「茨城県の空き家」というと、多くの人は放置された廃屋を思い浮かべるかもしれません。しかし実際には、空き家の多くに「所有者」がいます。誰が、どのような経緯でその家を所有し続けているのか。この記事では、国土交通省が令和7年8月に公表した最新の全国調査データと茨城県公式の統計を突き合わせ、茨城県内の空き家所有者の実像を一次情報にもとづいて整理します。
結論を先に言うと、空き家の所有者の多くは「相続」によってその家を持つことになった人たちであり、約8割は相続前に何の対策も取らないまま所有者になっています。そして対策の有無が、その後の空き家の運命を大きく左右しています。
茨城県の空き家の全体像|14.1%・9.3万戸の内訳
総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、茨城県内の総住宅数約139万900戸のうち、空き家は19万6,200戸。空き家率は14.1%で、全国平均13.8%をわずかに上回ります。前回調査(平成30年)との比較では0.7ポイント低下していますが、これは分譲・賃貸市場の空き家(売却用・賃貸用)が減少した結果であり、後述する「所有者の管理が及びにくい空き家」は増加傾向にある点に注意が必要です。
住宅・土地統計調査では空き家を4種類に分類しています。
- 二次的住宅:別荘や一時的に寝泊まりする住宅
- 賃貸用の空き家:入居者を募集中の賃貸住宅
- 売却用の空き家:売りに出されている住宅
- その他の空き家:上記いずれにも該当しない、使用目的が定まっていない空き家(管理が行き届きにくいのはこの区分)
このうち「その他の空き家」は、茨城県内でこの10年で約1.4倍(6.7万戸→9.3万戸)に増加しました(全国は約1.2倍)。全国よりも増加ペースが速いという点が、茨城県の空き家問題の特徴の一つです。この「その他の空き家」の所有者像を明らかにするのが、次章で紹介する国の実態調査です。
空き家所有者の実像|国交省「令和6年空き家所有者実態調査」から
国土交通省は、空き家を所有する世帯を対象に「空き家所有者実態調査」を昭和55年から概ね5年ごとに実施しています。最新の令和6年調査は、総務省「令和5年住宅・土地統計調査」で空き家所有を回答した世帯の中から全国約1万3千世帯を抽出したもので、令和7年8月29日に結果が公表されました。この調査は都道府県別の内訳までは公表されていない全国集計ですが、茨城県内の空き家所有者の傾向を推し量るうえで最も新しく信頼できる一次情報です。
取得経緯|約6割が「相続」
空き家をどのように取得したかを見ると、最も多いのは「相続」で57.9%。次いで「新築・建て替え」17.1%、「既存住宅を購入」14.2%、「新築住宅を購入」4.6%、「贈与」2.3%と続きます。つまり空き家所有者の半数以上は、自ら望んで住宅を取得したのではなく、親などから受け継いだことで結果的に空き家の所有者になっています。

発生原因|約6割が所有者の「死亡」を契機に空き家化
相続空き家に絞って発生原因を見ると、「死亡」を契機に空き家となったケースが58.3%と最多。「転居」26.9%、「老人ホームなどの施設への入居」11.3%と続きます。つまり相続空き家の多くは、被相続人が亡くなったその日から空き家としての時間を刻み始めます。相続人が「相続が発生したことに気づいていない」「気づいていても何から手をつければよいか分からない」まま数か月、数年が経過するケースが少なくありません。
築年数|相続空き家の7割超が1980年以前の建築
相続空き家の建築時期は「1951~1970年」26.4%、「1971~1980年」26.4%、「1950年以前」20.4%で、合計すると7割超が1980年以前に建てられた住宅です。1981年は新耐震基準の施行年(同年6月1日以降の建築確認)であり、相続空き家の多くが旧耐震基準の建物である可能性が高いことを示しています。旧耐震の住宅は住宅ローンの利用条件や売却のしやすさに影響するため、売却を検討する際は建築時期の確認が最初のステップになります。
建物の状態についても、「室内外に部分的な腐朽・破損あり」が47.1%と半数近くを占め、「構造上の不具合あり」21.2%、「室内外に全体的な腐朽・破損あり」3.5%を合わせると、7割超の相続空き家に何らかの腐朽・破損が確認されています。相続時点で「そのまま住める状態」の空き家はむしろ少数派だということです。
相続前に対策した人は2割超|対策の有無が「その後」を分ける
相続空き家について、相続が発生する前に何らかの対策を実施していた世帯は23.0%にとどまり、77.0%は無対策のまま相続を迎えています。対策の内容としては「被相続人との話し合い」16.7%が最多で、「遺言の作成支援」1.8%、「後見制度や家族信託の活用」1.3%と続きます。
この「対策の有無」は、相続後の空き家の運命に明確な差を生んでいます。相続前に対策をしていなかった世帯では、相続後に「空き家のまま所有」している割合が45.1%。一方、対策をしていた世帯では29.4%にとどまり、その差は約1.5倍です。生前に家族で話し合っておくかどうかが、相続後に空き家が動くか動かないかを左右しているのです。

今後の利用意向|「空き家として持ち続けたい」は本当に少数派か
「使用目的のない空き家」(賃貸・売却・二次的住宅のいずれにも該当しない空き家)の所有世帯に、今後の利用意向を尋ねた結果は次のとおりです。
- 空き家として所有しておく(物置含む):40.6%
- 除却する:19.2%
- 売却する:18.3%
「所有し続ける」が4割で最多である一方、「除却する」「売却する」を合わせると37.5%、およそ4割弱が空き家を動かす意向を持っています。つまり「空き家所有者は何もしたくない人ばかり」ではなく、実際にはすでに約4割が売却・除却という決断に近いところにいます。ただし意向はあっても実行に移せていない世帯が多いのが実情で、直近1年間で実際に空き家が解消された割合(現在は空き家でなくなった割合)は14.8%にとどまります。「動きたいのに動けていない」というギャップこそが、空き家所有者の実像の核心部分です。
なぜ「動きたいのに動けない」のか
本調査は所有者が動けない理由そのものを数値化してはいませんが、他の項目と突き合わせると背景が見えてきます。相続空き家の7割超が1980年以前建築で腐朽・破損もあること、相続人が複数いる場合は遺産分割協議が必要なこと、相続登記が義務化されたとはいえ手続きの負担は残ること――これらが複合的に「動きたいが最初の一歩が分からない」状態を作り出していると考えられます。
茨城県の空き家所有者を取り巻く地域特性
全国調査の傾向を茨城県の状況と重ねると、いくつかの構造的な要因が見えてきます。
- 高齢化率31.2%(令和7年10月1日現在・全国29.4%)で、被相続人となる高齢世代の人口比率が全国より高い(茨城県の高齢化率|44市町村の地域差で詳述)
- 単身高齢世帯が10年で25.4%増加しており、「一人で家を持ち続ける高齢者」が今後の空き家予備軍として増えていく
- 県北地域は高齢化率38.4%と県内最高水準で、旧耐震基準の住宅が集中している可能性が高い
- 1住宅あたりの敷地面積が全国トップクラスに広く、建物だけでなく庭木の管理や境界確認など、所有者の負担が都市部より重くなりやすい
被相続人数(死亡者数)の推移や相続税申告の状況については、茨城県の相続不動産の傾向|死亡者数と登記義務化を解説で一次情報とともに詳しく解説しています。
住まい・不動産への接点|所有者が「動く」ための最初の一歩
ここまで見てきたデータが示すのは、空き家所有者の多くが「望んで所有者になったわけではなく」「対策が後手に回りやすく」「動きたい意向はあっても実行に移せていない」という実像です。ここから先は、実際に「動く」ための選択肢を整理します。
選択肢1:相続登記を済ませる(義務化への対応)
2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記をしないと10万円以下の過料の対象になり得ます。茨城県内の管轄法務局・支局・出張所の一覧は相続登記義務化と茨城県の法務局窓口で確認できます。
選択肢2:空き家のまま所有し続ける前に、放置のリスクを知る
「所有しておく」を選ぶこと自体は個人の判断ですが、特定空家に指定されると固定資産税の住宅用地特例が外れ、税負担が増える可能性があります。詳しい仕組みは空き家3年放置で罰金100万円は本当?で正確に解説しています。
選択肢3:空き家バンクへの登録を検討する
移住・二地域居住のニーズに応える形で活用したい場合は、市町村運営の空き家バンクという選択肢もあります。登録の流れや買取との違いは茨城県の空き家バンク|登録の流れと買取との違いで解説しています。ただし、先に不動産会社と専任媒介契約を結ぶと登録できなくなる市町村が多いため、順番の確認が必要です。
選択肢4:売却を検討する(腐朽・破損があっても対象になる)
相続空き家の7割超に何らかの腐朽・破損があるという実態調査の結果を踏まえると、「傷んでいるから売れない」と考えて所有し続けている方も多いと推測されます。しかし、老朽化した建物でも買取という選択肢があり、残置物や修繕をそのままにした状態での相談が可能です。茨城県内では、つくば・水戸・取手戸頭・守谷の4店舗が対応エリアを分担しています。
お住まいの地域に応じて、以下の店舗サイトもご参照ください。
- つくば市・県南エリア:ハウスドゥ つくば研究学園都市
- 水戸市・県央エリア:ハウスドゥ 県庁水戸
- 取手市・戸頭エリア:ハウスドゥ 取手戸頭
- 守谷市・つくばみらい市エリア:ハウスドゥ 守谷
店舗が近くにない、またはどの店舗が担当か分からない場合は、housedo.group(当グループ)の無料相談窓口からもお問い合わせいただけます。
よくあるご質問
Q. 空き家所有者の実態調査は茨城県単独のデータですか?
A. いいえ。本記事で紹介した「取得経緯」「相続前対策の有無」「今後の利用意向」などの数値は、国土交通省が令和7年8月に公表した全国調査(令和6年空き家所有者実態調査)の結果です。都道府県別の内訳は公表されていないため、茨城県単独の数値ではありません。一方、空き家率14.1%・空き家戸数19万6,200戸などは茨城県公式(総務省統計に基づく)の数値です。本記事では両者を区別して記載しています。
Q. 相続した空き家を「とりあえずそのまま」にしておくとどうなりますか?
A. 相続登記が未了のままだと2024年4月以降は義務化の対象となり、正当な理由なく3年以内に登記しないと10万円以下の過料の可能性があります。また建物の腐朽・破損が進み、自治体から「特定空家」に指定されると固定資産税の軽減が受けられなくなるおそれもあります。詳しくは関連記事でご確認ください。
Q. 空き家所有者の平均的な年齢層はわかりますか?
A. 令和6年空き家所有者実態調査では所有世帯の家計を主に支える者の年齢区分別データも収集されていますが、令和7年8月時点で公表された「結果のポイント」には年齢別の詳細数値は含まれていません。より詳細な年齢層データはe-Stat(政府統計の総合窓口)の統計表で確認できる可能性があるため、正確な年齢区分をお知りになりたい場合はe-Statの統計表を直接ご確認ください。本記事では未公表の数値を推測で記載していません。
Q. 相続前に対策をするなら、何から始めればよいですか?
A. 実態調査で最も多かった対策は「被相続人との話し合い」(16.7%)でした。特別な手続きより先に、家族間で「その家をどうしたいか」を話し合っておくことが、相続後に空き家として塩漬けになる確率を下げる最も基本的な一歩です。次いで遺言の作成支援や家族信託の活用も選択肢になります。
Q. 空き家のまま所有しておくのは悪いことですか?
A. 一概に悪いとは言えません。実態調査でも「空き家として所有しておく」を選ぶ世帯が4割で最多です。ただし、管理を怠り「特定空家」に指定されると税負担が増えるリスクがあるため、「所有し続ける」を選ぶ場合も最低限の管理(通風・通水・草刈りなど)は必要です。
Q. 空き家を売却するかどうか、誰に相談すればよいですか?
A. 茨城県内であれば、お住まいのエリアを担当するハウスドゥの店舗(つくば・水戸・取手戸頭・守谷)にご相談いただけます。どの店舗が担当か分からない場合は、housedo.groupの無料相談窓口からもお問い合わせいただけます。
まとめ
茨城県の空き家所有者の実像は、「望んで所有者になったわけではない人が半数以上」「相続前に対策していた人は2割程度」「動きたい意向はあっても実際に動けたのは1割台」という姿でした。空き家問題は所有者の怠慢ではなく、相続という予測しづらいタイミングと、そこから先の情報不足・手続きの負担が重なって生まれています。まずは相続登記の状況を確認し、家族と話し合うところから始めることが、空き家を「所有し続けるだけ」の状態から抜け出す第一歩になります。
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