買付証明書(かいつけしょうめいしょ)とは、買主が「この条件で購入したい」という意思を売主に伝える書面です。購入申込書・不動産購入申込書とも呼ばれ、売買契約の前段階で提出されます。一般に法的拘束力はなく、買主はキャンセルでき、売主も受け取ったからといって売却する義務はありません。
家やマンション、土地を売りに出すと、問い合わせや内覧のあとに「買付証明書をいただきました」と仲介会社から連絡が入ります。初めて売る方は、これが何を意味するのか、すぐに返事をするべきか、迷いやすいところです。この記事では、売主の立場を中心に、買付証明書の意味・効力・書き方・有効期限・キャンセル・価格交渉・複数申込の優先順位まで、順番にわかりやすく解説します。
この記事の結論(3行まとめ)
- 買付証明書は「購入したい」という意思表示で、売買契約ではありません。
- 売主は受け取っても売る義務はなく、価格・時期などの条件を見て受けるか交渉するかを選べます。
- 契約の成立は売買契約書を交わしたときです。買付証明書の記載条件は、契約書に正確に引き継ぎましょう。
買付証明書とは?不動産売買での意味
買付証明書は、購入希望者が購入したい物件・価格・条件を書面にして売主へ提出するものです。不動産会社によっては「不動産購入申込書」「購入申込書」「買付申込書」と呼ばれますが、役割は同じです。
買付証明書が出される場面
内覧などで物件を気に入った買主が、本格的に購入を進める意思を示すときに提出します。売主から見ると、買主の本気度と希望条件が文書で分かる、最初の具体的な提案です。
買付証明書と購入申込書は同じ?
実務ではほぼ同じ意味で使われます。呼び方は不動産会社ごとに異なり、書式も会社ごとに用意されています。法律で決まった様式はありません。
売主に必ず届くわけではない
買付証明書は、買主から仲介会社を通じて売主へ届きます。売主に連絡が来る前に、仲介会社が内容の確認や条件の調整を行うこともあります。
買付証明書に法的効力はあるのか
買付証明書の法的効力(法的拘束力)は、一般に「ない」または「弱い」と説明されます。売買契約は、売主と買主が条件に合意して契約書を取り交わしたときに成立するものだからです。
買主はキャンセルできる
買付証明書を出したあとでも、売買契約の前であれば、買主は一般に取りやめることができます。この段階で手付金を支払っていないのが通常のため、違約金も発生しません。
売主も売却の義務は負わない
売主側も同様に、買付証明書を受け取ったからといって、その買主に売らなければならないわけではありません。価格や条件が合わなければ、交渉や辞退ができます。
安易な撤回はトラブルのもと
法的拘束力が弱いといっても、何をしても許されるわけではありません。売主が他の購入希望者を断り、契約の準備を進めた直後に撤回された場合などは、信義則(誠実に取引する原則)に反するとして損害賠償が問題になる可能性もゼロではありません。ご自身が買主側になる場合も、売主として受ける場合も、提出・受領は誠意を持って対応することが大切です。
買付証明書・売渡承諾書・売買契約書の違い
混同されやすい3つの書面を整理します。

売渡承諾書とは
売渡承諾書は、売主が「この条件で売ります」という意思を示す書面です。買付証明書と対になる書面ですが、省略されることも多く、実務では買付証明書だけで条件交渉に進むケースが一般的です。
売買契約書は別物
売買契約書は、買主と売主が合意内容を確認して署名・押印する、法的拘束力のある書面です。契約と同時に手付金が支払われ、以後の解除には手付解除や違約金のルールが適用されます。契約後のお金の話は不動産売買契約の違約金とは?相場・手付解除との違いで詳しく解説しています。
買付証明書に書かれる主な項目
書式は会社ごとに異なりますが、多くの買付証明書には次の内容が記載されます。受け取ったら、まずここを確認しましょう。
物件情報と購入希望価格
物件の所在地、種別(土地・戸建て・マンション)、そして購入希望価格です。売出価格に対して、満額か、値引きの申し出かが最大のポイントです。
手付金・契約希望日・決済日
売買契約時に支払う手付金の予定額、契約を結びたい日、残代金の決済と引渡しの希望日です。売主側の引越し予定や住み替えのスケジュールと合うかを確認します。
資金計画(現金・ローン・融資特約)
購入資金を現金で払うのか、住宅ローンを使うのかが記載されます。ローンを使う場合は、融資が承認されなかったときに契約を白紙に戻せる「ローン特約(融資特約)」の希望や、事前審査の状況も重要な判断材料です。
有効期限
買付証明書には有効期限(回答期限)が書かれるのが通例です。期限内に売主が回答しなければ、買主は別の物件を検討することもできます。
その他条件(土地の測量・境界・設備など)
「境界確認の完了」「設備の修繕」「古家付きでの引渡し」など、買主の希望条件が書かれます。土地の場合は境界の明示や面積の取扱いが論点になりやすいため、条件が妥当かをよく確認します。
買付証明書の書き方(買主の方向け)
売主の方も、買主がどんな書き方をするかを知っておくと、書面を読み解きやすくなります。書き方の基本は次のとおりです。
書式と雛形の入手先
買付証明書の雛形(ひな形)は、仲介する不動産会社が用意しているため、ふつうは会社所定の書式を使います。ネット上にはエクセルやワード、PDFの無料テンプレートもありますが、物件・条件に合わせて内容を調整する必要があります。インターネットで見つけた雛形をそのまま使うのではなく、必ず仲介会社に確認してから提出しましょう。
記入のポイントと記入例の考え方
金額・日付・物件の表示は、登記簿や販売図面と一字一句そろえて正確に書きます。条件は「何を」「いつまでに」を具体的に書くのがコツです。たとえば「ローン特約を希望」「引渡しは契約から60日以内を希望」のように、あとで解釈が分かれない書き方にします。
押印と提出方法
署名のうえ押印して、仲介会社経由で提出するのが一般的です。メールやPDFでの提出に対応する会社もあります。押印の要否は会社の運用によって異なるため、確認しておきましょう。
売主が買付証明書を受け取ったときの対応
ここからは、売主の方が実際に何をすべきかを順番に説明します。

ステップ1:内容を落ち着いて確認する
購入希望価格、手付金額、契約・引渡しの希望日、ローン特約の有無、有効期限を確認します。すぐ返事をする必要はありませんが、有効期限内に回答しないと買主を逃すこともあるため、日程は意識しましょう。
ステップ2:条件を比べ、判断の基準を決める
売却の目的が「できるだけ高く」なのか「早く確実に」なのかで、選ぶ条件は変わります。価格だけでなく、資金計画の確実さや引渡し時期とのバランスで考えます。
ステップ3:受ける・交渉する・断る
条件に納得なら受け入れ、希望と合わなければ仲介会社を通じて交渉します。どうしても合わない場合は辞退も可能です。受け入れる場合は、条件を売買契約書に反映して契約日を調整します。
ステップ4:契約書に条件を引き継ぐ
買付証明書の条件は、売買契約書に正確に落とし込みます。重要事項の説明も契約前に行われます。内容は重要事項説明書とは?記載事項・読み方で確認できます。
価格交渉(値引き)にどう向き合うか
買付証明書の購入希望価格が、売出価格より低いことは珍しくありません。実務では、買付証明書をきっかけに価格交渉が始まるのが一般的です。
値引き交渉は想定内と考える
売り出しの時点で、どこまでなら値引きしてもよいかの「下限」を決めておくと、慌てずに済みます。下限は、住宅ローンの残債や諸費用、売却後の資金計画から逆算します。
値引き以外の条件で調整する
価格が希望に届かなくても、引渡し時期を売主の都合に合わせる、契約不適合責任の範囲を調整する、設備を現状のまま引き渡すなど、価格以外で折り合う方法もあります。なかなか売れない場合の考え方は1年以上売れない家は値引きすべき?原因と5つの対策も参考にしてください。
契約不適合責任の確認
引渡し後に不具合が見つかったときの責任(契約不適合責任)は、買主の条件として書かれることがあります。仕組みは瑕疵とは?契約不適合責任との違いをご覧ください。
複数の買付証明書が届いたときの優先順位
人気の物件では、複数の買付証明書が同時に届くことがあります。このとき、法律上の決まりはありません。
先着順が基本、でも売主が選べる
一般的には先に出された順を尊重する場合が多いのですが、最終的に誰に売るかを決めるのは売主です。条件の差が大きければ、後から出された申込を優先することもできます。
優先順位を決める判断軸
価格、現金かローンか、事前審査の通過状況、引渡し時期、付される条件の少なさを総合して判断します。あらかじめ基準を決めて、仲介会社と共有しておくと、あとで迷いません。
有効期限と、期限が切れたあとの対応
買付証明書の有効期限は、1週間前後を目安に設定されるケースが多く見られますが、法的な決まりではありません。物件や状況によって変わります。
期限内に返事をする
回答が遅れると、買主が他の物件に気持ちを移してしまうことがあります。判断に時間が必要なときは、仲介会社を通じて「検討中であり、〇日までに回答する」と連絡を入れておきましょう。
返事が来ない、連絡がないとき
買主側からの返事がない、期限を過ぎてしまった場合は、仲介会社が状況を確認します。再度の提出や期限の延長が必要になることもあります。
買付証明書のキャンセルと違約金
売主・買主ともに気になるのが「キャンセルしたらどうなるか」という点です。
契約前のキャンセル
売買契約の前であれば、一般にペナルティなくキャンセルできます。手付金も支払われていないのが通常です。ただし、売主が条件に応じて準備を進めたあとの撤回は、トラブルになりやすい点に注意が必要です。
契約後は違約金・手付解除のルールが適用される
売買契約を結んだあとは、手付解除や違約金の取り決めが適用されます。詳細は先ほどの違約金の記事で解説しています。
買付証明書で起きやすいトラブルと対策
条件があいまいで契約時にもめる
口頭で合意した内容が書面に残っていないと、契約時に食い違うことがあります。条件は必ず書面にして、仲介会社に確認してもらいましょう。
ローンが通らずに白紙になる
買主がローンを使う場合、本審査に通らず契約が流れる可能性があります。事前審査の状況やローン特約の期限を確認しておくと、リスクを減らせます。
他社の買主が現れて迷う
先に出た買付証明書の回答期限内に、より好条件の申込が届いた場合、売主が選ぶことになります。ただし、先の買主への説明は誠実に行いましょう。
売主・買主それぞれのメリット・デメリットと注意点
買付証明書を使うメリット
買主の購入意思と希望条件が書面で明確になるため、口約束による行き違いを防げます。売主は複数の条件を一覧で比較でき、提示された内容をもとにスムーズに交渉を進められます。
デメリットと注意点
法的拘束力が弱いため、買主から一方的に撤回される可能性があります。買主が信頼できるか、資金計画を裏付ける資料(住宅ローンの事前審査の結果など)があるかを、仲介会社を通じて確認しておくと安心です。メリットだけでなく、このデメリットも理解したうえで進めましょう。
提出時に確認される書類・情報
買付証明書には、買主の氏名・住所・連絡先などが記載されます。会社によっては、勤務先や資金の資料の提示を求めることもあります。受け取った個人情報は、売却の検討以外には使わず、取り扱いに注意しましょう。
回答するときは理由を明確に伝える
条件に応じられない場合は、価格・時期・特約など、どの点が難しいのかを仲介会社を通じて明確に伝えると、買主も再提案しやすくなります。一方的に断るより、次の交渉につながる可能性があります。
売却が成立した場合の税金と費用
売買が成立すると、仲介手数料などの費用がかかります。売却益が出た場合は譲渡所得として税金が課されることがあり、特例の適用によって金額が変わります。作成する売却計画に、税金と諸費用の見積りも含めておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 買付証明書に法的拘束力はありますか?
A. 一般的には、買付証明書は購入の意思を示す書面であり、法的な拘束力はないと考えられています。買主はキャンセルでき、売主も提出を受けたからといって売却する義務は負いません。ただし、売主が条件を受け入れて準備を進めた後の安易な撤回は、信義則上のトラブルにつながる可能性があります。
Q. 買付証明書の有効期限はどれくらいですか?
A. 書面に有効期限を記載するのが通例で、期間は1週間前後を目安に設定されることが多いです。物件や状況によって異なるため、買主・売主・仲介会社で確認して決めます。期限を過ぎた申込は、再提出や条件の確認が必要になることがあります。
Q. 買付証明書が出ても、売主は断れますか?
A. 断れます。買付証明書は買主の申込であり、受け取った時点で売買契約は成立しません。価格や引渡し時期など、希望と合わない場合は条件交渉や辞退が可能です。複数の申込があるときは、条件や買主の状況をみて売主が選びます。
Q. 買付証明書のあと、キャンセルすると違約金はかかりますか?
A. 売買契約の前であれば、一般に違約金や手付金の没収は発生しません。ただし、契約直前の撤回など売主に大きな損害が出る場合は、損害の賠償を求められる可能性がゼロではありません。契約後の解除は違約金や手付解除のルールが適用されます。
Q. 買付証明書に手付金は必要ですか?
A. 一般的に買付証明書の段階では手付金の支払いは不要です。手付金は売買契約の締結時に支払います。買付証明書には、契約時に支払う予定の手付金の額を『希望条件』として記載することが多いです。
Q. 買付証明書の価格が希望より低い場合はどうすればよいですか?
A. いきなり断らず、仲介会社を通じて価格交渉を行うのが一般的です。値引き幅だけでなく、引渡し時期、ローン特約の有無、契約不適合責任の範囲など条件全体で比較しましょう。譲れない最低ラインを事前に決めておくと判断しやすくなります。
Q. 複数の買付証明書が届いたときの優先順位は?
A. 法律上の決まりはなく、先着順を基本としつつも、最終的には売主が選べます。価格、現金かローンか、融資の事前審査状況、引渡し時期、条件の少なさなどを総合して判断します。公平性のためにも、判断の基準を仲介会社と共有しておくと安心です。
Q. 買付証明書と売渡承諾書の違いは何ですか?
A. 買付証明書は買主が購入の意思を示す書面、売渡承諾書は売主が売却の意思を示す書面です。どちらも売買契約書ではなく、原則として法的拘束力は弱いと考えられています。売渡承諾書は省略されることも多く、実務では買付証明書だけで条件交渉に進むケースが一般的です。
買付証明書のことは、売却の相談から安心して進めましょう
買付証明書は、売却が動き出したサインです。内容の読み解きや、価格・条件の交渉、契約書への反映まで、不動産の専門家に任せることで安心して進められます。ハウスドゥは、全国的に知られたブランドと茨城県内4店舗の地域密着体制で、売却のご相談をお受けしています。
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