「地上権とは何か、賃借権や借地権とどう違うのか分からない」「地上権付きの土地を相続したが売却できるのか不安」という方に向けて、結論から先にお伝えします。地上権とは、他人の土地に建物や工作物を所有するために土地を使用できる「物権」であり、賃借権(債権)よりも権利が強く、地主の承諾なしに譲渡・売却できるのが最大の特徴です。本記事では、民法265条に基づく定義から、賃借権・使用貸借権との違い、存続期間や地代、区分地上権・旧法地上権といった種類、そして地上権付き不動産を売却する具体的な流れまで、不動産のプロの視点でわかりやすく解説します。
地上権とは|結論と全体像
地上権とは、民法265条で「地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する」と定められた権利です。つまり、自分は土地を所有していなくても、その土地の上に建物や樹木などの工作物を持つ目的であれば、土地を使用できる権利ということです。
地上権の定義(民法265条)
地上権は「物権」に分類されます。物権とは、特定の物を直接支配できる権利のことで、所有権と同じグループに属します。これに対し、一般的な借地契約で使われる「賃借権」は、契約の相手方(地主)に対して土地を使わせるよう求める「債権」です。この物権と債権という法的性質の違いが、地上権のあらゆる特徴の出発点になります。
地上権のポイント3つ(先にまとめ)
詳しい解説に入る前に、地上権のポイントを3つにまとめます。
- 地上権は物権のため、地主の承諾なしに譲渡・転貸・売却ができる
- 地上権そのものに抵当権を設定できる(賃借権にはできない)
- 建物所有を目的とする地上権は借地借家法が適用され、存続期間は最低30年
地上権と賃借権の違い
不動産の場面で「地上権」と混同されやすいのが「賃借権」です。どちらも他人の土地を使用する権利ですが、法的な強さや実務上の扱いに大きな差があります。
権利の性質(物権と債権)
地上権は物権、賃借権は債権です。物権は「誰に対しても主張できる強い権利」であるのに対し、債権は「契約の相手方に対してのみ主張できる権利」という違いがあります。土地を借りて建物を建てる場合、実務上は賃借権(いわゆる普通借地権・定期借地権)で契約されるケースが圧倒的多数を占め、地上権が設定されるのは送電線や地下鉄など特殊なケースに限られる傾向があります。
譲渡・転貸の自由度
地上権は地主の承諾を得ることなく、第三者への譲渡・転貸・建て替えができます。一方、賃借権の場合は借地上の建物を売却(譲渡)する際や増改築の際に、原則として地主の承諾が必要です(承諾が得られない場合は裁判所の許可で代替する制度もあります)。
地上権自体に抵当権を設定できるか
地上権は独立した物権であるため、地上権そのものに抵当権を設定することが可能です。これに対し賃借権(債権)は土地部分への抵当権設定ができず、建物にのみ抵当権を設定する形になります。この違いは、地上権付き不動産を購入する際の資金調達のしやすさに直結する重要なポイントです。
登記の扱い
地上権は物権のため登記請求権があり、土地所有者は地上権の登記に協力する義務を負います(登記を拒否することはできません)。一方、賃借権(借地権)は登記が任意とされ、実務上は登記されないケースも多く見られます。ただし借地借家法上、土地の上に登記されている建物を所有していれば、土地に賃借権の登記がなくても第三者に対抗できるとされています。

地上権と借地権・使用貸借権の関係
「借地権」は地上権と賃借権の総称
不動産取引でよく使われる「借地権」という言葉は、法律用語としては「建物の所有を目的とする地上権および土地の賃借権」の総称です(借地借家法2条)。つまり借地権には「地上権タイプ」と「賃借権タイプ」の2種類があり、どちらに該当するかによって権利の強さが変わります。実務上、日本の借地契約の大半は賃借権タイプであり、地上権タイプの借地権は多くありません。
使用貸借権との違い(対価の有無)
使用貸借権は、対価(賃料)を支払わずに他人の物を使用収益できる権利です。地上権や賃借権が地代・賃料の支払いを前提とするのに対し、使用貸借は無償という点が根本的に異なります。親族間で土地を無償で貸し借りしているケースの多くはこの使用貸借にあたり、登記もできません。
地役権と地上権の違い
「地役権」も他人の土地を利用する権利ですが、地上権とは目的が異なります。地役権は、自分の土地の便益のために他人の土地を通行・引水などに利用する権利(民法280条)であり、土地そのものを排他的に使用する地上権とは性質が異なります。高圧線下の土地では、区分地上権ではなく「区分地上権に準ずる地役権」が設定されるケースもあり、評価方法もこれに準じて扱われます。
地上権の種類
ひとくちに地上権といっても、成立の経緯や目的によっていくつかの種類に分かれます。
普通地上権(建物所有目的)
建物を所有する目的で設定される最も一般的な地上権です。前述のとおり借地借家法の適用を受け、存続期間は最低30年となります。
旧法地上権(1992年以前に設定されたもの)
1992年(平成4年)8月1日に借地借家法が施行される以前は「借地法」が適用されていました。この旧借地法の時代に設定された地上権・賃借権は「旧法地上権」「旧法賃借権」と呼ばれ、現在も契約が続いているケースが少なくありません。旧法は借地人に手厚い保護を与えており、正当事由がない限り地主から契約更新を拒絶されない、堅固建物なら30年以上・非堅固建物なら20年以上の存続期間が確保されるなど、借地人に有利な内容になっています。そのため旧法地上権付きの物件は売却時に評価が割れやすく、住宅ローン審査でも金融機関の判断が分かれる傾向があります。賃借権タイプの旧法権利については「旧法賃借権とは|新法(借地借家法)との違いと売却への影響」でも詳しく解説しています。
区分地上権(送電線・地下鉄などの地下・空間利用)
区分地上権は、土地の地下または空間の一部の層だけを目的物とする地上権です(民法269条の2)。高圧線の下や地下鉄・共同溝のトンネルの上など、土地全体ではなく特定の高さ・深さの範囲だけを利用したい場合に設定されます。地上の所有者は区分地上権が及ばない範囲であれば土地を通常どおり利用できますが、建物の高さ制限や地下利用の制限を受けることになります。
地上権の存続期間
当事者が期間を定めた場合
工作物所有を目的とする地上権(建物以外、送電線の鉄塔など)については、民法上、存続期間の上限・下限の定めはなく、当事者間の合意で自由に決められます。永久地上権として設定することも理論上可能です。
期間の定めがない場合(民法268条)
存続期間を定めなかった場合は、まず慣習があればそれに従います。慣習もなければ地上権者はいつでも権利を放棄でき(地代の約定がある場合は1年前の予告または未経過分の地代支払いが必要)、放棄されない場合は裁判所が20年以上50年以下の範囲で工作物の種類などを考慮して期間を定めます。
建物所有目的は借地借家法で最低30年
建物の所有を目的とする地上権(=借地権に該当するもの)には借地借家法が適用され、存続期間は建物の構造にかかわらず一律で最低30年となります(借地借家法3条)。契約でこれより長い期間を定めることは可能ですが、短縮することはできません。
地上権の地代(対価)
地代の決め方に法律上の基準はない
地上権の対価である地代の金額について、法律上の明確な算定基準はありません。実務では、その土地の固定資産税・都市計画税相当額を目安に、周辺の地代相場や契約締結の経緯を踏まえて当事者間で取り決めるのが一般的です。なお地上権は性質上、無償(地代なし)とする特約も可能とされています。
地代の滞納・値上げをめぐるトラブル
地代の金額は一度決めたら固定というわけではなく、周辺相場や固定資産税評価額の変動に応じて増減を求められることがあります。増減額の協議が整わない場合はトラブルに発展しやすく、地代・借地条件の交渉は不動産や法律の専門家に相談しながら進めるのが安全です。地代の考え方や値上げ交渉の具体的なポイントは「地代とは|相場・計算方法と値上げ交渉・底地売却の関係」で詳しく解説しています。
地上権の登記
地上権者には登記請求権がある
地上権は物権であるため、地上権者は土地所有者に対して登記への協力を求める権利(登記請求権)を持ちます。土地所有者は正当な理由なく登記を拒否できません。登記を行うことで、地上権者は第三者(土地の新しい買主など)に対しても自分の権利を主張(対抗)できるようになります。
登記事項証明書での確認方法
ある土地に地上権が設定されているかどうかは、法務局で取得できる登記事項証明書(登記簿謄本)の「権利部(乙区)」を確認することで分かります。相続した土地や購入を検討している土地に地上権の記載がある場合は、存続期間・地代・目的などの設定内容を必ず確認しましょう。
地上権のメリット・デメリット
地上権者(借りる側)のメリット・デメリット
地上権者にとっては、地主の承諾なく建物を売却・建て替えできる自由度の高さ、地上権自体に抵当権を設定できることによる資金調達のしやすさが大きなメリットです。一方で、地上権が設定される事例自体が少ないため権利金や地代の相場が分かりにくいこと、そもそも地上権付きの物件は市場にほとんど流通していないことがデメリットとして挙げられます。
土地所有者(貸す側)のメリット・デメリット
土地所有者にとっては、長期にわたり安定した地代収入を得られ、建物の管理を自分で行う必要がない点がメリットです。一方で、地上権者の利用方法に口出しできない、譲渡・転貸に承諾料などの副次収入を求められない、契約終了時に土地の返還交渉が難航しやすいといったデメリットがあります。
地上権と相続税評価
区分地上権の評価方法(割合の目安)
相続税の計算では、区分地上権が設定されている宅地は「自用地としての価額-区分地上権の価額」で評価します。区分地上権の価額は、自用地価額に区分地上権の割合を乗じて算出しますが、地下鉄など「ずい道(トンネル)」の所有を目的とする区分地上権については、区分地上権の割合を30%とすることができるとされています(国税庁「区分地上権の目的となっている宅地の評価」)。それ以外のケースでは、土地利用制限の程度に応じて個別に割合を判定します。高圧線下の土地の評価減の考え方は「高圧線下の土地の評価とは?相続税評価減の仕組みと売却の注意点」でも解説しています。
相続時に確認すべきポイント
地上権が設定された土地を相続する場合は、まず登記事項証明書で存続期間・地代・目的を確認し、地上権者との関係(誰がどのような目的で使用しているか)を把握することが第一歩です。評価額の算定は専門的な判断を要するため、相続税に詳しい税理士や不動産会社へ早めに相談することをおすすめします。
地上権付きの土地・建物は売却できる?
結論:地主の承諾なしで売却できる
地上権は物権であるため、法律上は地主(土地所有者)の承諾を得なくても第三者へ譲渡・売却することができます。この点は、原則として地主の承諾が必要な賃借権(借地権)との大きな違いです。
実務上の壁=住宅ローン審査
法律上は自由に売却できる一方、実務では買主が住宅ローンを利用する際に、金融機関から土地所有者の「承諾書」や地上権の詳細情報の提出を求められることがあります。特に旧法地上権や、地代・存続期間の取り決めが曖昧なケースでは、金融機関の担保評価が下がり、住宅ローン審査が通りにくくなる場合があるため注意が必要です。
査定の種類(机上・訪問・AI・一括)
地上権付き不動産を売却する際も、通常の不動産と同様にまずは査定から始まります。査定には、資料や取引事例から概算額を算出する「机上査定」、現地を訪問して詳しく調べる「訪問査定」、AIが統計データから瞬時に算出する「AI査定」、複数社にまとめて依頼できる「一括査定」があります。地上権のように権利関係が複雑な不動産は、机上査定だけで正確な金額を出すことが難しいため、権利関係の調査も含めて対応できる会社に訪問査定を依頼するのが安心です。査定の種類ごとの特徴は「不動産の査定とは?机上・訪問・AI・一括査定の違いと依頼の流れ」で詳しく解説しています。
仲介と買取の比較
売却方法は大きく「仲介」と「買取」の2つに分かれます。仲介は不動産会社が買主を探す方法で、時間はかかるものの市場価格に近い金額での売却を期待できます。買取は不動産会社が直接買主となる方法で、地主との調整や権利関係の確認に手間がかかる地上権付き物件でも、短期間かつ確実に現金化できるのが強みです。地上権や借地権の売却方法をより詳しく知りたい方は「借地権の売却、4つの方法と費用をプロが解説」もあわせてご覧ください。
売却の流れ5ステップ
地上権付きの土地・建物を売却する際の一般的な流れは次の5ステップです。

- 地上権の内容を確認する:登記事項証明書と契約書で、存続期間・地代・目的・特約の有無を確認します。
- 土地所有者へ事前に連絡・意向確認する:法律上は承諾不要でも、円滑な取引のために事前連絡しておくとトラブルを防げます。
- 査定を依頼する:仲介・買取どちらが適しているか、権利関係に詳しい不動産会社に相談しながら査定を受けます。
- 売却方法を決定する:仲介・買取に加え、底地(土地所有権)と地上権を同時に売却する方法も選択肢になります。
- 契約・引渡し:買主が住宅ローンを利用する場合は、必要に応じて土地所有者の承諾書を取得したうえで契約・引渡しを行います。
地上権が設定される具体的なケース
送電線・高圧線の下の土地
電力会社が鉄塔や送電線を設置する際、その下の土地全体を買い取るのではなく、送電に必要な空間の利用権として区分地上権を設定するケースが典型例です。
地下鉄・トンネルの上の土地
地下鉄やその他の地下トンネルを整備する際も、地表の土地所有権はそのままに、地下の一定の深さの空間だけを利用する区分地上権が設定されます。
太陽光発電設備・工作物の所有目的
太陽光発電設備や送電設備など、建物以外の工作物を所有する目的で地上権が設定されることもあります。この場合は借地借家法の適用対象外となるため、存続期間は民法の原則(当事者間の合意、定めがなければ20〜50年の範囲で裁判所が決定)に従います。
地上権はどのように消滅する?
存続期間の満了
契約で定めた存続期間が満了すれば、地上権は原則として消滅します。ただし建物所有目的の地上権(借地権)は、借地借家法上の更新請求や法定更新の制度により、地主に正当事由がない限り更新されるのが一般的です。
地上権の放棄
存続期間の定めがない場合、地上権者はいつでも権利を放棄できます。地代の支払い約定がある場合は、1年前に予告するか、未経過期間分の地代を支払う必要があります。
消滅時効・混同
地上権を長期間行使しないことによる消滅時効のほか、地上権者が土地の所有権も取得した場合に権利が同一人に帰属する「混同」によっても地上権は消滅します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 地上権と賃借権はどう違いますか?
A. 地上権は物権、賃借権は債権という法的性質の違いがあります。地上権は地主の承諾なしに譲渡・転貸・売却でき、地上権自体に抵当権を設定できる点が賃借権との大きな違いです。
Q2. 地上権付きの土地や建物は売却できますか?
A. 地上権は物権のため、原則として地主の承諾を得なくても売却(譲渡)できます。ただし買主が住宅ローンを利用する場合、金融機関が地主の承諾書などの提出を求めることがあるため、事前の調整が重要です。
Q3. 地上権の存続期間はどれくらいですか?
A. 当事者間で自由に定められますが、建物所有を目的とする地上権は借地借家法が適用され最低30年です。期間の定めがない場合は、慣習がなければ裁判所が20〜50年の範囲で定めます(民法268条)。
Q4. 地上権に抵当権を設定できますか?
A. できます。地上権は独立した物権のため、地上権そのものに抵当権を設定可能です。賃借権(債権)にはこの扱いがなく、資金調達のしやすさに直結する重要な違いです。
Q5. 区分地上権とは何ですか?
A. 送電線の下や地下鉄トンネルの上など、土地の上下の一部の空間だけを利用する地上権です。相続税評価では、地下鉄などのトンネルの場合、区分地上権割合30%を目安に評価額が減額されます。
Q6. 旧法地上権とは何ですか?
A. 1992年(平成4年)の借地借家法施行前の借地法に基づいて設定された地上権です。契約が新法に自動的に切り替わることはなく、借地人に有利な条件が引き継がれる一方、住宅ローン審査で不利になりやすい傾向があります。
Q7. 地上権の地代はどうやって決まりますか?
A. 地代の金額に法律上の基準はなく、固定資産税・都市計画税相当額を目安に、周辺相場や契約の経緯を踏まえて当事者間で取り決めるのが一般的です。
Q8. 地上権はどうすれば消滅しますか?
A. 存続期間の満了、地上権者による放棄、消滅時効、土地所有権との混同などが主な消滅事由です。放棄する場合、地代の支払い約定があるときは1年前の予告または未経過分の地代支払いが必要です。
まとめ|地上権の疑問や売却のご相談はハウスドゥ茨城グループへ
地上権は、賃借権よりも権利の強い「物権」であり、地主の承諾なく譲渡・売却でき、地上権自体に抵当権を設定できる点が最大の特徴です。一方で、旧法地上権や区分地上権など特殊なケースも多く、存続期間・地代・登記の状況によって売却時の難易度が変わります。「相続した土地に地上権の記載がある」「地上権付きの建物を売りたいがどこに相談すればよいか分からない」という場合は、権利関係の調査から査定・売却まで一括して相談できる不動産会社に早めに相談することが解決への近道です。ハウスドゥ茨城グループは、俳優の古田敦也さんをイメージキャラクターとする全国ブランド「ハウスドゥ」の看板のもと、取手戸頭・守谷・つくば研究学園都市・水戸の4店舗で茨城県全域の不動産売却・買取に対応しています。地上権や底地など権利関係が複雑な不動産の売却実績も豊富な買取専門店として、無料査定からご相談を承っております。
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