「隣の家との距離が近すぎる」「3階建てで細長い」——最近、都市部を中心にこうした住宅を見かける機会が増えました。通称「ペンシルハウス」と呼ばれるこのタイプの住宅は、狭い敷地を最大限に活用できる一方で、いざ売却しようとすると「なかなか買い手がつかない」という声も少なくありません。この記事では、ペンシルハウスの定義や増えている背景、メリット・デメリット、そして売却が難しいと言われる理由と実際の売却の進め方まで、法律・制度の一次情報にもとづいて整理します。
ペンシルハウスとは|定義と特徴
ペンシルハウスとは、敷地面積がおおむね15坪〜20坪程度と狭い土地に、高さ方向を活かして建てられた3階建て(場合によっては4階建て)の住宅を指す通称です。建築基準法上の正式な用語ではなく、間口が狭く縦に長いシルエットが鉛筆(ペンシル)に似ていることから、不動産業界や住宅業界で使われるようになった呼び方です。
敷地面積と建物の目安
一般的な戸建て住宅の敷地面積が30坪〜50坪程度であるのに対し、ペンシルハウスは15坪〜20坪前後というケースが目立ちます。敷地が狭い分、床面積を確保するために2階建てではなく3階建て・4階建てにして、上方向に居住スペースを積み上げる設計が主流です。
ペンシルハウスが増えている背景
都市部を中心にペンシルハウスが増えている背景には、次のような事情があります。
- 地価の高騰により、広い土地を購入することが難しくなっている
- 相続や売却で広い土地が分筆され、狭小地として市場に出回るようになった
- 都心・駅近など利便性の高いエリアに住みたいというニーズが根強い
- 建築技術の進歩により、狭小地でも3階建て・4階建ての設計がしやすくなった
ペンシルハウスのメリット
デメリットが強調されがちなペンシルハウスですが、選ばれる理由となるメリットも存在します。
都心・駅近など利便性の高い立地に住める
広い土地を確保しにくい人気エリアでも、狭小地であれば購入・取得しやすい傾向があります。通勤・通学の利便性を優先したい人にとっては大きな魅力です。
狭小地は取得費用を抑えやすい
同じエリアであれば、土地面積が小さいほど購入価格は下がる傾向にあります。立地を優先しつつ、初期費用を抑えたい人に向いています。
注文住宅として自由度の高い設計ができる
狭小地専門の設計会社・工務店も多く、スキップフロアや吹き抜け、屋上テラスなど、限られた面積を有効活用する工夫を盛り込んだ設計が可能です。
ペンシルハウスのデメリット
一方で、ペンシルハウスには構造上避けにくいデメリットもあります。
階段の上り下りが多く生活動線が長い
3階建て・4階建てになるため、2階建て住宅に比べて階段の上り下りの回数が増えます。洗濯物を1階で洗って3階のバルコニーに干す、といった動線の長さは、年齢を重ねるほど負担になりやすいポイントです。
各階の床面積が狭く、部屋・収納が限られる
延床面積を確保するために階数を増やしていても、各階の床面積自体は狭いままです。1部屋あたりの広さや収納スペースが限られ、家具の配置に工夫が必要になるケースが多く見られます。
隣家との距離が近く、境界トラブルが起きやすい
狭小地では、隣地との境界線ぎりぎりまで建物を建てるケースが少なくありません。民法234条1項では「建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない」と定められており、これに満たない場合、隣地所有者から建築の中止や変更を求められる可能性があります(ただし、地域の慣習や建築基準法の規定が優先される場合もあります)。日照・通風・プライバシーの面でも、隣家との距離の近さがストレスの原因になることがあります。
耐震性・防火性への配慮がより重要になる
3階建て以上の木造住宅は、2階建てに比べて構造計算がより厳格に求められます(建築基準法上、木造3階建ては原則として構造計算が必要)。また、都市部の狭小地は防火地域・準防火地域に指定されていることが多く、外壁や開口部に防火性能の高い建材を使う必要があり、その分建築コストが上がる傾向があります。
将来の建て替え・大規模修繕がしにくい
隣家との距離が近いと、建て替えや外壁の大規模修繕の際に重機や足場を十分なスペースで設置できず、手作業に頼る工程が増えます。結果として、通常の住宅より工期が延び、費用も高くなりやすい点はあらかじめ知っておきたいポイントです。
ペンシルハウスの売却が難しいと言われる理由
ペンシルハウスは「売れにくい」というイメージを持たれがちです。その背景には、次のような具体的な理由があります。

理由1:住宅ローンの審査で不利になりやすい
金融機関は住宅ローンの審査において、建物・土地の担保価値を評価します。狭小地・狭小住宅は資産価値を低めに評価されやすく、希望する金額の融資が受けられない、あるいは通常の住宅ローンではなく金利の高い商品を案内されるケースがあります。
フラット35についても床面積の要件があります。戸建て住宅の場合、以前は床面積70平方メートル以上が必要でしたが、2024年4月以降の物件検査申請分からは50平方メートル以上に緩和されました。ペンシルハウスは3階建て・4階建てで延床面積を積み上げている物件も多く、この要件を満たすかどうかは物件ごとに確認が必要です。
理由2:購入者層(ファミリー層)のニーズと合いにくい
ファミリー層は、子どもが安全に過ごせる広さや、生活動線がシンプルな2階建てを好む傾向があります。3階建て・4階建てで各部屋が狭いペンシルハウスは、単身者・DINKS向けとしては需要があっても、ファミリー層からは敬遠されやすく、購入検討者の母数が絞られてしまいます。
理由3:再建築・リフォームの制約が資産価値に影響する
接道義務(建築基準法上、原則として幅員4m以上の道路に2m以上接していること)を満たしていない、あるいは容積率・建ぺい率の見直しにより将来同じ規模で建て替えられない「再建築不可」に近い狭小地も存在します。将来の建て替えに制約がある物件は、買主にとって長期的な資産価値の見通しが立てにくく、購入をためらう材料になります。同じく敷地の形状が原因で売却が難しくなりやすい事例には、間口が狭い旗竿地の売却や、接道義務を満たさない袋地の売却もあります。あわせてご確認ください。
理由4:内見時の印象で「狭い」と判断されやすい
延床面積の数字上は一般的な住宅と大きく変わらなくても、各階が細かく分かれているため、内見時に「思ったより狭い」という印象を持たれやすい傾向があります。特に対面での内見が中心の仲介売却では、この第一印象がそのまま検討離脱につながることがあります。
理由5:近隣トラブルの懸念が心理的なハードルになる
前述の境界線の近さや、日照・騒音トラブルの可能性を懸念し、購入前から「近隣関係で苦労するのでは」と不安を感じる買主も一定数います。実際にトラブルが起きていなくても、懸念だけで検討候補から外れてしまうことがあります。
ペンシルハウスを売却する2つの方法(仲介と買取)
ペンシルハウスの売却方法は、大きく「仲介」と「買取」の2つに分けられます。
仲介での売却
不動産会社が買主を探し、成約すれば仲介手数料を支払う一般的な売却方法です。時間をかけてよい条件の買主を探せる可能性がある一方、前述の理由から成約までに時間がかかりやすく、値下げを重ねるケースも見られます。
買取での売却
不動産会社が直接買主となるため、早ければ数日〜数週間で現金化できます。仲介のように広く一般の買主を募る必要がないため、ペンシルハウスのように購入者層が限られる物件でも、価格や条件次第でスムーズに売却しやすいのが特徴です。仲介に比べて売却価格はやや低くなる傾向がありますが、「早く・確実に」売りたい場合には有力な選択肢です。
仲介と買取、どちらを選ぶべきか
「時間がかかってもできるだけ高く売りたい」場合は仲介、「内見対応や近隣への配慮の負担を減らし、確実に・早く現金化したい」場合は買取が向いています。まずは両方の見積もりを比較し、条件を確認したうえで判断することをおすすめします。
売却の流れと必要書類
ペンシルハウスも基本的な売却の流れは一般的な戸建てと同じです。

売却の6ステップ
- 不動産会社へ査定を依頼(机上査定・訪問査定)
- 媒介契約の締結(仲介の場合)、または買取価格の提示・条件確認(買取の場合)
- 売却活動・内見対応(仲介の場合)
- 買主との条件交渉・売買契約の締結
- 決済・引き渡し(所有権移転登記、住宅ローンが残る場合は抵当権抹消手続き)
- 確定申告(譲渡所得が生じる場合)
売却に必要な主な書類
- 登記済権利証(または登記識別情報)
- 固定資産税・都市計画税の納税通知書
- 建築確認済証・検査済証(再建築の可否確認に必要)
- 本人確認書類・実印・印鑑登録証明書
- 境界確認書(隣地との境界が明確な場合)
売却にかかる費用と税金
仲介手数料の速算式
売買価格が400万円を超える場合、仲介手数料の上限は「売買価格×3%+6万円+消費税」で速算できます(宅地建物取引業法にもとづく上限額)。
印紙税・登記費用の目安
売買契約書に貼付する印紙税は契約金額に応じて軽減措置があり、たとえば1,000万円超5,000万円以下の場合は1万円(軽減措置適用時)です。抵当権抹消登記は不動産1件につき1,000円が目安で、司法書士へ依頼する場合は別途報酬がかかります。
譲渡所得税と特例
売却益(譲渡所得)が生じる場合、所有期間が5年を超える「長期譲渡所得」であれば税率は20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)です。マイホームを売却した場合は、要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「居住用財産の3,000万円特別控除」の適用も検討できます。取得費が不明な場合の「取得費加算の特例」や、相続空き家を売却する際の「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除」など、状況に応じて使える特例が異なるため、税理士や不動産会社に確認することをおすすめします。
ペンシルハウスを高く・早く売るためのポイント
複数社に査定を依頼して比較する
狭小物件は不動産会社によって得意・不得意が分かれやすい分野です。狭小地・訳あり物件の取り扱い実績がある会社を含めて、複数社に査定を依頼し、条件を比較することが重要です。
内見時に「暮らしのイメージ」を伝える工夫をする
収納の使い方や、各階の用途(在宅ワークスペース、趣味の部屋など)を具体的に伝えることで、「狭い」という第一印象を「用途に合わせて使いやすい」という印象に変えられる場合があります。
境界・建築確認書類を事前に整理しておく
境界確認書や建築確認済証をあらかじめ準備しておくことで、買主側の不安(再建築の可否、境界トラブルの有無)を早い段階で解消でき、検討がスムーズに進みやすくなります。
茨城県内でのペンシルハウス・狭小住宅売却のご相談
ハウスドゥ茨城グループは、つくば市・水戸市・取手市・守谷市の4店舗体制で、狭小地・訳あり物件の買取に対応しています。「仲介では売れなかった」「近隣関係が気になって内見対応をしたくない」といったお悩みにも、買取専門店として現況のまま査定・ご相談が可能です。俳優の古田敦也さんがイメージキャラクターを務めるハウスドゥブランドの知名度と、地域に根ざした店舗網を活かし、茨城県内のペンシルハウス・狭小住宅の売却をサポートします。
よくある質問
Q1. ペンシルハウスとタワーマンションの違いは何ですか?
タワーマンションは区分所有の集合住宅であるのに対し、ペンシルハウスは一戸建て(一棟)の住宅です。土地・建物ともに単独で所有する点が大きな違いです。
Q2. ペンシルハウスでも住宅ローンは組めますか?
組めるケースは多くありますが、担保評価や床面積要件により、希望する金額・条件で組めない場合があります。事前に金融機関へ物件情報を伝えて審査の見通しを確認することをおすすめします。
Q3. 3階建てのペンシルハウスは地震に弱いのですか?
木造3階建ては建築基準法上、原則として構造計算が義務付けられており、基準を満たして建築されていれば、階数だけを理由に一律に耐震性が低いとは言えません。ただし、経年劣化や増改築の状況によって耐震性は変わるため、売却前に耐震診断を受けることも選択肢の一つです。
Q4. 隣の家との距離が近いのですが、境界トラブルなく売却できますか?
境界確認書や測量図など、境界に関する資料を整理しておくことで、買主の不安を解消しやすくなります。境界が未確定の場合は、売却前に土地家屋調査士へ相談し、確定測量を行うことも検討してください。
Q5. 仲介で売れなかった場合、その後買取を検討できますか?
可能です。仲介契約の期間満了後、あるいは契約を解除したうえで、買取専門の不動産会社に相談する売主は少なくありません。仲介と買取を並行して検討し、期限を決めて判断する方法もあります。
Q6. 売却前にリフォームしたほうがいいですか?
ペンシルハウスの売却が難しい主な理由は間取り・立地条件によるものが大きく、内装リフォームだけで大きく状況が変わるとは限りません。リフォーム費用をかける前に、不動産会社に現況のままでの査定を依頼し、費用対効果を確認することをおすすめします。
まとめ
ペンシルハウスは、都市部の狭小地を有効活用できる住宅である一方、住宅ローン審査や購入者層の広がりにくさなど、構造的に売却が難しくなりやすい要因を複数抱えています。仲介と買取、それぞれの特徴を理解したうえで、ご自身の状況(急いでいるか、時間をかけてでも高く売りたいか)に合わせて売却方法を選ぶことが重要です。土地の形状や条件全般で売却に悩んでいる方は、土地が売れない7つの原因と売却の対策もあわせてご覧ください。茨城県内でペンシルハウス・狭小住宅の売却をご検討の方は、買取専門店であるハウスドゥ茨城グループへお気軽にご相談ください。
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