冬場の網元料理店に並ぶあんこう鍋、駅の売店に山積みになった納豆、部活帰りの高校生が寄る町のラーメン店。茨城県には、観光ガイドの表紙には出てこなくても、暮らしの中に深く根づいた「食」がある。本記事では、観光いばらき公式ホームページ(茨城県観光物産協会)と農林水産省「うちの郷土料理」という一次情報をもとに、茨城県のご当地グルメを地域別に整理し、あわせてその食文化が住まい選びにどうつながるかを考える。
茨城県は「食の宝庫」―ご当地グルメを支える一次産業の力
茨城県のご当地グルメが多彩なのは、偶然ではない。県内の農業産出額は4,536億円で全国3位、総農家数は約7万2千戸で全国2位という規模を持ち、耕地面積は約16万1千ヘクタールにのぼる(茨城県統計課「統計キッズ-農業」)。加えて太平洋・霞ヶ浦・北浦という3つの異なる漁場を抱え、農産物と水産物の両方が豊富にそろう県は全国的にも珍しい。この一次産業の厚みが、そのまま多様な郷土の味につながっている。関連する農産物・特産品の全体像は、姉妹記事「茨城県の特産品・農産物|全国1位の7品目とGIブランド」で詳しく整理している。
農業産出額4,536億円、全国3位の生産基盤
茨城県統計課の資料によれば、県の農業産出額は4,536億円で全国3位、地目別では山林25.3%・畑15.2%・田15.0%がこの3地目だけで県全体の約6割を占める。れんこん・メロン・栗など全国トップクラスの生産量を持つ品目も多く、その一部がそのまま郷土料理の主役になっている。
太平洋・霞ヶ浦・北浦という3つの漁場
暖流と寒流が交わる茨城沖は一年を通じて魚が豊富な漁場で、しらすの漁獲量は全国トップクラスとされる(観光いばらき公式)。加えて霞ヶ浦・北浦という国内屈指の湖沼を持ち、内水面の魚介も食文化に組み込まれている。海・湖・川という3つの水域を同時に持つことが、茨城のご当地グルメの幅広さの土台になっている。
【地域別】茨城県のご当地グルメ12選
茨城県は県北・県央・県南・県西・鹿行の5地域に分けて語られることが多い。ここでは観光いばらき公式ホームページの紹介内容をもとに、代表的なご当地グルメを地域別に整理する。
県北エリア―あんこう鍋と奥久慈しゃも
北茨城市など県北の冬の味覚を代表するのが「あんこう鍋」。例年11月頃から3月頃まで県内各地で味わうことができ、「あんこうの共酢」「どぶ汁」「あん肝」など食べ方も多様だ(観光いばらき公式)。また大子町周辺で育てられる「奥久慈しゃも」は、締まりのある肉質と適度な脂肪分が特徴の高級地鶏で、コクのあるシャモスープも人気が高い。
県央エリア―水戸納豆とスタミナラーメン
全国的な知名度を誇る「水戸納豆」は、伝承では平安時代後期の永保3年(1083年)、源義家が水戸市渡里町の一盛長者の屋敷に泊まった際、馬の飼料用に作った煮豆が偶然発酵してできたのが始まりとされる。全国区の知名度になったのは明治22年(1889年)の水戸駅開業に合わせ、駅前で売り出されたことがきっかけという(観光いばらき公式)。もう一つの県央グルメが、ひたちなか市発祥とされる「スタミナラーメン」。レバー・カボチャ・ニラ・キャベツなどを甘辛い餡に仕立て、熱々の麺にかける「ホット」と、冷たい麺にかける「冷やし」の2種類がある地元熱愛のソウルフードだ。
県南エリア―霞ヶ浦のしらうお
霞ヶ浦でとれる「しらうお」は、透明でキラキラと輝くことから地元漁師に「ダイヤモンド」と呼ばれている。淡白な中に甘みとほど良い苦味があり、刺身のほか、煮干しや佃煮、かき揚げ、卵とじなど幅広い料理で親しまれている(観光いばらき公式)。
県西エリア―常陸秋そばとつけけんちん
「玄そばの最高峰」とも評されるブランド品種「常陸秋そば」は、香りと味わいの良さでそば職人からも高い評価を得ている。この常陸秋そばを使った茨城の郷土料理が「つけけんちんそば」で、味わい方の違いを店ごとに楽しめるのも魅力とされる(観光いばらき公式)。
鹿行エリア―鹿島灘はまぐりと常陸乃国いせ海老
鹿行エリアの太平洋沿岸は、実の厚さと濃厚なうまみが特徴の「鹿島灘はまぐり」の産地。酒蒸し・潮汁・焼きはまぐり・カレーなど幅広い料理で楽しまれている。2023年6月には新たに「常陸乃国いせ海老」というブランドが誕生し、特に大ぶりで美しいものだけが厳選されて出荷されている(観光いばらき公式)。ほかにも10月〜2月頃においしさが増す「めひかり」の唐揚げ・天ぷらが地元で親しまれている。
県全域でブランド化される食材―常陸牛・常陸の輝き・地酒
特定の地域に限らず県全域でブランド化が進む食材もある。「常陸牛」は茨城県産黒毛和牛のうちA4・B4以上に格付けされた肉だけに与えられる称号で、上質な赤身が特徴。県が開発した新ブランド肉「常陸の輝き」も、有名シェフから高い評価を得ている。地酒についても、久慈川・那珂川・筑波山・鬼怒川・利根川という5つの水系に恵まれ、関東地方では最多となる42の酒蔵(令和元年7月現在)が個性豊かな日本酒を生み出している。地酒については姉妹記事「茨城県の日本酒・地酒|5水系36蔵が育む味の地図」で詳しく紹介している。
早見表で比較する茨城のご当地グルメ
| エリア | 代表的なご当地グルメ | 特徴・旬 |
|---|---|---|
| 県北 | あんこう鍋/奥久慈しゃも | 冬(11〜3月)が旬。地鶏は締まった肉質 |
| 県央 | 水戸納豆/スタミナラーメン | 1083年伝承の納豆/ひたちなか発祥の甘辛餡ラーメン |
| 県南 | しらうお(霞ヶ浦) | 刺身・佃煮・かき揚げなど幅広い調理法 |
| 県西 | 常陸秋そば/つけけんちん | 玄そばの最高峰と評されるブランド品種 |
| 鹿行 | 鹿島灘はまぐり/常陸乃国いせ海老 | 2023年誕生の新ブランドいせ海老 |
| 県全域 | 常陸牛/常陸の輝き/地酒 | A4・B4以上格付け/42酒蔵(関東最多) |

なぜ茨城にご当地グルメが根付いたのか―歴史と背景
茨城のご当地グルメの多くには、単なる名産品を超えた歴史的なエピソードがある。ここでは代表的な由来を確認する。
水戸納豆、1083年の言い伝えと明治22年の水戸駅開業
前述の通り、水戸納豆の起源は源義家にまつわる言い伝えにさかのぼる。ただし全国的なブランドとして定着したのは、明治22年(1889年)の水戸駅開業とほぼ同時期に、駅前広場で売り出されたことがきっかけとされる(観光いばらき公式)。鉄道という新しい流通網が、地域の発酵食品を全国区の名物へと押し上げた事例といえる。
スタミナラーメンはひたちなか発祥のソウルフード
ひたちなか市は「ひたちなか市民のソウルフード『スタミナラーメン』」として市の公式サイトでも紹介するほど、地元での愛着が強い(ひたちなか市)。観光客向けというよりも、まず地元の生活に根ざした食であることが、他の観光グルメとの違いとして挙げられる。
農林水産省「うちの郷土料理」に選ばれた品目
農林水産省は「うちの郷土料理~次世代に伝えたい大切な味~」として、各都道府県の郷土料理をデータベース化している。茨城県からは、五目いなりずし(笠間いなりずし)、干しいも、がりがりなます、赤餅などが選定・掲載されている(農林水産省)。国の機関が公式に記録を残すほど、茨城の郷土食は次世代への継承が意識される対象になっている。
道の駅が果たす地産地消の役割
県内に点在する道の駅は、地元の農産物や郷土料理を訪れる人に直接届ける拠点になっている。道の駅ごとの品ぞろえや地域の特色については、姉妹記事「茨城県の道の駅16駅と地域の特色」で整理しているので、あわせて確認してほしい。
生活者にとって「食文化が強い街」が持つ意味
ご当地グルメは観光客向けの話題にとどまらない。実際にそこで暮らす人にとっても、いくつかの意味を持つ。
移住・定住先選びで「食」が決め手になる理由
移住や定住の検討では、通勤・教育・医療といった条件に加えて「日々の食事が満足できるか」という要素も無視できない。地元で長く愛される食文化があるエリアは、単身高齢世帯から子育て世帯まで幅広い層にとって、暮らしの満足度を支える要素になり得る。
直売所・道の駅が近い暮らしの利便性
農業産出額全国3位という生産基盤を持つ茨城県では、直売所や道の駅で新鮮な農産物・水産物を安く手に入れやすい。これは日々の家計にも直結する暮らしの利便性であり、住まい選びの隠れた判断材料になる。
食のまつり・イベントが地域コミュニティを支える
あんこう料理の食べ比べイベントや、地酒バーでの飲み比べなど、食を軸にした地域イベントは、住民同士や移住者と地元住民をつなぐ接点にもなっている。こうした催しの多さは、地域コミュニティの活力を測る一つの目安にもなる。
ご当地グルメの強さと住まい・不動産の関係
食文化そのものが不動産価格を直接押し上げるわけではない。ただし、実際に売却・相続・移住の相談を受ける中で見えてくる接点がいくつかある。
「食が強い街」は観光需要と定住需要の両方を持つ
あんこう鍋や常陸秋そばのように季節性の高いグルメを持つ地域は、観光目的の来訪者を継続的に呼び込みやすい。同時に、納豆やラーメンのような日常食としてのグルメは、そこに住む人の満足度を底上げする。観光需要と定住需要の両方を持つ地域は、空き家や店舗物件の活用先としても選択肢が広がりやすい。
空き家を活かした飲食店・古民家カフェという選択肢
使われなくなった実家や空き家を、地域の食材を活かした飲食店・カフェとして再生する動きは県内でも見られる。相続した家をそのまま空き家にしておくのではなく、地域の食文化と組み合わせた活用方法を検討する余地がある場合もある。老朽化が進み活用が難しい建物については、解体してから土地として売却・活用する方法もあり、その場合は「解体Do!」で費用の見積もりを取ることができる。
相続した実家が「食の名店」だったときに考えること
地元で長く親しまれてきた飲食店を相続するケースでは、営業を続けるか、売却するか、閉店して不動産として活用するかという複数の選択肢がある。判断には店舗としての収益性だけでなく、建物の状態や立地の将来性も関わるため、早い段階での相談が望ましい。
エリア選びに迷ったら、地元の食文化を見てみる
茨城県内で売却や住み替えを検討する際は、担当エリアの店舗にご相談いただきたい。つくば市周辺は「ハウスドゥ つくば研究学園都市」、水戸市周辺は「ハウスドゥ 水戸」、取手市・戸頭周辺は「ハウスドゥ 取手戸頭」、守谷市周辺は「ハウスドゥ 守谷」が、それぞれ地域に根ざしたご相談に対応している。
茨城県のご当地グルメに関するよくある質問
茨城県の代表的なご当地グルメは何ですか?
代表格は水戸納豆、あんこう鍋、スタミナラーメン、常陸秋そばの4つです。観光いばらき公式ホームページでも「いばらきの定番グルメ」として紹介されています。
あんこう鍋はいつ食べられますか?
例年11月頃から3月頃までの冬季に、県内各地の飲食店で提供されます。「あんこうの共酢」「どぶ汁」など食べ方も多様です。
スタミナラーメンはどこが発祥ですか?
ひたちなか市が発祥とされ、地元では市民のソウルフードとして紹介されています。レバー・カボチャ・ニラ・キャベツなどを甘辛い餡に仕立て、麺にかける「ホット」と「冷やし」の2種類があります。
水戸納豆の歴史はどのくらい古いですか?
伝承によると平安時代後期の永保3年(1083年)、源義家が水戸市渡里町に泊まった際に偶然できたのが始まりとされています。全国的に有名になったのは明治22年(1889年)の水戸駅開業がきっかけです。
農林水産省の「うちの郷土料理」に茨城県から選ばれているものは?
五目いなりずし(笠間いなりずし)、干しいも、がりがりなます、赤餅などが選定・データベース化されています。
ご当地グルメが強い地域は不動産選びにも関係しますか?
直接的な資産価値の指標ではありませんが、食文化が根づいた街は観光・定住の両方から人を惹きつけやすく、空き家を飲食店に転用する動きも見られます。エリアの暮らしやすさを知る手がかりの一つになります。
まとめ|茨城の「食」を知ることは、茨城の暮らしを知ること
あんこう鍋、水戸納豆、スタミナラーメン、常陸秋そば――茨城県のご当地グルメは、それぞれの地域の農業・漁業・歴史が形にしたものだ。観光で一度食べて終わるものもあれば、そこに住む人が毎日のように口にする日常食もある。売却・相続・移住といった不動産の相談を受ける中でも、地域の食文化を知ることは、そのエリアの暮らしぶりを理解する手がかりになる。
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