結論:日影規制とは、高い建物が周囲に落とす影の時間を一定以内に抑えるための、建築基準法などにもとづくルールです。冬至日(1年で最も日が短い日)の午前8時から午後4時までの間に、敷地境界線から一定の範囲へ日影が生じる時間の上限が決められています。土地や家の売却では、隣地に建つ建物の影響や、建て替え時の規模の制限に関わるため、事前に知っておくと買主への説明がスムーズになります。この記事では、日影規制の読み方から対象の用途地域、測定時間、日影図の見方、売却への影響まで、わかりやすく解説します。
日影規制とは?基本をわかりやすく解説
日影規制の読み方と意味
日影規制は「にちえいきせい」と読みます。中高層の建物によって、近隣の敷地に長時間影が落ちてしまうと、日当たりが悪くなり住環境が損なわれます。そこで、建築基準法第56条の2にもとづき、建物が隣地に落とす影の時間に上限を設けているのです。
日影規制の目的
目的は、住宅地の日当たりを確保し、良好な住環境を守ることです。特に住居系の地域では、隣り合う住まい同士の暮らしやすさを守る仕組みとして機能しています。冬場でも各住戸で十分な日照時間を確保し、日当たりや風通しなどの住環境を保護することが、日影規制のねらいです。土地利用の面では、住宅が密集する地域ほど、この規制が暮らしやすさを左右します。
建築基準法のどこに書かれているか
日影規制は建築基準法第56条の2と別表第四に定められています。ただし、どの地域を対象とするか、何時間までの日影を許すかは、地方公共団体(都道府県・市町村)が条例で選んで決める仕組みです。そのため、同じ用途地域でも自治体によって内容が異なる場合があります。
日影規制の対象になる用途地域と建物
規制の対象になる用途地域
日影規制の対象になり得るのは、第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、準工業地域です。一方、商業地域・工業地域・工業専用地域は、原則として規制の対象外とされています。商業や業務の利便を優先する地域では、住居系の地域ほど日当たりの確保を重視しない考え方によるものです。用途地域そのものの意味を知りたい方は、用途地域とは?13種類の一覧と調べ方もあわせてご覧ください。
対象になる建物の高さ
低層住居専用地域では「軒の高さが7mを超える建物、または地上3階建て以上の建物」が対象です。そのほかの地域では、「高さ10mを超える建物」が対象になります。下の早見表を参考にしてください。

用途地域ごとの規制対象・測定面の高さ(一覧表)
日影規制は、用途地域によって対象になる建築物と測定面の高さが異なります。第一種低層住居専用地域をはじめ、地域ごとの違いを表にまとめました。ここでいう「高さ」は建築物の地盤面からの高さ、「階数」は地階を除いた階数を指します。
| 用途地域 | 対象になる建築物 | 測定面の高さ |
|---|---|---|
| 第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域 | 軒の高さが7mを超える建築物、または地階を除く階数が3以上の建築物 | 1.5m |
| 第一種・第二種中高層住居専用地域 | 高さが10mを超える建築物 | 4mまたは6.5m |
| 第一種・第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、準工業地域 | 高さが10mを超える建築物 | 4mまたは6.5m |
| 商業地域・工業地域・工業専用地域 | 原則として規制の対象外(周辺の規制区域に影を落とす高い建築物は対象になることがある) | - |
測定面の高さや日影の時間の上限は、自治体の条例で選ばれるため、同じ用途地域でもエリアによって違いが出ます。地階(地下部分)は階数に数えないため、「地上3階建て以上」というのは、地階を除いた階数で判断すると覚えておくと便利です。
規制区域の外の建物でも対象になることがある
商業地域など規制の対象外の場所に建つ高い建物でも、その影が規制の対象区域に落ちる場合には、日影規制の対象になることがあります。「うちは商業地域だから関係ない」と決めつけず、周辺の状況も確認することが大切です。
日影規制のしくみ:測定時間・測定面・規制時間
測定する時間帯は冬至日の午前8時〜午後4時
日影は、1年で影が最も長くなる冬至日を基準に測ります。測る時間帯は、一般に午前8時から午後4時までです(北海道は午前9時から午後3時まで)。最も条件が厳しい日を基準にすることで、年間を通じて日当たりを守る考え方です。
測定面の高さ(平均地盤面からの高さ)
影を測る高さは、低層住居専用地域で地面から1.5m、そのほかの地域で4mまたは6.5mと定められています。どの高さを使うかは条例で決まります。
敷地境界線から5m・10mの範囲で許される時間が決まる
規制は、敷地境界線から5mを超え10m以内の範囲と、10mを超える範囲の2段階で設けられています。それぞれの範囲で、日影が生じてよい時間の上限が決まっており、たとえば「3時間・2時間」「4時間・2.5時間」「5時間・3時間」などの組み合わせから自治体が選びます。日影の時間の上限は、敷地境界線からの距離が近い範囲ほど厳しく、遠い範囲ほど緩やかに設定されており、規制時間以下に収まっているかどうかを日影図で確認します。各自治体の条例で選ばれる組み合わせが異なる点に注意しましょう。

緩和措置がある場合
敷地が道路・水面・線路敷などに接している場合や、隣地との高低差がある場合には、規制が緩和されるしくみもあります。個別の判断は専門家や自治体の窓口に確認してください。
日影規制が適用されないケース・除外されるケース
日影規制には、周囲の居住環境を害するおそれがないと特定行政庁が認めて許可した場合など、適用を除く例外があります。また、同じ敷地内に複数の建築物がある場合は、それらを1つの建築物とみなして日影を判断するのが基本です。適用の可否や緩和の内容は個別の条件によって変わるため、建築士や自治体の建築指導の窓口で確認するのが確実です。
日影図とは?見方と入手方法
日影図の種類
日影図には、時間ごとの影の形を示す「時刻日影図」と、影が同じ時間だけかかる範囲を線で結んだ「等時間日影図」があります。等時間日影図を使うと、敷地境界線から5m・10mのラインの外側で、何時間影が落ちるかを確認できます。
日影図が使われる場面
新築・建て替えの際に建築確認申請の書類として作成されます。日影図の読み方がわからない場合は、設計者や施工会社、不動産会社に確認しましょう。建築確認済証や検査済証との関係は、建築確認済証とは?検査済証との違いの記事で解説しています。
北側斜線制限・日照権との違い
北側斜線制限との違い
北側斜線制限は、北側の隣地の日当たりを守るために、建物の高さを斜めに制限するルールです。日影規制は「影の時間」で制限するのに対し、北側斜線は「建物の形」で制限する点が異なります。両方の制限を受ける地域もあります。
斜線制限(北側斜線・道路斜線・隣地斜線)との関係
建物の高さを斜めに制限する斜線制限には、北側斜線制限のほか、道路の採光や通風を確保するための道路斜線制限、隣地との間の空間を確保するための隣地斜線制限があります。日影規制は「影が落ちる時間」、斜線制限は「建物の形」で制限するという違いがあり、地域によっては複数の制限が重なって、建てられる建物の高さや階数が決まります。土地の売却では、これらをまとめて確認しておくと、買主への説明がスムーズです。
日照権との違い
日照権は、日当たりを守ろうとする民事上の考え方です。日影規制を守っていても、状況によっては近隣との話し合いが必要になる場合があります。
建ぺい率・容積率との違い
建ぺい率・容積率は建物の広さや延べ床面積の上限を決めるルールで、日影規制は影の落ち方を決めるルールです。建ぺい率をオーバーしている家の扱いは、建ぺい率オーバーの家は売却できる?で詳しく解説しています。
日影規制は土地・家の売却にどう影響する?
建て替え時の建物の大きさに影響する
日影規制の対象地域では、建てられる建物の高さや形が制限されます。土地を購入する人にとっては、「思っていたより高い建物や3階建てが建てられない」といった事態を避けるための大切な情報です。
隣地に高い建物が建つ可能性を確認する
売却する家の周辺で、日影規制の対象外の地域に高い建物が建つ可能性がないか、確認しておくと安心です。日当たりは買主が重視する点の一つなので、周辺の建築計画の有無を調べておくと説明に説得力が出ます。
売却前に調べておきたい3つのこと
- その土地の用途地域と、日影規制の対象区域かどうか
- 対象の場合の測定面の高さと、日影の時間の上限
- 建築確認済証・検査済証など、建築時の書類の有無
制度の詳細は自治体によって異なるため、市町村の建築指導や都市計画の担当窓口で確認するのが確実です。重要事項説明書での説明については、重要事項説明書とは?記載事項と読み方も参考になります。
売却時に整理しておきたい日影規制の確認リスト
- その土地の用途地域と、日影規制の対象区域かどうか
- 対象になる建築物の高さ・階数の基準(軒高7m超、地階を除く階数3以上、高さ10m超など)
- 測定面の高さと、5m・10mの範囲で許される日影の時間
- 周辺の土地で、将来高い建物が建つ可能性のある区域や環境
- 手元にある建築確認関係の書類・日影図の有無
これらを売却前に整理しておくと、建て替えを考える買主に対して、建てられる建物の規模の目安を説明しやすくなります。
日影規制がある土地でも売却できる
日影規制があること自体が、売却の妨げになるわけではありません。規制の内容を整理し、建てられる建物の目安とあわせて説明できれば、買主の不安を減らせます。土地の形が不整形などで悩んでいる場合は、不整形地の売却は難しい?も役立ちます。
日影規制を調べる方法:地図・検索・自治体窓口の活用
都市計画図・地図で用途地域と位置を確認する
まず、調べたい土地の位置を、自治体が公開している都市計画図や、インターネット上の地図で確認します。多くの自治体では、都市計画情報を地図形式で公開しており、用途地域や建ぺい率・容積率を調べられます。日影規制の区域が同じ地図に表示されている場合もありますが、表示されていない場合は条例や窓口で確認が必要です。
条例を検索して規制内容を確認する
日影規制の対象区域・測定面の高さ・日影の時間の上限は、自治体の条例(建築基準法施行条例など)で定められています。自治体名と「日影規制」で検索すると、条例や解説ページが見つかる場合があります。内容が改正されることもあるため、最新の情報は自治体の公式サイトや窓口で確認しましょう。
窓口で聞いておきたいこと
- 対象の土地が日影規制の適用区域かどうか
- 適用されるときの規制内容(時間の上限・測定面の高さ)
- 周辺の建築計画や、地区計画などほかの制限の有無
窓口相談のほか、不動産会社や建築士に相談すれば、土地の事情に合わせた確認ポイントを整理してもらえます。
日影規制を調べる5ステップ
- 不動産の所在地の用途地域を、市町村の都市計画図で確認する
- その地域が日影規制の対象区域かどうかを、条例や窓口で確認する
- 対象なら、測定面の高さ・日影の時間の上限を確認する
- 建築確認関係の書類や日影図が手元にないか探す
- 不明点は、不動産会社や自治体の窓口に相談する
売却する物件の相場や査定の流れを知りたい方は、不動産の査定とは?をご覧ください。
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日影規制についてよくある質問(FAQ)
Q. 日影規制とは何ですか?
日影規制(にちえいきせい)とは、建築基準法第56条の2などにもとづき、中高層の建物が周囲に落とす影の時間を一定以内に抑えるルールです。冬至日の午前8時から午後4時までの間に、敷地境界線から一定の範囲内で日影が生じる時間の上限が定められています。
Q. 日影規制の対象になる用途地域はどこですか?
主に住居系の地域(第一種・第二種低層住居専用地域、中高層住居専用地域、住居地域、準住居地域)と、近隣商業地域・準工業地域が対象になり得ます。商業地域・工業地域・工業専用地域は原則として対象外です。どの区域を対象にするかは、自治体が条例で指定します。
Q. 日影規制は一戸建てにも関係しますか?
低層住居専用地域では、軒の高さが7mを超える建物、または地上3階建て以上の建物が対象になります。一般的な2階建ての住宅は対象外になることが多いですが、3階建てにする場合や、中高層の建物が隣に建つ場合には関係してきます。
Q. 日影規制と日照権は同じものですか?
同じではありません。日影規制は建築基準法などで定められた「建築時のルール」で、日照権は民事上、日当たりを守ろうとする考え方です。日影規制を守っていても、状況によっては近隣との話し合いが必要になることがあります。
Q. 日影図はどこで確認できますか?
新築や建て替えの際に建築確認申請の書類として作成される図面で、建築主や設計者、施工会社が保管しています。売却する家の日影図が必要な場合は、購入時の書類や建築確認関係の書類を探すか、市町村の建築指導の窓口で確認できるものがないか相談してみてください。
Q. 日影規制で建て替えが制限される土地は売れにくいですか?
一概には言えません。規制の内容を正確に把握し、建てられる建物の大きさの目安とあわせて説明できれば、買主の不安を減らせます。売却前に、用途地域や規制の有無を市町村の窓口で確認しておくことをおすすめします。
Q. 日影規制の内容はどこで調べればよいですか?
対象区域や日影の時間の上限は、市町村や県の条例、都市計画図で確認できます。自治体の建築指導や都市計画の担当窓口、または不動産会社に相談すると調べやすくなります。
Q. 日影規制が適用されない建築物や土地はありますか?
商業地域・工業地域・工業専用地域は原則として対象外で、対象区域でも、対象になる高さ・階数に満たない建築物は規制を受けません。また、特定行政庁が許可した場合などには、適用が除かれるケースもあります。個別の判断は自治体の窓口や専門家に確認してください。
Q. 日影規制を地図や検索で調べるにはどうすればよいですか?
自治体の都市計画図やWeb地図で用途地域と土地の位置を確認し、自治体名と「日影規制」で条例を検索して規制の内容を確認します。表示されない情報や不明点は、自治体の建築指導・都市計画の窓口に問い合わせると確実です。
まとめ
日影規制は、冬至日の午前8時から午後4時までの日影の時間を制限し、住宅地の日当たりを守るルールです。対象となる用途地域や時間の上限は自治体の条例で決まるため、売却前にその土地の規制を確認しておくことが大切です。建物の書類や日影図がないか探し、不明点は窓口や不動産会社に相談しましょう。
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