不動産売却が初めての方へ。何から始める?押さえるべき全知識
不動産売却が初めてだと、「何から手をつければいいのか」「損をしてしまわないか」といった不安を感じるのは当然です。人生で何度も経験することのない大きな取引だからこそ、正しい知識を身につけ、信頼できるパートナーと進めることが成功のカギとなります。
インターネットには情報があふれていますが、断片的な知識だけではかえって混乱を招きかねません。この記事では、不動産売却が初めての方が抱える疑問や不安を解消するため、売却の全体像から具体的な手順、費用や税金といった専門知識まで、網羅的かつ分かりやすく解説します。
この記事を最後まで読めば、以下の点が明確になります。
- 売却の全手順と期間の目安
- 「仲介」と「買取」の違いと選び方
- 売却時にかかる諸費用と税金の詳細
- 信頼できる不動産会社の選び方
- 空き家や相続物件など特殊なケースの対処法
正しい知識は、あなたの大切な資産を守るための武器となります。この記事を読めば、不動産売却を初めて経験する方も、自信を持って第一歩を踏み出せます。
【7ステップで解説】不動産売却の全手順と期間の目安
不動産売却が初めての場合、準備から完了まで一般的に4ヶ月から1年以上かかることを理解しておきましょう。まずは全体の流れと各ステップにかかる期間の目安を把握し、計画的に進めていくことが重要です。
【不動産売却の全手順と期間の目安】
- ステップ1:情報収集と査定依頼(1週間〜1ヶ月)
- ステップ2:不動産会社との媒介契約(1週間〜2週間)
- ステップ3:販売活動の開始(3ヶ月〜6ヶ月)
- ステップ4:売買契約の締結(1週間〜2週間)
- ステップ5:引き渡しの準備(約1ヶ月)
- ステップ6:決済と物件の引き渡し(1日)
- ステップ7:売却後の確定申告(売却翌年の2月16日〜3月15日)
※期間は物件の状況や市場動向により変動します。
ステップ1:情報収集と査定依頼(期間目安:1週間〜1ヶ月)
売却の第一歩は、所有する物件が「いくらで売れそうか」という相場を知ることです。不動産ポータルサイトで近隣の類似物件の価格を調べたり、国土交通省の「不動産取引価格情報検索」で過去の成約事例を確認したりして、相場観を養いましょう。
その後、複数の不動産会社に査定を依頼します。査定には、データから算出する「机上査定」と、現地訪問で評価する「訪問査定」があります。正確な価格を知るためには訪問査定が不可欠です。
【ポイント】 査定は3社程度に依頼するのが一般的です。査定額の高さだけでなく、価格の根拠を明確に説明してくれるか、担当者の対応は信頼できるか、といった点も重視して比較検討しましょう。
ステップ2:不動産会社との媒介契約(期間目安:1週間〜2週間)
査定結果や担当者の対応を比較し、売却を依頼する不動産会社を1社に決めたら「媒介契約」を結びます。これは売却活動を正式に依頼する契約で、主に3種類あります。
- 専属専任媒介契約: 1社にのみ依頼。自己発見取引(自分で買主を見つけること)も不可。不動産会社からの活動報告義務が最も手厚い。
- 専任媒介契約: 1社にのみ依頼するが、自己発見取引は可能。
- 一般媒介契約: 複数の不動産会社に同時に依頼できる。
どの契約が最適か、不動産会社の担当者と相談して決めましょう。
ステップ3:販売活動の開始(期間目安:3ヶ月〜6ヶ月)
媒介契約後、不動産会社が不動産流通機構(レインズ)への登録やポータルサイトへの広告掲載、チラシ配布などの販売活動を開始します。
売主の最も重要な役割は「内覧」への対応です。購入希望者が物件を直接見て購入を判断する重要な機会なので、室内の清掃や整理整頓を心がけ、物件の魅力を最大限にアピールしましょう。
ステップ4:売買契約の締結(期間目安:1週間〜2週間)
購入希望者から「購入申込書」が提出され、価格や引き渡し時期などの条件交渉を行います。双方の条件が合意に至れば、売買契約へと進みます。契約当日は、宅地建物取引士による「重要事項説明」の後、「売買契約書」に署名・捺印し、買主から手付金を受け取ります。
ステップ5:引き渡しの準備(期間目安:約1ヶ月)
売買契約後、物件の引き渡しに向けて準備を進めます。住宅ローンが残っている場合は、金融機関に連絡し、完済と「抵当権」の抹消手続きを進めます。抵当権は、ローン返済が滞った場合に金融機関が不動産を差し押さえる権利で、売却時には必ず抹消しなければなりません。同時に、引越しの手配や各種費用の精算準備も行います。
ステップ6:決済と物件の引き渡し(期間目安:1日)
引き渡し日に、買主、売主、不動産会社、司法書士が金融機関などに集まり、最終手続き(決済)を行います。買主から売買代金の残金を受け取り、売主は住宅ローンを完済します。司法書士が所有権移転登記と抵当権抹消登記を申請し、最後に物件の鍵を買主に渡して取引完了です。
ステップ7:売却後の確定申告(期間目安:売却翌年の2月16日〜3月15日)
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、売却した翌年に確定申告を行い、所得税や住民税を納める必要があります。逆に損失が出た場合でも、一定の要件を満たせば税金の還付を受けられる特例があるため、忘れずに手続きを行いましょう。
『仲介』と『買取』どちらを選ぶ?メリット・デメリットを徹底比較
不動産の売却方法には、不動産会社に買主を探してもらう『仲介』と、不動産会社自身が直接買主となる『買取』の2種類があります。不動産売却が初めての方にとって、この選択は売却価格やスピードを大きく左右する重要な分岐点です。ご自身の状況や優先順位に合わせて最適な方法を選びましょう。
『仲介』と『買取』の主な違いが一目でわかる比較表
| 項目 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 市場価格に近い(高値の可能性) | 市場価格の7〜8割程度 |
| 売却スピード | 3ヶ月〜半年以上かかることも | 最短数日〜1ヶ月程度 |
| 手間・労力 | 内覧対応、価格交渉などが必要 | 不要(不動産会社との交渉のみ) |
| 仲介手数料 | 必要 | 原則不要 |
| 周囲への告知 | 必要(広告活動を行うため) | 不要(秘密厳守が可能) |
| 契約不適合責任 | 原則、負う必要がある | 免除されるケースが多い |
| 買主 | 一般の個人や法人が中心 | 不動産会社 |
※契約不適合責任:売却した不動産に契約内容と異なる不具合が見つかった場合に、売主が買主に対して負う責任。
時間をかけても高く売りたい方向けの『仲介』
『仲介』は、不動産会社が売主と買主の間に入り、売買契約をサポートする方法です。不動産売却の最も一般的な手法です。

『仲介』のメリット
最大のメリットは、市場価格に近い価格、あるいはそれ以上で売却できる可能性がある点です。広く広告活動を行い購入希望者を募るため、需要が高ければ高値での売却も期待できます。価格を最優先する方には最適な方法です。
『仲介』のデメリット
一方で、売却までに時間がかかるのがデメリットです。買主が見つかるまで数ヶ月、場合によっては1年以上かかることもあり、売却計画が立てにくいのが難点です。また、内覧対応の手間や、売買契約成立時に不動産会社へ支払う仲介手数料が発生します。さらに、引き渡し後に契約書に記載のない欠陥が見つかった場合、売主が**「契約不適合責任」**を負うリスクもあります。
スピードと手軽さを重視する方向けの『買取』
『買取』は、不動産会社が直接、売主から物件を買い取る方法です。一般の買主を探す必要がないため、仲介とは異なるメリットがあります。
『買取』のメリット
最大のメリットは、売却スピードの速さです。査定価格に納得すればすぐに契約・決済へと進め、最短数日で現金化することも可能です。急な資金が必要な場合に非常に有効です。また、買主が不動産会社のため内覧対応は不要で、「現状のまま」で売却できます。仲介手数料もかからず、広告活動を行わないため近隣に知られずに売却できます。売却後の契約不適合責任が免除されるケースが多いのも大きな安心材料です。
『買取』のデメリット
唯一のデメリットは、売却価格が『仲介』より安くなる傾向があることです。一般的に市場価格の7〜8割程度が目安となります。これは、不動産会社がリフォームなどを行って再販売するための費用や利益を価格に反映させるためです。
あなたはどっち?『買取』が特におすすめなケース
以上の点を踏まえると、特に以下のような状況の方には『買取』が適しています。
- とにかく早く現金化したい(住み替え、相続税納税など)
- 周囲に売却を知られたくない
- 建物の老朽化や室内の状態で、現状のまま売りたい
- 仲介で長期間売れず、早く確実に売却したい
- 遠方に住んでおり、売却活動の手間をかけられない
- 相続した不動産を手間なく迅速に整理したい
知らないと損する!不動産売却にかかる費用と税金のすべて
不動産売却が初めてだと見落としがちですが、売却代金がすべて手元に残るわけではありません。売却代金から差し引かれる「諸費用」と、利益に対してかかる「税金」を事前に把握しておくことが、資金計画を立てる上で非常に重要です。
まずは押さえたい!不動産売却の「諸費用」の内訳
諸費用の合計は、一般的に売却価格の3%〜5%程度が目安です。主な内訳は以下の通りです。
1. 仲介手数料
「仲介」で売却した場合に不動産会社へ支払う成功報酬で、諸費用の中で最も大きな割合を占めます。法律で上限額が定められています。
【仲介手数料の速算式(売買価格400万円超の場合)】 (売買価格 × 3% + 6万円) + 消費税
例:2,000万円で売却した場合の上限額は、(2,000万円 × 3% + 6万円)+ 消費税 = 72万6,000円です。 ※「買取」の場合は、仲介手数料はかかりません。
2. 印紙税
不動産売買契約書に貼付する印紙代です。契約金額によって税額が決まります。
| 契約金額 | 税額 |
|---|---|
| 1,000万円超 5,000万円以下 | 20,000円 |
| 5,000万円超 1億円以下 | 60,000円 |
| 1億円超 5億円以下 | 100,000円 |
※2024年5月現在の本則税率です。税制改正にご注意ください。
3. 登記費用(抵当権抹消など)
住宅ローンが残っている場合、抵当権を抹消するための登記手続き費用です。司法書士への報酬と登録免許税を合わせて3万円~5万円程度が目安です。

4. その他の費用
状況に応じて、土地の境界を確定させる「測量費用」(30万円~)、古家を解体する「建物解体費用」(木造で坪4万円~)、ハウスクリーニング費用、引越し費用などが発生する場合があります。
売却益にかかる「譲渡所得税」の仕組みと節税特例
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、その利益に対して「譲渡所得税」(所得税・住民税)がかかります。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得 = 売却価格 – (取得費 + 譲渡費用)
- 取得費: 不動産の購入代金や手数料など。不明な場合は売却価格の5%を概算取得費とします。
- 譲渡費用: 売却に直接かかった費用。仲介手数料や印紙税など。
この計算で譲渡所得がマイナス(損失)の場合は、原則として税金はかかりません。
所有期間で税率が変わる!
税率は、不動産の所有期間によって大きく異なります。売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかが分かれ目です。
- 短期譲渡所得(所有期間5年以下):39.63% (所得税30.63% + 住民税9%)
- 長期譲渡所得(所有期間5年超):20.315% (所得税15.315% + 住民税5%)
※復興特別所得税を含む。税率が約2倍違うため、所有期間の確認は非常に重要です。
賢く活用したい!マイホーム売却の特例
ご自身が住んでいた家(マイホーム)を売却する場合、税負担を大幅に軽減できる特例があります。代表的なものが**「居住用財産の3,000万円特別控除」**です。
これは、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる非常に強力な特例で、多くのケースで譲渡所得税が非課税になります。利用するには「自分で住んでいた家であること」などの要件を満たし、必ず確定申告を行う必要があります。
さらに、所有期間10年超のマイホームであれば、3,000万円控除後の譲渡所得に低い税率が適用される「軽減税率の特例」も併用可能です。
失敗しない不動産会社の選び方と査定依頼の3つのコツ
不動産売却が初めての場合、その成功はパートナーとなる不動産会社選びで決まると言っても過言ではありません。信頼できる会社を慎重に見極めるためのポイントを解説します。
信頼できる不動産会社を見極める5つのチェックポイント
1. 売却実績が豊富か
ご自身の物件と同じエリアや種類の売却実績が豊富な会社は、市場動向や購入者ニーズを熟知しており、的確な販売戦略を期待できます。ウェブサイトなどで実績を確認しましょう。
2. 査定価格の根拠が明確か
査定額の高さだけで判断するのは危険です。近隣の成約事例や市場トレンドを基に、「なぜその価格なのか」という根拠を具体的に説明してくれる会社を選びましょう。
3. 担当者の専門性と相性
売却は担当者と二人三脚で進めます。不動産取引だけでなく税金や法律の知識が豊富か、あなたの状況を理解し最適な提案をしてくれるか、そして何より「この人になら任せられる」と信頼できるかが重要です。
4. 多角的な販売戦略を持っているか
ポータルサイト掲載、チラシ、オープンハウスの開催など、多様なチャネルを駆使して、いかに多くの購入希望者に情報を届けられるかがカギです。物件の特性に合わせた販売戦略を提案してくれる会社を選びましょう。
5. 契約内容を丁寧に説明してくれるか
「専属専任」「専任」「一般」といった媒介契約の違いや、契約書の細かい条項について、あなたが納得するまで丁寧に説明してくれる誠実な会社を選びましょう。

まずはここから!査定の種類と特徴を知ろう
不動産会社を選ぶ第一歩が査定依頼です。査定には2種類あります。
机上査定(簡易査定) 物件データと周辺相場から算出する簡易的な査定です。スピーディに結果がわかるため、「まずは大まかな価格を知りたい」という段階の方におすすめです。
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訪問査定(詳細査定) 担当者が現地を訪れ、物件の状態を細かく確認して算出する、より精度の高い査定です。「具体的に売却を検討している」「正確な売却可能額を知りたい」という方はこちらを依頼しましょう。
査定を成功させる3つのコツ
3社程度に絞って依頼する 複数の会社に依頼することで客観的な相場観を養えます。ただし多すぎると混乱するため、3社程度に絞ってじっくり比較検討するのがおすすめです。
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査定額の「高さ」だけで判断しない 契約欲しさに相場より高い価格を提示する会社もあります。重要なのは「なぜその価格なのか」という査定の根拠です。最も納得できる説明をしてくれた会社を選びましょう。
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事前に準備をしておく 訪問査定の際に、購入時のパンフレットや図面、固定資産税納税通知書などの資料を準備しておくと、より正確な査定につながります。また、物件のアピールポイントや懸念点を正直に伝えることが、信頼関係構築の第一歩です。
【お悩み別】空き家・相続物件・訳あり不動産の売却ポイント
不動産売却が初めてのケースでは、空き家や相続物件など、特殊な事情を抱えることも少なくありません。ここでは、よくあるお悩み別に売却のポイントを解説します。
ケース1:管理が負担になっている「空き家」の売却
空き家は固定資産税がかかり続けるだけでなく、建物の老朽化や近隣トラブルのリスクも抱えています。放置すると行政から「特定空家等」に指定され、税金の優遇がなくなるなどのペナルティを受ける可能性もあるため、早めの対策が重要です。
【空き家売却のポイント】 リフォームや解体には多額の費用がかかりますが、不動産会社による**「買取」**であれば、現状のままスピーディーに売却できます。売主が事前に費用を負担する必要はありません。また、相続した空き家の場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる税金の特例が使える可能性もあるため、不動産会社に相談しましょう。
ケース2:手続きが複雑な「相続した不動産」の売却
相続した不動産を売却するには、まず不動産の名義を相続人に変更する**「相続登記」**が必須です(2024年4月から義務化)。相続人が複数いる場合は、誰が不動産を相続し、売却代金をどう分けるかを全員で話し合う「遺産分割協議」も必要になります。相続税の納税期限(相続開始から10ヶ月以内)から逆算し、余裕を持った売却スケジュールを組むことが重要です。
ケース3:住宅ローンが残っている物件の売却
住宅ローンが残っていても不動産の売却は可能です。ただし、売却代金でローンを完済し、金融機関が設定した「抵当権」を抹消する必要があります。
【ローン残債あり物件の売却ポイント】 まずはローン残高を正確に把握し、査定額と比較しましょう。
- アンダーローン(売却価格 > ローン残債): 問題なく売却を進められます。
- オーバーローン(売却価格 < ローン残債): 不足分を自己資金で補う必要があります。
売却を始める前に、資金計画をしっかり立てることが不可欠です。
ケース4:売れるか不安な「訳あり物件」の売却
建物が古い、土地の形が特殊、過去に事件があったなど、一般の買主から敬遠されがちな「訳あり物件」。売却時に最も重要なのは、物件の欠点を正直に伝える**「告知義務」**を果たすことです。情報を隠して売却すると、後に契約解除や損害賠償などの大きなトラブルに発展する可能性があります。
【訳あり物件売却のポイント】 仲介での売却が難しい物件でも、不動産会社による**「買取」**ならスピーディーに売却できる可能性が高まります。不動産のプロが欠点を理解した上で買い取るため、売却後のトラブルの心配が少なく、契約不適合責任が免責されるケースが多いのがメリットです。
初めての不動産売却を成功に導くための最終チェックリスト
最後に、これまでの内容を総まとめした最終チェックリストをご用意しました。売却活動の各段階で確認し、後悔のない取引を実現しましょう。
【ステップ1】売却準備・計画編
- □ 売却の目的(住み替え、資金化など)と希望条件(時期、価格)は明確か?
- □ 登記済権利証、固定資産税納税通知書、図面など、物件関連の書類は揃っているか?
- □ 住宅ローンの残債額を正確に把握したか?
- □ 仲介手数料などの諸費用や、譲渡所得税の概算を理解したか?
- □ 不動産情報サイトなどで、自分でできる範囲の相場調査を行ったか?
【ステップ2】不動産会社選び・媒介契約編
- □ 3社程度の不動産会社に査定を依頼し、比較検討したか?
- □ 査定価格だけでなく、その根拠に納得できたか?
- □ 担当者は親身で、専門知識があり信頼できる人物か?
- □ 具体的な販売活動計画を提示してくれたか?
- □ 媒介契約の3種類(一般・専任・専属専任)の特徴を理解して選んだか?




