「上野から水戸まで特急でおよそ1時間」——この距離感を体で知っている人は、茨城県にとても多いはずです。JR常磐線は、水戸市・日立市・ひたちなか市といった県北・県央の主要都市から、取手市・龍ケ崎市・牛久市など県南のベッドタウンまでを一本で貫き、東京都心と茨城県を結んできた「伝統的な大動脈」です。つくばエクスプレス(TX)が2005年開業のいわば新参者だとすれば、常磐線は明治時代から続く茨城の背骨といえる存在です。
ただし、同じ「常磐線沿線」という言葉でくくっても、県南の取手市・龍ケ崎市・牛久市エリアと、県央の水戸市・ひたちなか市エリア、県北の日立市・高萩市エリアとでは、人口動態も地価の動きもまったく違う顔を見せています。本記事では、令和7年国勢調査人口速報集計結果(茨城県統計課)や国土交通省の地価公示など一次データをもとに、常磐線沿線を貫く3つのエリアの実像を整理し、住まい・不動産にどうつながるかを県全域の視点で解説します。
茨城県を南北に貫く常磐線という背骨
JR常磐線は東京都の日暮里駅を起点に、千葉県北西部を経て茨城県に入り、取手市・牛久市・土浦市・石岡市・水戸市・日立市などを通り、福島県いわき市方面から宮城県仙台市まで至る長距離路線です。茨城県内の区間だけを見ても、取手駅付近から大津港駅付近までおよそ113km、駅数にして28駅前後(JR東日本・各種公表資料をもとにした目安)と、県内では最も営業キロが長い鉄道路線です。
この距離の長さこそが常磐線の特徴でもあります。同じ「常磐線沿線」でも、東京に近い取手市と、福島県境に近い北茨城市とでは都心までの距離が全く異なり、住宅地としての性格も大きく変わってきます。本記事ではこの路線を大きく3つのエリア(県南・県央・県北)に分けて見ていきます。
常磐線沿線の3エリア区分
- 県南エリア:取手市・龍ケ崎市・牛久市・土浦市・石岡市など(東京都心までおおむね40〜60km圏)
- 県央エリア:水戸市・ひたちなか市など(茨城県の行政・商業の中心)
- 県北エリア:日立市・高萩市・北茨城市など(工業都市・福島県境に近い)
茨城県統計課は県内44市町村を「県北」「県央」「鹿行」「県南」「県西」の5地域に分類して人口統計を公表しています。常磐線はこのうち県南・県央・県北の3地域を縦断する形で走っており、路線に沿ってエリアの人口動態を追うことで、県内の地域差がくっきりと見えてきます。
データで見る常磐線沿線3エリアの人口動態
茨城県統計課「令和7年国勢調査人口速報集計結果」(令和7年10月1日現在)によると、令和2年から令和7年にかけての5年間で、常磐線が通る3エリアの人口はそれぞれ次のように動きました。

| エリア | 令和7年人口 | 令和2年比 | 主な常磐線沿線市 |
|---|---|---|---|
| 県南地域 | 1,019,231人 | +12,700人 | 取手市・龍ケ崎市・牛久市・土浦市・石岡市 |
| 県央地域 | 685,352人 | △20,563人 | 水戸市・ひたちなか市 |
| 県北地域 | 315,481人 | △32,132人 | 日立市・高萩市・北茨城市 |
出典:茨城県統計課「令和7年国勢調査人口速報集計結果」(表2等)。県南地域は5地域の中で唯一、令和2年から令和7年にかけて人口が増加した地域です。一方、日立市を含む県北地域は3エリアの中で最も人口減少幅(率)が大きく、同じ常磐線沿線でも南と北で明暗が分かれています。
日立市は減少数で県内ワースト1位
茨城県統計課の同資料による市町村別の人口減少数ランキングでは、日立市が令和2年比マイナス15,745人で県内44市町村中最大の減少数となっています。次いで筑西市(マイナス5,915人)、石岡市(マイナス5,645人)、水戸市(マイナス4,912人)、ひたちなか市(マイナス4,860人)と続き、常磐線・水戸線沿線の主要都市が上位に複数含まれています。
日立市はかつて日立製作所の企業城下町として発展した歴史を持つ工業都市で、令和7年時点の人口は158,763人(茨城県統計課調べ)と依然として県内3位の規模を持ちますが、5年間で1万5千人超の減少という数字は、常磐線沿線の中でも県北エリアが直面する構造的な課題を象徴しています。
県南エリアは常磐線とTXの二重の恩恵
一方、県南エリアの取手市・牛久市・龍ケ崎市は、常磐線の存在に加えて、つくばエクスプレス沿線(つくば市・守谷市・つくばみらい市)が近接していることも人口の下支えになっています。取手駅は常磐線と関東鉄道常総線の結節点でもあり、都心へのアクセスと沿線内の移動しやすさを両立しているエリアです。
データで見る常磐線沿線の公示地価
国土交通省「地価公示」(2026年1月1日時点、住宅地)を集計したtochidai.info等の公表データによると、茨城県44市町村の公示地価ランキングにおいて、常磐線沿線の主要市は次のような順位・水準にあります。

| 県内順位 | 市町村 | 公示地価(m²単価) | 変動率 |
|---|---|---|---|
| 4位 | 水戸市 | 53,010円 | +0.25% |
| 5位 | 取手市 | 49,196円 | +0.98% |
| 6位 | 牛久市 | 49,122円 | +1.77% |
| 8位 | 日立市 | 37,398円 | △0.22% |
| 10位 | 龍ケ崎市 | 34,042円 | +2.23% |
| 11位 | 土浦市 | 33,797円 | +0.78% |
| 12位 | ひたちなか市 | 33,258円 | +0.34% |
出典:国土交通省地価公示(2026年1月1日時点)をもとにした集計値。県全体では44市町村中1位の守谷市(約15万2,130円/m²、TX沿線)が突出していますが、常磐線沿線に限ってみると、水戸市が県内4位で沿線トップ、取手市・牛久市が僅差で続く構図です。地価変動率で見ると、日立市のみがマイナス(△0.22%)で、他の常磐線沿線主要市はいずれも小幅ながらプラスとなっています。
県南は僅かながら上昇、県北は横ばい〜微減
茨城県全体の公示地価(住宅地)は2026年時点で3年連続の上昇となっていますが、その上昇を牽引しているのは守谷市・つくば市などTX沿線が中心です。常磐線沿線の中では、取手市・牛久市・龍ケ崎市など県南エリアがTX沿線の勢いの波及を受けてプラス圏を維持している一方、日立市など県北エリアは横ばいからわずかなマイナスにとどまっています。
通勤・通学アクセスから見る常磐線沿線の暮らし
常磐線には普通列車のほか、特別快速、そして特急「ひたち」「ときわ」が走っています。JR東日本の公表資料等によると、特急を利用した場合、土浦駅から上野駅まではおよそ45分前後、水戸駅からは上野駅まで特急でおよそ1時間強が目安です(列車種別・時間帯により変動するため、詳細は各時刻表で確認が必要です)。すべての「ひたち」「ときわ」が停車する主要駅は水戸駅・勝田駅・日立駅などで、水戸市・ひたちなか市・日立市はいずれも特急停車駅を持つという共通点があります。
取手駅は県南の交通結節点
取手駅はJR常磐線に加え、関東鉄道常総線の起点でもあり、県西エリア(下妻市・筑西市方面)と都心とを結ぶ乗り換え拠点になっています。取手市・龍ケ崎市エリアの住民にとっては、常磐線1本で都心に出られる利便性と、県西方面へのアクセスを両立できる立地です。
普通列車エリアと特別快速・特急エリアの違い
取手駅より東京寄りの区間はJR東日本の運賃・運行体系上「東京近郊区間」に含まれ、普通列車の運行本数が多く日常利用がしやすいのに対し、取手駅以北は普通列車の本数がやや少なくなり、特急や特別快速の存在感が増します。この「取手」という駅が、通勤スタイルの一つの境目になっているのが常磐線の特徴です。
生活者視点で見る常磐線沿線の意味
常磐線沿線に住むという選択は、単に「都心に通える」という以上の意味を持ちます。水戸市・日立市エリアは県内有数の商業集積・医療機関が揃うエリアであり、通勤よりも県内での生活利便性を重視する層にとって魅力的です。一方、取手市・牛久市・龍ケ崎市エリアは都心への通勤利便性と、TX沿線に比べて抑えられた地価水準という組み合わせから、子育て世帯のマイホーム取得先として選ばれやすい傾向があります。
つまり同じ「常磐線沿線」でも、県央エリアは「県内で完結する暮らしの拠点」として、県南エリアは「都心通勤とコストのバランス」として、それぞれ異なる価値を提供しているのです。
県北エリアは工業都市としての性格が強い
日立市・高萩市・北茨城市を中心とする県北エリアは、日立製作所関連の事業所をはじめとする製造業の集積地としての性格が強く、都心通勤よりも地元雇用に軸足を置く暮らし方が中心です。人口減少幅が大きい背景には、若年層の県外・県内他地域への流出という構造的な課題があると考えられます(茨城県統計課の公表資料でも、県北地域は5地域中最大の減少幅であることが示されています)。
常磐線沿線と住まい・不動産への接点
常磐線沿線の人口・地価データは、そのまま不動産売却・購入を考える際の判断材料になります。ポイントを整理すると次の3点です。
- 県南エリア(取手・龍ケ崎・牛久):人口が増加基調にあり、公示地価も緩やかな上昇傾向。売却を検討する場合は市場が比較的堅調なタイミングといえます。
- 県央エリア(水戸・ひたちなか):人口は減少傾向にあるものの、地価は小幅ながらプラスを維持。県内商業・生活拠点としての需要が下支えしています。
- 県北エリア(日立など):人口減少幅が大きく地価も横ばい〜微減。早めの情報収集・査定が将来の選択肢を広げます。
いずれのエリアでも共通するのは、「エリアの人口・地価トレンドを知ったうえで、いま自分の不動産がどのくらいの価値になるのかを把握しておく」ことの重要性です。特に相続や住み替えを検討している場合、常磐線沿線という交通条件は買主にとっても重要な判断材料になるため、査定時に正しく評価してもらう必要があります。
ハウスドゥでは、茨城県内でつくば市・水戸市・取手市・守谷市の4店舗を展開しており、常磐線沿線を含む茨城県全域の不動産売却・買取のご相談を承っています。エリアごとの相場や動向を踏まえた無料査定については、以下の窓口からお気軽にご相談ください。
常磐線沿線に関するよくある質問
Q1. 茨城県内の常磐線区間はどこからどこまでですか?
A. JR東日本および各種公表資料をもとにした目安では、取手駅付近から大津港駅付近までの区間が茨城県内の常磐線に当たり、営業キロはおよそ113km、駅数は28駅前後です。県内では最も営業キロの長い鉄道路線です。
Q2. 常磐線沿線でもっとも人口が減っている市はどこですか?
A. 茨城県統計課「令和7年国勢調査人口速報集計結果」によると、減少数で見ると日立市が令和2年比マイナス15,745人で県内44市町村中最大です。減少率では県北・鹿行・県西の中山間部の町村が上位に多く並びます。
Q3. 常磐線沿線で地価が上昇しているのはどのエリアですか?
A. 国土交通省地価公示(2026年1月1日時点)によると、常磐線沿線の主要市はいずれも小幅ながら上昇傾向で、特に龍ケ崎市(+2.23%)、牛久市(+1.77%)など県南エリアの上昇率が目立ちます。日立市のみわずかにマイナス(△0.22%)です。
Q4. 常磐線とつくばエクスプレス(TX)、どちらの沿線が地価上昇率は高いですか?
A. 茨城県44市町村公示地価ランキングでは、TX沿線の守谷市(+10.46%)・つくば市(+5.62%)が突出した上昇率を示しており、常磐線沿線の上昇率(水戸市+0.25%、取手市+0.98%など)はそれに比べると緩やかです。ただし常磐線沿線でも県南エリアはTX沿線に近い立地特性を持つ市があり、波及効果を受けています。
Q5. 特急ひたち・ときわを使うと東京都心までどのくらいかかりますか?
A. JR東日本の公表資料等をもとにした目安では、土浦駅から上野駅までおよそ45分前後、水戸駅から上野駅まで特急でおよそ1時間強とされています。列車種別・時間帯・停車駅により変動するため、正確な所要時間は最新の時刻表でご確認ください。
Q6. 常磐線沿線の不動産は売却しやすいですか?
A. エリアによって傾向が異なります。人口が増加基調にあり地価も上昇している県南エリア(取手市・龍ケ崎市・牛久市など)は市場が比較的堅調です。人口減少幅の大きい県北エリアでは、早めに査定を受けて市場動向を把握しておくことがより重要になります。いずれのエリアも一律に判断できるものではなく、個別の立地・物件条件によって変わるため、無料査定でのご相談をおすすめします。
関東鉄道常総線・竜ヶ崎線との接続
常磐線の取手駅・佐貫駅(龍ケ崎市)はそれぞれ関東鉄道の路線と接続しています。取手駅は常総線(取手~下館、約51.1km・25駅)の起点であり、佐貫駅は龍ケ崎市中心部へ向かう竜ヶ崎線の起点です。こうしたローカル私鉄との接続網も、常磐線沿線の県南エリアが持つ交通利便性の一部を構成しています。
常磐線と沿線都市の成り立ち
常磐線は明治29年(1896年)に日本鉄道の路線として開業した歴史ある路線で、当初から沿岸部の炭鉱・工業地帯と東京とを結ぶ物流の大動脈として発展してきました。日立市周辺はかつて常陸国と呼ばれた鉱工業地帯であり、日立製作所の企業城下町として発展した経緯が、現在の産業構造・人口構成にも影響を残しています。
県南エリアは高度経済成長期のベッドタウン化が起点
取手市・牛久市・龍ケ崎市などの県南エリアは、高度経済成長期以降、常磐線を使った東京都心への通勤圏として宅地開発が進み、ベッドタウンとしての性格を強めてきました。令和7年国勢調査でも県南地域が5地域中唯一の人口増加地域となっている背景には、こうした沿線開発の歴史的な積み重ねがあります。
常磐線沿線の今後の見通し
今後の見通しとして注目されるのが、常磐線特急のダイヤ改正や品川駅発着化などの利便性向上策です。JR東日本は2025年3月のダイヤ改正で常磐線特急を全て品川駅発着とするなど、都心側のアクセス改善を進めています。こうした施策は、特に県南・県央エリアの通勤利便性にプラスに働くと考えられますが、県北エリアの構造的な人口減少をどこまで緩和できるかは今後のデータで見ていく必要があります。
茨城県としても、常磐線沿線と圏央道・常磐自動車道といった道路網を組み合わせた立地優位性の発信を続けており、住宅需要の観点からは「鉄道か道路か」ではなく、両方にアクセスできるエリアの価値が相対的に高まっていく可能性があります。
まとめ|同じ「常磐線沿線」でも南北で表情が違う
JR常磐線は茨城県を南北に貫く伝統的な大動脈ですが、そのデータを丁寧に見ていくと、県南エリア(取手・龍ケ崎・牛久など)は人口増加・地価上昇という追い風を受け、県央エリア(水戸・ひたちなか)は県内生活拠点としての底堅さを保ち、県北エリア(日立など)は人口減少という構造的な課題に直面しているという、3つの異なる顔が見えてきます。
不動産の売却・購入・相続を検討する際は、こうした沿線ごとの実データを踏まえたうえで、エリアの現状を正しく理解することが大切です。ハウスドゥグループでは茨城県内4店舗のネットワークを生かし、常磐線沿線を含む県内全域の物件について、地域特性を踏まえた無料査定をご案内しています。まずはお気軽にご相談ください。
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