で解除できるか(目安3ヶ月分)
裁判実務では家賃3ヶ月分程度の滞納が一つの目安とされていますが、あくまで目安であり、必ずしも3ヶ月に達しないと解除できないわけではありません。滞納から強制退去までの具体的な期間や費用については、関連記事「家賃滞納で強制退去になるまで|流れ・期間・費用」で詳しく解説しています。
催告(民法541条)から解除までの流れ
①相当の期間(1〜2週間程度が目安)を定めて支払いを催告する内容証明郵便を送付→②期間内に支払いがなければ解除通知を送付→③任意の退去に応じない場合は明渡請求訴訟へ、という流れが一般的です。訴訟や強制執行の具体的な手続きは、関連記事「立ち退き拒否されたらどうする?明渡し請求から強制執行までの流れと費用」で解説しています。
無断転貸・用法違反を理由とする契約解除
無断転貸解除の要件(民法612条)
賃借人が貸主の承諾を得ずに第三者へ賃借物を転貸・賃借権を譲渡した場合、貸主は契約を解除できます(民法612条2項)。ただし判例上、「背信的行為と認めるに足りない特段の事情」がある場合は例外的に解除できないとされており、ここでも信頼関係破壊の法理が働きます。
用法遵守義務違反による解除
賃借人は契約や目的物の性質で定まった用法に従って使用する義務を負います(民法616条・594条1項)。住居専用の契約で無断営業をする、無断で大規模な改装をする、といった用法違反も、信頼関係を破壊する程度に至れば解除事由になり得ます。
無催告解除ができる例外的なケース
民法542条が定める要件
改正民法542条は、催告をしても契約目的を達成できないことが明らかな場合など、無催告での解除が認められる場面を類型化しています。賃貸借では、著しい背信行為があり信頼関係の回復が期待できないケースなどが該当し得ます。
契約書の無催告解除特約の有効性
契約書に「○ヶ月分滞納したら無催告で解除できる」といった特約が定められていることがありますが、こうした特約があっても、裁判では最終的に信頼関係破壊の有無が審査される点に変わりはありません。特約があるからといって機械的に無催告解除が認められるとは限らない点に注意が必要です。
解除通知の出し方(内容証明郵便)
催告書・解除通知書に書くべき項目
催告書には、対象となる賃貸借契約の特定(物件住所・契約日)、未払い賃料の金額と期間、支払期限、期限内に支払いがない場合は契約を解除する旨を明記します。後日の裁判で証拠として使えるよう、配達証明付きの内容証明郵便で送付するのが基本です。
賃貸借契約の解除通知書の文例
「本書面到達後○日以内に、下記未払い賃料○円をお支払いください。期限内にお支払いがない場合は、本書をもって上記期間の経過をもって本契約を解除します。」のように、催告と条件付き解除の意思表示を一通にまとめる方法(停止条件付解除の意思表示)が実務でよく使われます。文面は個別の事情によって調整が必要なため、実行前に弁護士へ相談することをおすすめします。
借主からの中途解約との違い
中途解約条項がある場合とない場合
期間の定めがある建物賃貸借契約では、中途解約条項がない限り借主から期間途中で一方的に解約することはできません。多くの契約書では借主に有利な特約として、一定の予告期間を置けば中途解約できる条項が設けられています。
解約予告期間の目安
居住用では1ヶ月〜3ヶ月前予告、事業用ではより長い予告期間(3ヶ月〜6ヶ月前)が定められることが多く、契約書ごとに条件が異なるため必ず個別の契約条項を確認する必要があります。
契約解除にかかる費用の目安
内容証明郵便・弁護士費用の相場
内容証明郵便は1通あたり目安1,500〜2,000円程度です。交渉や訴訟を弁護士に依頼する場合は、着手金として目安16万5,000円〜33万円程度からとされ、事務所によって幅があります。
敷金精算の考え方(民法622条の2)
敷金の返還請求権は、賃貸借が終了し、かつ賃貸物の返還を受けたときに発生します。明渡しと敷金返還は同時履行の関係ではなく、明渡しが先履行とされている点も、解除交渉の際に押さえておきたいポイントです。
解除が認められなかった・トラブルになった事例と注意点
信頼関係破壊が否定され解除が認められなかったケース
短期間の軽微な滞納や、直前に滞納分が精算されているケースなどでは、信頼関係が破壊されるに至っていないと判断され、解除が認められないことがあります。証拠を整理し、違反の程度・経緯を具体的に説明できるようにしておくことが重要です。
借主が解除に応じない場合はどうなるか
解除の意思表示をしても借主が任意に退去しない場合は、最終的に明渡請求訴訟・強制執行という手続きに進むことになります。具体的な流れと費用は、関連記事「立ち退き拒否されたらどうする?明渡し請求から強制執行までの流れと費用」をあわせてご覧ください。
契約解除後に物件を売却する際の注意点
空室にしてから売る場合とオーナーチェンジのまま売る場合の違い
契約を解除して空室にしてから売却すると、実需(自分で住みたい人)の買主にも売却できるため買主の裾野が広がり、価格面で有利になりやすい一方、解除までの交渉期間・立退料・原状回復費用がかかります。反対に、入居者がいる状態のまま「オーナーチェンジ」として売却すれば、解除手続きの手間なくスピーディに売却できますが、買主は主に投資家に限られ、価格は実需向けより低めになる傾向があります。どちらが有利かは、滞納の有無や物件の状態、売却までにかけられる期間によって変わります。
原状回復費用と譲渡所得税の考え方
退去後の原状回復費用は、経年劣化・通常損耗分は貸主負担、借主の故意過失による損傷分は借主負担が原則です(国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」)。また、売却によって利益(譲渡所得)が出た場合は、所有期間の長短に応じた税率で譲渡所得税がかかります。契約解除や原状回復にかかった費用が売却の必要経費や取得費に算入できるかどうかは個別事情によるため、確定申告の際は税理士に確認することをおすすめします。
茨城県内での賃貸中物件の売却対応・4店舗体制
ハウスドゥ茨城グループは、茨城県内でつくば市・水戸市・取手市・守谷市の4店舗を中心に、賃貸中の物件(オーナーチェンジ物件)の売却相談にも対応しています。契約解除が必要かどうかの見極めから、賃借人がいる状態のままでの売却(オーナーチェンジ売却)まで、状況に応じた選択肢をご提案します。まずは現状の契約内容と賃借人の状況をお聞かせください。
よくある質問
Q1. 家賃を1ヶ月滞納しただけでも契約解除できますか?
A. 原則として難しい場合が多いです。裁判実務では3ヶ月分程度の滞納が一つの目安とされていますが、事情によっては1ヶ月の滞納でも信頼関係破壊が認められる例外もあります。個別事情の確認が必要です。
Q2. 無断転貸が見つかった場合、すぐに解除できますか?
A. 民法612条により解除できるのが原則ですが、「背信的行為と認めるに足りない特段の事情」がある場合は解除できないとされています。転貸の経緯や実態の確認が必要です。
Q3. 契約書に「無催告解除特約」があれば必ず無催告で解除できますか?
A. 特約があっても、最終的には信頼関係が破壊されているかどうかが審査されます。特約の存在だけで機械的に無催告解除が認められるとは限りません。
Q4. 中途解約条項がない契約で、貸主から一方的に解約できますか?
A. 原則としてできません。中途解約は借主に有利な特約として定められている場合に借主側から行使できるものであり、貸主から一方的に求めることは想定されていません。
Q5. 解除通知は口頭でも有効ですか?
A. 口頭でも法的には成立し得ますが、後日の証拠が残らないため、配達証明付きの内容証明郵便で送付するのが実務上の基本です。
Q6. 賃貸中のまま物件を売却することはできますか?
A. 可能です。賃借人がいる状態で売却する「オーナーチェンジ」という方法もあり、必ずしも契約解除が前提になるわけではありません。売却方針によって最適な進め方は変わります。
まとめ
賃貸借契約の解除は、家賃滞納・無断転貸・用法違反といった債務不履行を理由とする民法上の解除と、老朽化などを理由とする借地借家法上の正当事由による更新拒絶・解約申入れとでは、根拠となる法律も要件もまったく異なります。いずれのルートでも「信頼関係破壊の法理」という共通の大原則があり、単発の違反だけで機械的に解除できるわけではない点に注意が必要です。手続きを誤ると解除が無効と判断されるリスクもあるため、実行前に弁護士など専門家へ相談し、証拠と通知書面を整えたうえで進めることをおすすめします。
賃貸中の物件の売却や、契約解除を前提とした売却のご相談は、下記よりお気軽にお問い合わせください。
賃貸中の物件の売却・契約解除のご相談はこちらから
無料相談フォーム
この記事に関するご相談はこちらから。秘密厳守で対応いたします。




